●第三者委員会発足。疑念の眼差しの中で悉皆調査を決定(その2)
「旅費自己点検リスト」は、部局部署ごとの職員分が印刷される都度、我々スタッフが各職場へ順次配布していったので、毎日の流れ作業はそれほど大変ではなかったのだが、ふと考えてみると、その回答提出期限日は一律である。殆ど同時に全庁分の何万枚にも及ぶB4横判の書類がこの会議室に送りつけられることになるのだ。一応、点検漏れがないかなどの形式的な確認と申告された不適正支出額の集計作業は部署ごとにお願いしてはいたが、それを鵜呑みにはできず我々事務局も調査班として全部に目を通さねばなるまい。
あれこれ考えると、最初は「こんながらんとした会議室」と思っていたが、膨大な書類が集積する部屋となり、その点検精査のための動員なども想定すると、あっという間に手狭になりそうだ。そんな、"来ることが分かっている事務作業の大洪水"を想い、ますます気が滅入るばかりの私に、またも調査員はさらなる追い打ちを掛ける。「全庁分の調査報告の集計作業は君がやってね」。
聞けば、「初回調査」は、出張先や日程と旅行命令簿など関係書類との照らし合わせで、主に表面的で形式的な不整合が明らかな旅費支出が不適正として報告されていて、件数や金額も少なく、内容も概括的に記載する書式により取りまとめられたということで、当時の県庁各部署に普及していた富士通製の簡易な表計算ソフト「エポカルク」を利用して、デスクトップ型パソコン又はポータブルの専用機で担当者が一人で集計作業を行っていたのだという。
しかし、これから進められる「再調査」は、今日までの経緯から察すると、不適正支出が発見される所属数が増え、件数や金額も初回調査の数倍になることが直感される上、不適正支出を行った要因などの内容も詳しく分類して示すことが外部から求められるだろうから計数の内訳表示も増えて、集計作業のボリュームは大違いになるのではと予想されていた。
「集計担当は私と誰ですか」と一応聞いてみるが「そんな余裕人員がいるわけないだろ。あんた一人」と案の定の応答だ。確かに、天下を揺るがしている不適正支出が再調査によりどのくらいの金額であると判明するのか、その集計は途中の情報漏洩が許されないものであろうし、作業分担による各種リスクも勘案すると、一人で終始完結的に作業することがベストなのかも知れない。
それでも報告個票からの計数の入力ミスなどの点検は複眼的に見ていく必要がある。少し食い下がると、面倒くさそうではあるが「必要により集計表の部分部分で分けて点検させるなど全容が漏れない形でスタッフで協働する」といってくれた。勢いで続けざまにもう一つ調査員にお願いだ。
「集計作業のために、ウインドウズ搭載のラップトップ端末を専用で私に預けてください」。前職場には農業の専門職ながらコンピュータに詳しい同僚が居て、彼の指南の下、当時111もあった市町村からの補助金関連報告の集計作業等の効率化のために、当時"ラップトップパソコンのフェラーリ"といわれていた「DEC Digital HiNote Ultra」において、ウインドウズOSを搭載して表計算ソフトを活用していた。会議室に持ち込まれた富士通のFM-Vシリーズのデスクトップパソコンにおける簡易な計算ソフトでは、膨大な作業が集中したときに追いつかなくなるだろう。せめてレスポンスと使い勝手の良いソフトで作業に当たりたかったのだ。
「我が儘言われても我々にそんな備品は配備されていないし、何と言っても公金不適正支出の対応なので、そのための経費について胸を張って予算確保できる情勢にはない。つつましく最低限の事務用品で対処する姿勢を見せなくては納税者から反発を買う」。今のように一人一台パソコンなどまだ夢の話の当時、数十万もするパソコンを末席主事ごとき私の作業専用に調達することに対しては想像以上に抵抗されたものだ。
それでも一人で集計をやれと命じた手前、調査員は色々と画策してくれて、暫くすると、NEC98シリーズの真新しいラップトップ端末を持ってきてくれた。なんと総務部長が自分用に配備されたものを貸し出してくれたのだという。部長は実態としてパソコンを触ることが殆どないし、なによりも御自身が旅費問題再調査の事務局の総括責任者を務める立場から、「喫緊の最重要課題への対応作業のためなら」と貸し出しを快諾してくれたというのだ。
借り受けた端末のスペックはもう忘れてしまったが、県庁の事務一般職の最上位格である総務部長の専用機はパーソナルでは当時ハイエンドに近かったものだと思う。起動すると今では懐かしい"ロータスドミノの表計算ソフト123"のアイコンが見える。ワードプロセッサーソフトは日本が生んだ名作"一太郎"。これならやれそうだと久々に安堵するとともに、俊敏に作業対応できるためにソフトの使いこなしの"素振り"を始めた。
あれこれ考えると、最初は「こんながらんとした会議室」と思っていたが、膨大な書類が集積する部屋となり、その点検精査のための動員なども想定すると、あっという間に手狭になりそうだ。そんな、"来ることが分かっている事務作業の大洪水"を想い、ますます気が滅入るばかりの私に、またも調査員はさらなる追い打ちを掛ける。「全庁分の調査報告の集計作業は君がやってね」。
聞けば、「初回調査」は、出張先や日程と旅行命令簿など関係書類との照らし合わせで、主に表面的で形式的な不整合が明らかな旅費支出が不適正として報告されていて、件数や金額も少なく、内容も概括的に記載する書式により取りまとめられたということで、当時の県庁各部署に普及していた富士通製の簡易な表計算ソフト「エポカルク」を利用して、デスクトップ型パソコン又はポータブルの専用機で担当者が一人で集計作業を行っていたのだという。
しかし、これから進められる「再調査」は、今日までの経緯から察すると、不適正支出が発見される所属数が増え、件数や金額も初回調査の数倍になることが直感される上、不適正支出を行った要因などの内容も詳しく分類して示すことが外部から求められるだろうから計数の内訳表示も増えて、集計作業のボリュームは大違いになるのではと予想されていた。
「集計担当は私と誰ですか」と一応聞いてみるが「そんな余裕人員がいるわけないだろ。あんた一人」と案の定の応答だ。確かに、天下を揺るがしている不適正支出が再調査によりどのくらいの金額であると判明するのか、その集計は途中の情報漏洩が許されないものであろうし、作業分担による各種リスクも勘案すると、一人で終始完結的に作業することがベストなのかも知れない。
それでも報告個票からの計数の入力ミスなどの点検は複眼的に見ていく必要がある。少し食い下がると、面倒くさそうではあるが「必要により集計表の部分部分で分けて点検させるなど全容が漏れない形でスタッフで協働する」といってくれた。勢いで続けざまにもう一つ調査員にお願いだ。
「集計作業のために、ウインドウズ搭載のラップトップ端末を専用で私に預けてください」。前職場には農業の専門職ながらコンピュータに詳しい同僚が居て、彼の指南の下、当時111もあった市町村からの補助金関連報告の集計作業等の効率化のために、当時"ラップトップパソコンのフェラーリ"といわれていた「DEC Digital HiNote Ultra」において、ウインドウズOSを搭載して表計算ソフトを活用していた。会議室に持ち込まれた富士通のFM-Vシリーズのデスクトップパソコンにおける簡易な計算ソフトでは、膨大な作業が集中したときに追いつかなくなるだろう。せめてレスポンスと使い勝手の良いソフトで作業に当たりたかったのだ。
「我が儘言われても我々にそんな備品は配備されていないし、何と言っても公金不適正支出の対応なので、そのための経費について胸を張って予算確保できる情勢にはない。つつましく最低限の事務用品で対処する姿勢を見せなくては納税者から反発を買う」。今のように一人一台パソコンなどまだ夢の話の当時、数十万もするパソコンを末席主事ごとき私の作業専用に調達することに対しては想像以上に抵抗されたものだ。
それでも一人で集計をやれと命じた手前、調査員は色々と画策してくれて、暫くすると、NEC98シリーズの真新しいラップトップ端末を持ってきてくれた。なんと総務部長が自分用に配備されたものを貸し出してくれたのだという。部長は実態としてパソコンを触ることが殆どないし、なによりも御自身が旅費問題再調査の事務局の総括責任者を務める立場から、「喫緊の最重要課題への対応作業のためなら」と貸し出しを快諾してくれたというのだ。
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(「人事課行革班5-2「第三者委員会発足。疑念の眼差し中で悉皆調査を決定」編(2/2)」終わり。「人事課行革班6「ヒアリングで会議室は取調室?」編」に続きます。)
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