新潟久紀ブログ版retrospective

【連載13】空き家で地元貢献「不思議なおばちゃん達と僕(その13)」

●不思議なおばちゃん達と僕(その13) ※「連載初回」はこちら
 ~せめて順当な看取りを2/2~

 大正初期から昭和の前半にかけて男3人女4人の合わせて7人の姉弟が生まれ、生まれてすぐ早逝した2人の男児を除く5姉弟が、各々心身の難で自立性が低い中で、長女は自身の私生児である僕の母に引取られて暮らして看取られ、長男は生涯を過ごせる救護施設に入ることができ、次女はこのたび老衰で自然死した。あとはしっかり者の"真ん中のおばちゃん"と、知的障害があってまともなコミュニケーションは難しいが元気で明るさはある"年少のおばちゃん"だけとなった。
 おばちゃん一家は、今で言う後期高齢者二人だけの世帯になったので、僕の母は真ん中のおばちゃんと相談して年少おばちゃんの特別養護老人ホーム入所申し込みを済ませた。いわゆる特養は、高齢化と長寿命化が進展する中で入所待機者が非常に増えていて、申し込みをしても何時頃に入れるかは全く見通せない。全国的に特養の増設が追い付いておらず、今入所している人が亡くならないと空かない状況だった。ついこの間まで福祉ケースワーカーをしていた僕自身がこうした状況を承知していることもあり、早めの申し込みについて僕も良しと考えていたものだ。しかし、真ん中のおばちゃんは自分の方が年長でありながら自身の特養申し込みは拒んだという。昔気質のプライドなのか他人の世話になるのを不自由と感じるのか、福祉の世話になるのは嫌だというのだ。僕の母もそうした気性を熟知していたので無理強いまではしなかった。しかし、このことが後で苦労を呼び込むことになるのだが…。
 年長おばちゃんの死去や、特養の手続きなどが進められていくと、もう遠くない先行きの話しとして、残るおばちゃん達の介護や看取りなどについて度々考えるようになった。亡くなる順番によりどのような対応が必要となるかを考える時に、二人のおばちゃんだけでなく、高齢になった僕の母のことも視野に入れなくてはならない。万一、僕の母が先に逝ってしまえば、買い物代行や各種手続きなど、僕の母の支援を通じて辛うじてバランスしているおばちゃん達の生活が立ちゆかなくなってしまう。また、そうした生活のフローだけではなくストックの問題も重大だ。僕の母が先に亡くなってしまうと、土地家屋というおばちゃん達唯一の財産の扱いが面倒になりそうなのだ。
 農村の"本家"から婿養子を付けて街なかに所帯を持たされた知的に難ある娘は、おばちゃん達7人を生んだのだが、その姉弟は自立性に難があり誰一人婚姻することのないまま年老いていった。皆が死に絶えた時に土地家屋だけが財産として残ることが想定されるが、法律に基づいてそれを引き継げるのは、長女の私生児である僕の母のみが長女、つまり僕の祖母を代襲して相続できるのだ。そうした点でも僕の母が先に亡くなるようなことがあれは、残された一番近い親族の僕が裁判所に申し出る手続きなどが必要になり結構面倒そうだ。母はそうした煩わしさを僕にもたらすようなことは避けたいとも思っていたようだ。
 誰がどのタイミングで亡くなったら何がどうなるか。年長おばちゃんの思い出話から広がった想定問答などもいいかげん詮無きことに思えてきた頃合いで、結論としては、僕も母もとにかく身体に気をつけて暮らし、母にとって、現存する生まれながらの親族はこの人達だけと言えるこの二人のおばちゃん達を、可能な限り見守り支え続けようということで、僕と母のほうじ茶での雑談を出涸らしの三杯目で終わりにした。

(空き家で地元貢献「不思議なおばちゃん達と僕」の「その14」に続きます。)
※"空き家"の掃除日記はこちらをご覧ください。↓
 「ほのぼの空き家の掃除2020.11.14」
☆ツイッターで平日ほぼ毎日の昼休みにつぶやき続けてます。
https://twitter.com/rinosahibea
☆新潟久紀ブログ版で連載やってます。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「地元貢献」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事