思想や哲学、社会学を学んだことがあるので、かれの名前と思想の概略は知っていた。「人類がいかにして歴史上の危機を克服し文明を築いたかをオルテガ自身に明快に語らせる。」、色摩力夫著「オルテガ 現代文明論の先駆者」(中公新書)で理解を深めたい。
著者が外交官だったせいもあって文章がやや硬い。その硬さを考慮してもなお、守備範囲が広い巨人ホセ・オルテガ・イ・ガセットの思想の輪郭をつかむには格好の入門書だ。オルテガの水先案内人になろうとした著者の努力の跡をうかがうことができる。
「オルテガ哲学の形成にあたって、直接に強い影響を与えたのは、フッサールとディルタイであり、ある意味でライバルであったのは、ハイデッガーであった。」というのは意外であったし、「トインビーは、知的ツーリストに過ぎない。厖大な歴史の間にツーリストの魂を逍遥させている。」という指摘にはうなずける。