失われたメディア-8cmCDシングルの世界-

50円とか100円で叩き売られている8cm CD singleを見るとついつい買ってあげたくなることはないか。私はある。

「愛のさざなみ」 島倉千代子 1968年

2009-03-31 | 湾岸系
また一週間前の話。

こんなこと言われても本人たちは微妙だと思うが、つくづく逆境が似合う(いい意味で)バンドだなあ、と。

3.22 代々木Zher the ZOO カーネーションワンマン。レコ発でもない、あえて言えば「レコ発予告」みたいな。嵐の夜、新宿から歩いて代々木入り。

正式に直枝政広・大田譲のふたりユニットになって、初のライブ。サポートドラムの中原さんは、もう昨年の月見ルで演奏していたので、特に不安はなかった。でも「矢部浩志の不在」は当然だけど、その場に漂っていた。思ったとおり、直枝さんは矢部さんの一件を直接言葉にすることはなかったけど、その歌、その演奏には彼の不在が影響しないわけがない。カーネーションというのは(よくも悪くも)ずっとそういうバンドなのだ。優れた芸術や芸能が常にそうであるように、自分たちをとりまく状況を反映させずにはいられない。

入り込み過ぎないように注意しながら、でも熱を持った「やるせなく果てしなく」から始まったライブ。選曲を深読みするのは妄想系の悪い癖かもしれないが、どうしてもいちいち考えてしまう。「頭の中の傷」では去年の夏、悩んでたのかなとか…いやそれはさすがに単純過ぎるか。頭の4曲はじっくり考えると重い印象を持った。「新しい鍵」を探す道のりを見るようなストーリー。新曲をはさんで、本当に久々の「愚か者、走る」!何度か語っているが、カーネーション史上個人的に最も思い入れのあるシングル曲。2番は大田さんが歌った。この頃のバンドの状況を思い出すと今でも少し胸が痛くなる。今またHard Timeを迎えたカーネーションにこれほど似つかわしい曲もないだろう。いや、バンドを継続するってことはHard Timeの連続なのかもしれない。
「学校で何おそわってんの」は、熱のこもったいい演奏だったけど、やっぱり矢部さんとの違いを感じてしまう。もう、そういうことを考えるのはやめようとは思うのだが。本編最後に今回の8cm曲。

ハマクラ曲2曲のカップリング。

①人生いろいろ 1987
作詩:中山大三郎、作曲:浜口庫之助、編曲:竜崎孝路
ハマクラ、晩年のヒット曲。冒頭から「♪死んでしまおうなんて~」なんてサラッと歌えてしまうのは苦労人・千代子さんのキャラがあってこそ。若造には絶対に歌えない、不気味なまでの軽さが怖い。

②オリジナル・カラオケ

③愛のさざなみ 1968
作詩:なかにし礼、作曲:浜口庫之助、編曲:ボビー・サマーズ
これ、私の生まれた年の曲だったんだ。浜口庫之助の代表作のひとつ。今さらだが名曲としかいいようがない。なかにし礼の詩は演歌チックではあるけど、「湖に小舟がただひとつ」のイメージなんかはさすがと思わせる。とても昭和43年作とは信じられないナイスアレンジはボビーさん(て誰?)。お名前からしてどう考えても外国の方だよねえ。LAで録音、という情報もあるし。千代子の歌と同時に入り、ほぼ全編「♪パッパッ」とか「♪ウ~」とかいってる女性コーラスはややくどいんだけど、レイト60'sの洋モノ(適度な垢抜けなさはちょっとフレンチっぽい?)の香り。千代子のベタつかない歌声がまたいいんだ。
しかしこの時期に演歌歌手(と当時は認識されていたはず)がなんでロス録音!?はっぴいえんどより5年早いぞ。いろんな意味で音楽のマジックが結晶した、特異点というべき作品だろう。

この日の直枝さんは、本編ラストということもあり、やや息切れ気味のシャウトで。熱かった!

④一般カラオケ
「一般カラオケ」とは耳慣れない単語だか、68年の録音でオリジナルカラオケが現存せず、新たに録りなおしたカラオケということなのだろう。ガイドメロ付き。

演歌系の定番、メロ譜もついて定価1100円、中古で315円。
8cmとしてのリリースは1991年。

関連ハマクラ&カーネーション
みんな夢の中


アンコールは久々の「煙突」で終了。とメンバーは思っただろうが、終演後に会場に流れた「ジェイソン」で、手拍子&大合唱が巻き起こる。客席のこんなテンションもなんだか久しぶり。さすがにこのままでは収まらんと判断した3人が再登場。直枝さんは「もうやる曲ないよ」と言いつつ、ちょっと照れくさそうな、それでも嬉しそうな顔してたな。始まった曲は「テレフォン・ガール」!これは初生だったかも。

何かを吹っ切った、久々に「これがカーネーションだよ!」と心から思える、満足度の高いライブだった。改めてセットリストを見ると、(ぼうふらを含めれば)本編の3分の1は『LIVING/LOVING』期からだったんだな。でも、あのとき(正確には「VENTURE BUISINESS」期)のような不安感はない。「何も変わらない」新しいカーネーションはもう始まっている。

【セットリスト】
01. やるせなく果てしなく
02. One Day
03. 頭の中の傷
04. OOH! BABY
05. Flange
06. 愚か者、走る(直枝&大田Vo)
07. Willow in Space(新曲)
08. Sweet Baby
09. 市民プール
10. 春の風が吹き荒れているよ
11. Walk On
12. Hello, Hello
13. ハイウェイ・バス
14. 学校で何おそわってんの
15. ジェイソン
16. REAL MAN
17. ぼうふら漂流族
18. 愛のさざなみ

encore.1
恋するふたり
夜の煙突

encore.2
テレフォン・ガール


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3 コメント

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語ります (あや)
2009-04-01 02:35:30
今回のセットリストはホントにいろんな歌詞が引っかかりすぎですわー。久しぶりの曲とかあるとついつい妄想走っちゃいますよね。真面目に拾うとちょっとまだううっとなっちゃいそうだったので私は今回控えめにしときましたけど、そこに想像の余地を残してくれてるから想いは膨らむんです。はぁ・・・。

>何かを吹っ切った
うんそうですね。自分とこで散々書きましたが、ファンの目をきちっと見てくれてるなーと思ったのがすごく嬉しかったです。去年の夏、ね、言えないことがあるという状況は仕方なかったですけどね・・・。やっぱりスッキリして見えました。

>「何も変わらない」新しいカーネーション
これをずっとやってくのって大変ですよねぇ(笑)。けどそれが、カーネーション、なんでしょうね。
返信する
も~ (nakamura8cm)
2009-04-01 23:53:34
妄想が感染してます(笑)
>真面目に拾うとちょっとまだううっと
確かに。今回は特にそう感じました。

あとで分かること、あとでも分からないこといろいろあるけど、「それが、カーネーション」。

そうそう、いつものとおり後ろのほうで見てましたが、飛ぶあやさんは(人の隙間から)確認できました(笑)

返信する
母の日に臍を観つめてヒフミヨに (カネーション)
2024-07-20 15:36:00
「愛のさざなみ」の本歌取り[ i のさざなみ ]
この世にヒフミヨが本当にいるなら
〇に抱かれて△は点になる
ああ〇に△がただ一つ
ひとしくひとしくくちずけしてね
くり返すくり返すさざ波のように
さざ波のように

〇が△をきらいになったら
静かに静かに点になってほしい
ああ〇に△がただ一つ
別れを思うと曲線ができる
くり返すくり返すさざ波のように
さざ波のように

どのように点が離れていても
点のふるさとは〇 一つなの
ああ〇に△がただ一つ
いつでもいつでもヒフミヨしてね 
くり返すくり返すさざ波のように
さざ波のように

[ヒフミヨ体上の離散関数の束は、[1](連接)である。]
            (複素多様体上の正則函数の層は、連接である。)

数学の基となる自然数(数の言葉ヒフミヨ(1234))を大和言葉の【ひ・ふ・み・よ・い・む・な・や・こ・と】の平面・2次元からの送りモノとして眺めると、[岡潔の連接定理]の風景が、多くの歌手がカバーしている「愛のさざなみ」に隠されていてそっと岡潔数学体験館で、謳いタイ・・・
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