新潟久紀ブログ版retrospective

柏崎こども時代43「小学校卒業前の花壇づくり」

●小学校卒業前の花壇づくり

 昭和半ばの柏崎市立比角小学校に通い詰めた6年間を振り返る時、これが”小学校生活の締めだ”と言えるような思い出は何だっただろうか。
 最終学年の修学旅行や運動会、展覧会といった大きな催事であったり、それはやはり卒業式だろうという向きが多いのではないか。
 さて、私はといえば、基本が出不精であり、運動嫌いに芸術的才能などまるで無いときていたので、個々人が各々の得意技を存分に発揮したいと臨む催事は、劣等感に苛まれる思いに耐え忍ぶ時間や期間でしかなかった。
 また、卒業式という式典は、何かの節目や区切を心に刻む行事として、その雰囲気の厳かさなども含めて嫌いではなかったが、感動で胸を熱くするというほどでもなかったので、涙腺が弱めがちな女子はともかく男子で涙ぐんでいる級友など見ると、本気なのかと、そこまで感情移入できることがむしろ羨ましくさえ思っていたものだ。
 こんな出来損ないのひねくれものが、最後の学年でその終わりを思い返す時にふと浮かび上がってきたのは、なんと”花壇の造設作業”であったので我ながら驚いた。
 当時の土曜日は午前中授業がある、いわゆる半ドンの時代だったのだが、事前に担任教諭からの声掛けに応えてお手伝いを申し入れていた6年の我がクラスの級友7、8人は、放課後になると直ぐに土曜の午後に学校に残る時には定番となっていた学校近くの行きつけのパン屋に向かって総菜サンドなどを買い込んできて教室で掻き込み、事前の指示のとおりに校舎玄関前の敷地内広場に集まった。
 いかにも自発的な有志のように書いたが、実態は強面の担任からの事実上の名指しで選ばれた面々であり、私などは当該教諭と私の親戚筋に縁故があるということで常日頃から何かと雑用を頼まれがちなことの延長での”ご指名”であった。
 それでも何のとりえもない私はどちらかといえば頼られて何かの作業に加わることは嫌いではなかったし、家にあった小さな畑仕事で母親を手伝うのも好んでしていたので、土をいじる類の花壇造りと聞いてまんざらでもなく参画した。
 校舎の玄関前はちょっとした公園のようになっていて、道路に繋がる門のところまで松木の植栽があったり、比較的大きくて重厚感のある銅製の日時計が直径2メートル弱ほどの丸い芝生のなかに鎮座していたりして、今から思えば中々立派な敷地だったと思う。
 門からつながるブロック塀沿いの、1掛ける5メートルくらいの長方形型の土面を範囲として、円柱型のブロックを並べて囲いをつくり、盛り土をして、花の苗を植えようというのだ。
 歴史ある小学校の児童だれしもが登下校時に目にする玄関前に手を加えるという事案なのに、我がクラスの担任だけが、しかも若干名の有志児童だけを引き連れて作業にあたるのはなんとなく違和感を持っていた。それでも、筆頭学年でリーダーのような存在だった担任教諭が、面倒と言えば面倒な作業を買って出て、子分のような教え子達を使って仕上げて見せると教務室で啖呵を切ったのかもしれない。昭和というのは小学生の児童ながらに大人同士のそんなやりとりも普通に想像するような雰囲気だった。
 担任は実家で家業の稲作などもやっていたし、野良仕事などに長けた児童もそれを見込んで選抜されていたので、花壇づくりは順調に進捗してあっという間に仕上がったと思う。
 夏の終わり頃の晴天の土曜の午後、しかも市街地から少し離れた住宅地の真ん中の放課後の小学校というのはとにかく静まり返っていて、わずかにお喋りしながらも黙々と協力し合って土仕事を続けていた数時間は、この小学校の土地そのものに近く卒業していく自分たちの思いを物理的に残していくような気がしてならなかった。
 作業がひと段落したところで担任が皆に一本ずつ奢ってくれた市販の安いアイスクリームバーは、汗を流した後だからというだけでなく、単純作業の中で6年間の振り返りに至る色々な思いを巡らせていた上だったので、今でも忘れられない味として口に頬張りながら見上げた雲一つない青空と共に記憶に残っている。

(「柏崎こども時代43「小学校卒業前の花壇づくり」」終わり。仕事遍歴を少し離れた実家暮らしこども時代の思い出話「柏崎こども時代44「学級新聞づくりを独りで」」に続きます。)
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