貧者の一灯 ブログ

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貧者の一灯・歴史への訪問

2022年10月28日 | 流れ雲のブログ










    













二人はとても上品で、特に女の人は絵に
かいたように美しく、名前を松子(まつこ)と
いったそうです。

ところがこの二人、とても世間知らずな上、
お金の使い方が下手でした。

ですから大神宮へのお参りをすませての
帰り道、お金が足りなくなってしまったのです。

これを知った宿屋の主人が、二人を気の毒
に思って言いました。

「お客さま、宿代は心配なさいますな。
来年も、お客さまの村の誰かが参宮(さんぐう)
なさるのでしょう。

その時に一緒に返してくだされば、
結構です。ああ、それからこれは、帰り
の足しに」

宿屋の主人は、二人にお金まで
貸してやりました。

さてその次の年、あの二人の村から人が
大勢きて、その宿屋に泊まりました。

そこで主人は、「あの、あなた方の村の松子さん
という人と、もう一人の方に、去年少しばかり
おたてかえしたものがあるのでございますが、
お持ちくださいましたでございましょうか?」
と、たずねてみました。

すると、その村人たちは、「はあ、松子さん?」
と、みんな不思議そうな顔つきをしました。

「村には、松野とか松代とか、松のつく名の
人間はいるが、その松子というのはおらんぞ」
「それに去年は、誰も伊勢参宮をしていないが」

それを聞いて、宿屋の主人は首を
かしげました。

「へえ、さようでございますか。おかしいですねえ。
決して人をだまされる方には、お見受けしません
でしたが」

それから数日後、伊勢参宮から帰ってきた
村人たちは、さっそく伊勢の宿屋で聞いた
話を村人たちにしました。

すると村人の一人が、大きく両手を打ち
ながら言いました。

「そうか、それでわかった!」
「わかったって、何が?」

「村の諏訪神社(すわじんじゃ)の二本の
松の木に、去年から白い物がちらちらして
いるのを知っているだろう?」

「ああ、あれですか。子どもがたこでも
引っかけたと思っていたのですが」
「いやいや、あれは今の話しからすると、
お伊勢さんの大麻(たいま→神社から
さずけるおふだのこと)ですわ」

「そういえば、確かに大麻かもしれん」
「よし、確かめてやろう」

そこで木登りの上手な人がその松の木に
登っていくと、やがて上の方から、
「おーい!」と、声がしました。

木の下のみんなは、上に向かって大声
でたずねました。

「どうだったー! お伊勢さんの大麻かー!」
「ああ、やっぱり大麻だあー! 間違いなく
お伊勢さんの大麻だあー!」

これを聞くとみんなはびっくりして、たがいに
顔を見合わせました。

「やっぱりそうだ。この二本の大松が人の
形になって、伊勢神宮へお参りしたに違いない」

そうとわかってみれば、その宿代をほおって
置くわけにはいきません。

村人は村中からお金を集めて、それを
伊勢の宿屋へ送り届けたそうです。…












「真面目に働いていたはずなのに、悲惨な
老後が待っていた」。

万引老人…貧困にあえぐ

貧困に耐えかねた絶望老人による
万引事件があとを絶たない。

東京都青少年・治安対策本部によれば、
生活保護受給者の割合や借金の状況
を踏まえると、都内の老人の万引被疑者
の経済状況は客観的には生活苦といえず、

むしろ主観的に「自分の生活は苦しい」
と感じている者が半数だという

(「高齢者による万引に関する報告書」
東京都2017年)。

とはいえ、明確な貧困を理由に万引をする
高齢者は多数いるのだ。

「彼らは犯罪者というよりも、
『社会的弱者』という印象です」  

こう語るのは、『万引き老人』の著者
でもある伊東ゆう氏だ。  

万引Gメンの伊東氏は今年2月、関東近郊
のスーパーで万引をした76歳の男性を
捕まえた。

かつてトラックの運転手をしていたが、
現在は年金生活者。

盗んだ品はお菓子、野菜、惣菜、日用品
と多岐にわたった。

所持金は全財産の3000円のみで、
万引品の買い取りは拒否。

「タバコ代がなくなっちゃう……」と
思わず本音を漏らしたという。

「結局、店側は手続きの煩雑さから
被害届を出しませんでした。

最近はこうした老人を万引防止の
顔認証システムに登録する店も増えて
います。

なかには、刑務所に入りたくて万引
をする『志願兵』もいます」(伊東氏)  

伊東氏がかつて都内の繁華街の
スーパーで捕まえた77歳の男性は、
10日ほど前に拘置所を出たばかりだった。

更生保護施設の生活に嫌気がさして脱走し、
「食事もなく寝る場所もないから、刑務所に
戻りたい」という。

この老人は当時、執行猶予中だった
ため望みどおり逮捕されたが、嬉々
としてパトカーに乗り込んでいく姿に、
伊東氏の心中は複雑だった。

「刑務所では話し相手もいるし、刑務作業
でわずかでもお金をためられます。

彼らにとって、自由はなくとも刑務所や
留置場のほうがマシかもしれません」  

しかし、警察がこうした志願兵を相手に
したがらない場合も多くあるという。

罪を犯してもなお行き場がなく、
彷徨っている貧困老人もいるのだ。 …