新潟久紀ブログ版retrospective

人事課行革班13「特命1年の最後はせめて行革担当らしく」編

●特命1年の最後はせめて行革担当らしく

 旅費・食糧費の調査結果の公表にあたっては、単に不適正支出額や使途などのみならず、全職員による自己点検や所属長毎のヒアリング等を通じて浮かび上がった原因と背景、そしてそれらを踏まえた再発防止のための改善策も併せて報告書に取りまとめられていた。問題の全容と今後の方向が分かり易くきめ細かに整理されていたので、実務担当の我々に食い下がってくるような問い合わせなどは殆どなく、我々若手にはいよいよ久々の平穏の日々が訪れたのだ。
 一方で、調査員以上の責任ある地位の職員達には、次なる最大のヤマが待ち構えていた。調査報告書公表の後に直ぐに迎えた県議会の12月定例会で徹底した議論が始まり、その答弁対応等に忙殺される日々が息つく間もなく訪れていたのだ。
 下っ端の私は答弁案の作成などはご容赦いただいており、調査の残務をほぼ片付けて、遂に念願の有給でも取らせて頂きますかなどと考えていたら、ずっと目の回るような忙しさの調査員は、暇そうになり始めた私を許すまじ(?)と"死なば諸共"かのごとく、別件の仕事を私に命じてきた。
 「行政システム改革大綱・実施計画をメンテナンスしてくれ」。県行政推進の経営資源である「ヒト・モノ・カネ」の効果的効率的運用のための取組を網羅的にまとめた大綱が8年度に策定されており、併せて公表されている年次的な実践計画の進捗管理を調査員は担当していた。不適正支出問題に忙殺される中で作業を後送りしてきたが、年末が近づく中で、年度末までに関係部局から報告させて内容更新させることを考えると時間的に限界。この際、末席主事の私でも猫の手よろしく借りたいということなのだ。
 12月になり今年度も4分の3が終わろうかという時期にきて、やっと「行政システム改革班」らしい仕事がさせてもらえるのか。下請けとは言え、不適正支出関連作業にいいかげん辟易していた私は、毛色の違う仕事に喜び、早速、行政システム改革大綱を紐解いてみた。
 当時の自治省が主導して、地方自治体の肥大化抑制を主眼に全国的に同様の取組が展開されていたのだと推察されるが、人件費縮減のための業務効率化や定数管理など、取りまとめを担当する人事課に関連する課題項目のウエイトがやや重いなというのが第一印象。財政健全化などももちろん項目建てがあるが、中には港湾施設の活用促進など、行政システムというよりも政策課題に関するものもあって、全体としての一貫性というかバランス的にどうかとも思えたものだ。
 本来ならば、良くも悪くもオーソドックスな人事課のプロパー業務から一旦離れて、不適正支出問題で露見した仕事の進め方や職員意識の問題も踏まえ、県庁全体としての新たな時代の行政のシステムのあり方やその具現化を議論し、大綱として取りまとめ、実践計画を推進するべき。そのために新設された筈の「行政システム改革班」であり配属された私であった筈だっただろうに…。不適正問題の防止にもならなかった「行政システム改革大綱」のメンテナンスに若干のむなしさを感じながら、そのための関係部署への照会や情報収集と整理を私は淡々と進めた。
 県議会12月定例会を何とか凌ぎきった調査員は、散々"ずさん"と叩かれた昨年の初回調査をほぼ独りで対応してきた上に、続く前代未聞の規模と細かさの再調査も実務の先頭に立って取り仕切ってきた疲れが出たのか、ついに高熱を出して病気休暇に入ってしまった。たぶんインフルエンザだろうし一週間くらいはまとめて休ませてやろうという参事の計らいもあり、「行税システム改革大綱のメンテは、独りで作業を進め、人事課長への説明までクリアできる内容に仕上げなさいよ」という有難い御下命もあり、旅費調査集計分析という大役を終えたにも関わらず年末年始も気が休まらないのだ。
 なんだかんだと次々に案件が舞い込む中で、それらを夢中になってなんとか対処していくうちに、あっというまに2月も半ば。そんな折り、県議会2月定例会に先立ち通例行事となっていた新年度の当初予算案が発表されたが、併せて発表される組織改正に、調査班すなわち人事課行政システム改革班の面々は注目した。
 「総務部に新行政推進室を新設する。これに伴い人事課行政システム改革班は廃止する」。同僚で上位職の主査は言う。「これで俺たちもお役御免だな。「行政システム改革班」は旅費等の不適正支出調査員を囲うための仮の看板だったわけで、我々は使い減りしなさそうな野郎達だから集められただけ。新しい組織「新行政推進室」には疲れ果てた我々ではなく新たにフレッシュなメンバーが配置されるだろうよ」。元々辛口の彼は自身も含めた処遇についても手厳しい。
 そうか、人事課の軒下暮らしも儚く一年で終わりか…。人事課としてのメイン業務に携わりたかったが、確かに呼び込まれ方がプロジェクト的だった我々は不適正問題調査というミッションが終わればもうお払い箱なのかも知れない。私と同年代の職員には、出身校の偏差値も高く優秀な人材が少なくないし、「新行政」という看板は、それに適う人達に託されるのだろうな。主査のもっともらしい説話に感化された私は、少し残念なような、少し悔しいような気持ちで、3月の人事異動内示を待つ日々を送っていた。

(「人事課行革班13「特命1年の最後はせめて行革担当らしく」編」終わり。県職員4か所目の職場である人事課行政システム改革班の回顧録は次回でいよいよ最終回。人事課行革班14「【番外編】涙の「時間管理でゆとり創造」ポスター」編に続きます。)
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