新潟久紀ブログ版retrospective

新潟独り暮らし時代63「新採用で独身寮の衝撃(その3)」

●新採用で独身寮の衝撃(その3)

 自治研修所における新採用職員研修の最終日の金曜に、最後のカリキュラムが終わり解散となると、私は鉄道に乗って真っ直ぐ実家の柏崎市に向かった。月曜からは新潟市にある県庁の14階の企業局総務課に勤務することになる。土日の間に単身者用「文京寮」に引っ越しを済ませて出勤できるように生活環境を整えなければならないのだ。
 中古の愛車の三菱ランサーEX1400GLに、ホームセンターで購入した小さな書棚と布団袋、衣類や身の回り用品を入れた押入れ用収納ケースなどを積み込み、寮に向かう。柏崎市から新潟市までの道程の殆どは国道116号で学生時代からもう何往復もした道のり。わずか半月足らずの久々の実家暮らしを終えて、またも新潟市内での一人暮らしが始まる。
 2時間弱のドライブの末に初めて「文京寮」に着くと、聞いていたとおり駐車場というものが無い。玄関前の空き空間に停車して、取り急ぎ荷物を搬入することに。応対してくれる管理人さんらしき人は見受けられず、玄関で靴をスリッパに履き替えてヒンヤリした鉄筋造のロビーから階段を上がり。企業局総務課から事前に知らされていた部屋に向かう。
 その部屋の入口がまた凄いのだ。なんと「木製の引き戸」でしかも鍵は驚きの「ダイヤル式南京錠」。建物の造りは鉄筋コンクリートでも中身は昭和初期モードなのだ。私の新任地の企業局総務課から聞かされていた暗証番号をダイヤルして開錠し、いざ部屋の中へ。
 「四畳半とはかくも狭いものか」。私の第一印象だ。入ってみて分かったのだが。押入れも引っ張り方式の襖で半軒分しかない。上段は布団一式で一杯、下段は衣類や掃除用具などくらいしか入るまい。そして布団を敷いて残る空間のことを考えるとと持ち込んだ小さな書棚しか置けないような四畳半の狭さ。予想通りとは言え書棚にドライヤーや櫛など身支度用品やコップなどわずかな食器を入れていくと、もう部屋に何かを置くスペースが無いのだ。小型のテレビでさえも置きようがないくらいだ。
 実家暮らしの頃から大学生時代まで、大型のステレオコンポを部屋に配置して大音量で洋楽ロックなどを聴くのがリフレッシュや思索に欠かせなかった私としては、それができなくなるのが極めて辛いことになりそうだ。慰めに実家にあった高校入学時に買ったラジカセを持ち込んでヘッドフォンで聴いては見たが、やはり大型のスピーカで空気を揺らして聴くダイナミックさが得られないのはストレスなのだ。
 寮の近所を歩くとすぐ近くに個人が所有地を貸す月極駐車場の空きがあることを見つけ、早速近くにすむオーナー宅を訪問してそのアシで契約。青空で砂利敷の駐車場だったがオンボロ愛車なので十分だった。
 寮に入居した日曜日は賄いも風呂も休みだったので、コンビニで弁当など買って食べ、風呂は春先で汗もかいていないので軽く水シャワーで凌いだ。
 月曜日にいよいよ寮からの初出勤。上手く乗り継げばバスで県庁正面まで行けるようだったが、もともとバスに乗りなれていないし、2kmで30分弱程度の歩きなら運動にも丁度良いと思い初日から徒歩での出勤を始めた。4月下旬あたりの新潟は爽やかな最高の時季。この時は先々の梅雨や秋冬の防風に降雪などは考えようもなく、穏やかな日差しに少し汗ばむくらいの徒歩通勤が楽しめたものだ。
 勤めて間もない4月中はさすがに残業は無かったので、毎日が定時に退庁できたが、手持ち金が殆ど無かったこともあり、寮に真っ直ぐ帰っていたものだ。何かと不便な寮であったが海に近い立地だけは良い点だったので、ジャージに着替えて春のまだ明るい夕方に海沿いの景色を楽しみながらのジョギングに出かけたものだ。
 関屋分水河口周辺の海岸沿いは、夕日をやわらかに照り返す穏やかな水面の眺めの日は特に素晴らしい。海を見下ろせる通称「たこ公園」に差し掛かると、その名の通りタコの形をして子供が出入りしたり滑り台にもなるコンクリート製の遊具のほか、ブランコなどがあり、若い親が小さな幼児を遊ばせている姿などが見えてきて、なんとも平和そのものだなあという感覚に浸れたものだ。そして、その公園の高台にあるコンクリート製の4階建てほどの展望台に駆け上がる。遮るものなく日本海を望み、その水平線が曲線であることがよくわかるこの場所は、それ以来私の新潟暮らしにおける最高のお気に入りとなり、30余年を過ぎてなお月に一度はジョギングで訪れている。そしてその度に”勤め始めの若かりし頃”がしみじみと思い出されるのだ。

(「新潟独り暮らし時代63「新採用で独身寮の衝撃(その3)」」終わり。仕事遍歴を少し離れた独り暮らし時代の思い出話「新潟独り暮らし時代64「新採用で独身寮の衝撃(その4)」」に続きます。)
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