失われたメディア-8cmCDシングルの世界-

50円とか100円で叩き売られている8cm CD singleを見るとついつい買ってあげたくなることはないか。私はある。

「スーダラ伝説」 植木等 1990年

2007-01-10 | 
青島幸男。「青島だぁ!」のどのへんがギャグなのかいまいちつかめない世代としては、あの意地悪ばあさんの人ね、と軽んじていた時期もあった。しかしクレイジーキャッツの作品群でのぶっ飛び加減は、後世に与えた影響大でしょ、やっぱり。

クレイジーのヒット曲をメドレー形式でリメイク、植木等ソロ名義でリリースされ、大ヒット。この年のNHK紅白歌合戦にも出演した。ちなみにその時の紅組の対バン(て言わないか)は、B.B.クイーンズの「おどるポンポコリン」であった。

①スーダラ伝説
(スーダラ節~無責任一代男~ドント節~学生節~ショボクレ人生~五万節~ゴマスリ行進曲~だまって俺について来い~いろいろ節~ホンダラ行進曲~これが男の生きる道~遺憾に存じます~ウンジャラゲ~ハイそれまでョ)
作詩:青島幸男、作曲:萩原哲晶、編曲:宮川泰
(「学生節」作詩:西島大、作曲:山本直純、「ウンジャラゲ」作詩:藤田敏雄、作曲:宮川泰)

全14曲、10分42秒の大作。萩原哲晶作品のオリジナルは、本人が編曲していた。萩原氏は既に故人となっていたので宮川泰が編曲を担当しているが、その宮川氏も昨年亡くなっている。三人とも故人か…。
萩原哲晶アレンジの影響力は、ナイアガラだけにとどまらず、日本のコミックソングの礎となった。ちなみに萩原氏の遺作「イエローサブマリン音頭」のイントロは、ビートルズ「抱きしめたい」を引用した「遺憾に存じます」のイントロ(オリジナルの演奏は寺内タケシとブルージーンズらしい)と同じ。
14曲もあると目まぐるしいかと思いきや、意外にすんなり聴けるのは、もしかすると似てる曲が多いからかな。その偉大なるマンネリズムも大滝詠一に継承されたか。基本はオリジナルに忠実に、ときに小技を効かせる宮川アレンジ。最後の大技は、スーダラ節(Reprise)の大団円でべトベン「第九」のコーラスを重ねてみた。無闇に豪華なコーラス隊が「スーダラ伝説」という仰々しいタイトルにジャストフィット。
そして青島幸男の詩の、なんかありそうでやっぱり裏がないこの軽薄さ、植木等の軽妙なヴォーカルとともに、素晴らしい世界観を生み出している。

「どうせこの世は ホンダラダ ホイホイ
だからみんなで ホンダラダ ホイホイ」

ご冥福をお祈りします。

一曲のみで定価930円、中古で200円。
縦に伸びるダブルジャケット仕様。普通のジャケでは裏に歌詞が書ききれなかったため2倍にしたのだろう。

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2 コメント

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Unknown ()
2007-01-11 22:32:42
>「青島だぁ!」のどのへんがギャグなのかいまいちつかめない世代
そうそう。アタシもいまいちつかめないんだよな。だけどやっぱりクレイジーキャッツの作品でビシビシくるんだよな。植木さんのあの軽さ、はじけっぷりとか当時のクレイジーのセンス、いいなぁと昔の懐かし系の特番とか見て妙にじ~んとします。しかし、いいジャケですね。
>青島幸男の詩の、なんかありそうでやっぱり裏がないこの軽薄さ、植木等の軽妙なヴォーカルとともに、素晴らしい世界観を生み出している
↑師匠、あなたこそ素晴らしすぎです。う~ん、この文章、ゾクゾクしたなぁ。
ですがアタシはクレイジーだと谷啓派なのよね。
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Unknown (nakamura8cm)
2007-01-11 23:32:01
エノケン、トニー谷、クレイジーと昔のお笑いは音楽的にもレベル高いなあ、と思いますね。
世代的にはジャストのドリフは、辛うじて音楽的遺産も残していますが、その後はどうでしょうね。
スネークマン・ショーはややマイナーだし、「タケちゃんマンの歌」や「雨の西麻布」が後世に残るかというと微妙。
>クレイジーだと谷啓派
昨年のユーミン&クレイジーのシングル、よかったですよね。いろいろ泣ける仕掛けもあって。
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