嵐ファン・大人のひとりごと

嵐大好き人間の独りごと&嵐の楽曲から妄想したショートストーリー

妄想ドラマ『スパイラル』 (21)

2011年02月27日 | 妄想ドラマ『スパイラル』
長らくお待たせしてすみませんでした

それではどうぞ


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   妄想ドラマ『スパイラル』 (21)



美菜に会えないかもしれないと渉は思っていたが、

タクシーがマンションに着く直前、「待ってる」と美菜から返信があった。

嬉しい気持ちのあとに、不安が追いかけてくる。

どんな気持ちで待っているのだろう。


ドアが開くといつもとは違う、張りつめた空気をまとった美菜がそこにいた。

「会いたかった」

渉が言えたのはその一言だけ。

一番伝えたかった気持ちが真っ先に口からこぼれた。

カチャリとドアが閉まると、美菜は何も言わずにいきなり渉の胸に飛び込んできた。

「どうしたの?何があったか話して」

美菜は渉に両腕をまわしたまま、顔をあげて渉を見つめた。

そして言った。

「キスして」

唇をあわせると、美菜の気持ちが何も変わっていないことがわかった。

ついさっきまで冷たい雨に濡れていた渉の心は温かいもので満たされ、

美菜のことをこんなにも愛しているのだと、今更ながら強く思う。


部屋に上がると、前に来たときは無かった写真が

何枚も飾られていた。

土手に咲く菜の花、風に花びらを散らす桜、可憐なオオイヌフグリ。

落ち葉の積もる陽だまりに群生するスズラン、あとは渉には名前のわからない野生の花たち。

四つ切サイズの写真から普通のプリントサイズまで10枚以上ある。

美菜は渉の手を取ってソファに座らせると、柔らかな笑顔で言った。

「綺麗でしょ。私のおじいちゃんが撮った写真なの。小さいころは撮影旅行に

 一緒について行ってた」

「おじいちゃんはカメラマン?」

「ううん、休みの日に趣味で撮ってたの。いろんな所へ行っていろんな話をして・・・楽しかった」

「おじいちゃんのこと好きなんだね」

「大好きだった。もうずいぶん前に天国に行っちゃったけど、写真はたくさん残ってるから

 悩んだり迷った時は眺めて勇気をもらうの。優しい花たちだけどみんなたくましいのよ」

美菜はそう言って壁の写真に視線を移した。

その横顔を渉は見つめる。


「何を悩んでる?」

渉は美菜の返事を待った。

心が通じ合った今は穏やかな気持ちで美菜の言葉を待つことができる。

少しの間があって美菜が答えた。

「私ね、この仕事を辞めようと思う。ずっと周りの期待に応えようとがんばってきたけど、

 張りつめてた糸が切れちゃったみたい」

あまりに思いがけない美菜の言葉だった。

「女優の仕事が好きだと思ってた」

「好きよ。でもいろんなことがあって・・・」

美菜はなにかを思いめぐらせて黙った。

「沙織となにかあった?」

「あった」

「どうして話してくれなかったの」

「最初は渉さんの映画のことがあったし・・・後は、正直に言うと渉さんにも腹を立ててた」

それから美菜は沙織との間にあったことを渉に話した。

渉は自分のことを気遣って、ずっと我慢していた美菜が愛おしくて、

しっかりと抱きしめた。

「ごめん。なにも気づかなくて。そしてありがとう。沙織とは何もないよ」

「うん」


「俺のことより、美菜はほんとに女優をやめるつもり?後悔しない?」

「散々考えた結果なの。一度しかない人生だから。明日、社長に会って話すつもり」

「実は小田中さんと会った。美菜が連ドラをやるように説得してくれって言われた」

「社長が渉さんにそんなことを・・・じゃあ私が辞めたいって言ったら、渉さんにも迷惑かかるかな」
 
「美菜が悩んで決めたことなら俺は反対しないよ。いつでも美菜の味方だ」

渉は小田中が美菜の決心をすんなり受け入れるとは思えなかったが、

どんなことになっても美菜を守ろうと思った。


   ---------つづく------22話へ 

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