新潟久紀ブログ版retrospective

県職員新入りに「福祉ケースワーカーは見て覚えろ!!」編(前編)

●県職員として初めての異動の初日
 新採用で3年勤めた県本庁から離脱。2カ所目の職場は、新潟市から車で小一時間離れた町の、市街地から離れた田園地帯の中に建つ、県の出先機関が寄り合う3階建て合同庁舎の2階にあった。大学生時代に就活インターンシップなど無い時代であり、初めて見る建物に駐車場で一呼吸おいてから恐る恐る玄関へと足を運んだ。
 通常なら着任事前の年度末に前任者との引き継ぎを兼ねて新職場を下見するものだが、「現在の担当職員が居残るので赴任してから現場を見ながら引き継ぎしていきましょう」といわれていた。「現場を見ながら」…。机上で法規や資料を読み解き企画立案してきた仕事から大きく変わることを予感していた。
 横に細長い職場のフロアは柱が無い上に、広い窓面から駐車場より先々の田畑まで見渡せる開放感があり、ついこの間までの背の高い書棚と小さめの窓枠で囲まれた職場とのコントラストを際立たせる。具体の仕事の話を聞く前ではあるものの、出先事務所に勤めるのだという感覚が意識に滲み広がる。
 出先らしい事務所風情を感じながら、来訪者用に入り口付近に貼ってあった執務室の配席図を頼りに、尋ね当てるようにと言われていた上司職員を目で探す。6人ほどが向き合う係の一番角奥が目指す上司だろうか。40歳代ほどで恰幅良く親分肌が滲み出ている。くわえ煙草がいかにも上長然とした態度だ。
 すると、係員がまとまって座る"シマ"の横の窓際に配置された単独の机の席から「ご苦労様」と声が掛かる。本庁では係長相当の職が出先では課長とされており、係員集団から独立した配席となっていた。新任で末席職員となる私が最初に挨拶すべく目指してきたのは、出先職員らしくなく紳士然としたこの課長であった。
 課長よりも部下の主任の方が偉そうに見える。恰幅の良さや喫煙の態度のせいばかりでなく物言いまでが職制的な上下関係を感じさせず、初見では横柄ささえ感じさせる。一方で嫌みな感じがするでもなく、課長も気に掛けていない様子。出先機関は人間関係の雰囲気すら別モノなのか…と感じたものだ。
 課長は新任者受入れに際しての簡単な挨拶や事務的伝達を終えると、所属する係のその恰幅のよい年輩主任に私の身を引き継いだ。ノートを開いて担当業務について聴き取り、メモをする姿勢を見せると、年輩主任は「習うより慣れろだから。明日以降、現場回りに最初は同行するのでそこで何をどうするか見て覚えれば良い」という。
 新任地に赴任してからの引き継ぎということで、短時間に膨大な情報を見聞きする覚悟をしていた私は、「明日以降、先輩の動作を見ながら覚えて」に肩透かしを食ったようだった。然りとて本日一日をぼうっとしている訳にもいかない。机内や近くの書棚等にある図書や資料をめくり始めてみた。
 6人の係の向かい合わせは末席の私の次に若い職員のはずで、明るく面倒見のよさそうな好青年だった。杓子定規で無愛想が多い県職員の中にも、こんな人当たりが良く気の回る人がいるのだなぁと内心関心していると、上司との雑談の中で国鉄民営化時に転身してきた人達の中の一人だと分かった。
 国鉄の封建的体質などをやや偏見がちに想像していたが、セクションや担当業務、属した団体等により大きく気質は違っていたようだ。観光旅行などを担当していたと聞くと、この先輩職員の優れた人当たりや態度は"然もありなん"と思った。国鉄民営化に際しての県庁転身者は資質が高いと言われていたことに合点する。
 本来引き継ぎを受けるべき年輩主任は、暫くして"ぷい"と外出してしまった。腰が低めの課長と部下の割に横柄にも見える年輩主任との関係性を垣間見て、本庁とは異なる空気の中での自分の立ち居振る舞いのあり方など思案する中、先輩同僚の気配りで所在なさを紛らわせつつ、初の異動で初の出先機関勤務の緊張の初日は定時に終えたのだった。

(続く。「いよいよ現場に出動!!」の後編は近くupします。)

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