ボリショイのロンドン公演初日の写真と感想を日本特派員Mさん(現在ロンドン特派員として活躍中)より寄稿頂きました。
ボリショイ ロンドン公演(at London Coliseum)
30 July 2007「La Corsaire(海賊)」
メドーラ:スヴェトラーナ・ザハロワ
コンラッド:デニス・マトヴィエンコ
ビルバント:アンドレイ・メルクリエフ
ガルナーレ:エカテリーナ・シプリナ
待ちに待ったボリショイのロンドン公演、初日は新作の海賊で開幕。
本拠地モスクワで先月発表されたこの新作は、モスクワからのレポートや断片的な動画などを見ていた通り、華やかな舞台セットに、豪華なディテイルにまで凝った衣装。そして、最後の迫力ある船のセット。どれもまるでロシアのバブルを象徴するかのように凝りに凝っている。
ザハロワの輝きはその舞台セットにも負けない。踊りにも常に余裕が感じられ、さすが世界のプリマ。
キャラクターやストーリー、ダンスに至るまで今まで観た海賊とは全く違っていた。男性の主役陣が一幕でしか踊らないのは非常に残念だったが、メドーラ役は全幕を通して踊り、後半はガルナーレ役も踊り続け、女性ダンサー主体のものへと移ってゆく。各場面での衣装がどれも愛らしい。
また、このバレエはキャラクター・ダンサーたちの活躍による所が大きい。ランケデム役を毎晩務めるゲンナディ・ヤニンや、セイド・パシャ役のアレクセイ・ロパレヴィッチらは踊りはしないが、ストーリーの柱となる役を個性豊かな演技と表情でこなす。
この日、ロンドン・デビューを果たした若手ダンサーのイワン・ワシリエフは、ニーナ・カプツォーワとのパ・ド・ドゥ、それに続くソロの踊りで活躍。これはマリィンスキーならLankedemが一幕目で踊る見せ場の音楽を使う。
だが、舞台が非常に狭いので、勢い付いたワシリーエフ君はキメのポーズのところで2回ともロパレヴィッチらの座っている左の裾へ突っ込んでしまった。ジャンプや回転はこれまで動画で見ていたように非常にキレがあったが、ポーズを決められなかったのは残念。
持ち前の明るさと笑顔がチャーミングで、印象に残った。まだこれからどんどん活躍してもらいたいし、団のほうも今回の引越し公演で一押ししているダンサーのようだ。
コンラッドの一番の見せ場は第1幕第2場。これはマリィンスキー版ならアリとメドーラのパ・ド・ドゥの場面で、日本でもルジマトフが良くガラなどで踊るので馴染みがある場面。ボリショイ版は、これを洞窟の海賊たちの隠れ家に見立て、そこでコンラッドとメドーラが踊る。マトヴィエンコは身軽でスピードがあり、踊りは申し分なかった。ザハロワとのパートナリングもぴったり。
メルクリエフが踊るのはイリーナ・ジブロワとの民族ダンス調の、軽快なリズムのダンスばかりであった。顔立ちがエレガントなので、とても悪に染まりそうには見えない彼であったが、衣装を着ると肩幅もあり貫禄が出、演技力も素晴らしかった。
パ・ド・トラワでのナタリア・オシポワの、男性ダンサー並みのジャンプをしながら回転して進んでゆく踊りが印象に残った。女性がこのような技をこなすのは見たことがなかった。彼女は大きな拍手をもらっていた。パ・ド・トラワでも主役をこなせるようなバレリーナを3人ともここで揃えられると言うのが、さすが、ボリショイの層の厚さ!
幕が降りたのは11時を回っており、長い演目であったが、見ごたえは十分にあった。色々な衣装に着替えてそれぞれのダンスをこなしたザハロワには感服。
この日はロシア大使館でのパーティーがあると言う事で、ダンサー達は3台のバスに分かれて劇場を後にしていた。劇場内客席でも、正装したセルゲイ・フィーリンをはじめとするダンサーを見かけた。
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