失われたメディア-8cmCDシングルの世界-

50円とか100円で叩き売られている8cm CD singleを見るとついつい買ってあげたくなることはないか。私はある。

「タイム・トゥ・セイ・グッバイ ~さよならの時刻(とき)」 KAHO 1998年

2011-11-05 | 
島田歌穂がアーティスト名を「KAHO」としてリリースした傑作シングル&アルバム。プロデュースは久保田麻琴。

①タイム・トゥ・セイ・グッバイ ~さよならの時刻(とき)
(Lucio Quarantotto/Francesco Sartori) 日本語詞:松本隆、編曲:池田洋一
アンドレア・ボチェッリとサラ・ブライトマンのデュエットで大ヒットした「Time To Say Goodbye」(1996)の日本語カヴァー。サラ・ブライトマンは「オペラ座の怪人」などで80年代にミュージカル女優として大成功を収めた。そんなキャリアを歌穂が意識しないわけがなく、聴きごたえのある力作に仕上がった。サラのあまりにも堂々としたオペラチックな歌いっぷりに対して、カホは情感たっぷりに切々と語りかける。「さよならの時刻(とき)がきたら私は 涙より哀しい笑顔見せる」う~ん松本先生、決まりすぎ!やっぱりこんなウエットな展開にグッときてしまう。日本人だもの。ピアノ&オーケストラの格調高いアレンジも見事で、サビではボレロ+荘厳なコーラスワークで盛り上げる。

②タイム・トゥ・セイ・グッバイ~さよならの時刻(ピアノ・ヴァージョン)
編曲:島健
サブタイトルどおり、ピアノとサックスのみをバックに静かに歌われる別ヴァージョン。

③①のカラオケ

定価1020円、中古で100円。
ジャケット写真はなぜか前のアルバム『MALACCA』(1997)のフォトセッションから。


右は①が収録されたアルバム『ROBIN'99』(1998)。久保田麻琴全力プロデュースの裏名盤!

タイトルから分かるとおり、島田歌穂が女優デビュー作「ロボコン」で演じたロビンちゃんを二十数年ぶりに再演。子役時代の最初の役どころをもう一度演じるのは、いろいろな覚悟の現れなのだろうと「Specil Thanks」のクレジットを眺めながら思いをめぐらす。裏ジャケではあの胸に赤いハートマークの入った青いチュチュが脱ぎ捨てられていたりする芸の細かさ。大人の女になったロビンが「近未来と屋台が入り乱れるクアラ・ルンプール」を舞台に恋に歌に活躍するコンセプトアルバム。

サンディーがハワイ方面に去っていったあと、前作『MALACCA』から久保田さんのワールド・ビート探求の歌姫として抜擢された島田歌穂。サンディーさんばりにインドネシア語やマレー語でも歌ったりしている。はっきり言えばサンディーさんに比べてオーラ不足というか、B級感は否定できないけれど、そこを味と捉えることも可能。サンディーさんにはない、いい意味での場末感が『ROBIN'99』のコンセプトにフィットしている。吉田美奈子の書き下ろし「愛していても」、金延幸子のカヴァー「かげろう」、ハマクラ作品2曲(「愛のさざなみ」「夕陽が泣いている」)など聴きどころが多いが、とどめは「星空のNight Club」。Kahoが作詞で曲は池田洋一。久保田麻琴がライナーで書いているとおり、「場末」がキーワードのキャバレー・ミュージック。ブレードランナー的な退廃を歌いきるKaho=アダルト・ロビンが素晴らしい。

このアルバムは同年に他界した石ノ森章太郎に捧げられている。



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