●第三者委員会発足。疑念の眼差しの中で悉皆調査を決定(1/2)
4月の半ばに、第三者委員会の設置が我々下っ端にも知らされた。学識経験者などが加わるような県庁で一般的な委員会と異なり、元高裁判事や弁護士、公認会計士が加わる物々しい様相だ。関係分野の識見が高いとして各界の団体からの推挙に基づくなどすることで、調査を受ける側のいわば"被告人"的立場たる県当局による恣意的な人選と言われないよう配慮されていた。
調査方法は、初回調査での「不適正支出があれば報告させる」という方法によっては、きちんと漏れなく浮き彫りにし尽くせなかったという反省を踏まえ、職員一人ひとりに調査対象年次の全ての旅費支出の一覧表を印刷して配り、一件一件について、間違いなく記載された通りに出張に行った場合は◯、行っていない場合は×などと記載して提出させる方法とした。
初回調査のように集計結果を公表したそばから、そこで報告されていなかった不適正支出案件がまたぞろ出るような事は繰り返せない。旅費支出について支給を受けたとされる職員自身から全件にわたる適否の自己申告を書面で明示させることで、カラ出張などを正しく申告しないと「結果責任は職員個人に帰結するよ」という牽制であり、「組織としては擁護できないよ」という最後通告なのだ。
組織としての県は職員を突き放し切り捨てにかかるのか…。例えばカラ出張で浮かした財源を職場で予算化しにくい公的支出に充てたというケースもあり、そうしたやむにやまれぬケースであったとしても名義を使われた個人を断罪するのか…。班員達のそんな雑談に対して上司は穏やかに諭すのだ。「個人的な悪意ある行為であろうが組織的な事情であろうがこの際全てを出し切らなくてはならない。全職員の旅費全件の"悉皆調査"は県として不退転の決意を示す上で避けられないものであることを、通知や照会の文書などでなく一人ひとりの直接作業を通じて真剣に認識してもらう職員自身ためのものでもある。責任問題は事実関係によりしかるべく判断される。我々は先入観や予断を持たずに愚直に事実をすべからく明らかにすることに注力しよう」。
かくして、調査対象となる県職員約1万3千人の直近3年分の旅費支給200万件近くについての全部調査が始まった。公金の出入金を担当する出納局という部署にあるデータベースの活用により、個人毎に名寄せされた旅費支給一覧に、出張有無の記載と備考欄を加えた「旅費自己点検リスト」が作成され、配布された職員一人ひとりが自己点検に臨む。2~3年前の出張ともなると本当に行っていても記憶があやふやなものもあろう。各自が自分の手帳や関係する業務記録などを確認する手間や時間も勘案して、1か月程度の回答期間が設定された。
(「人事課行革班5-1「第三者委員会発足。疑念の眼差しの中で悉皆調査を決定」編(1/2)」終わり。県職員4か所目の職場である人事課行政システム改革班の回顧録がまだまだ続きます。)
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