西京極 紫の館

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ぜんしゅの跫  澤村伊智/著  角川書店

2021年10月09日 22時18分01秒 | 西京極の本棚
【紹介文】
足音が背後に迫る。かり、かり、がりっ  。真琴と野崎の結婚式。真琴の姉・琴子は祝いに駆け付けるが誤って真琴に怪我をさせてしまう。猛省する琴子は真琴に代わって、通行人を襲い建造物を破壊すると噂の「見えない通り魔」の調査に乗り出す。不気味な足音を頼りに追跡した通り魔の姿は、余りにも巨大な化け物だった……。果たしてその正体は!?論理的にして大胆な霊媒師・比嘉姉妹が怪異と対峙する書き下ろしの表題作ほか全5編を収録!

【総合評価】 ☆☆☆☆★(満点は☆5つ)
 ドラマ性 ☆☆☆☆★
  独創性 ☆☆☆☆★
 読み易さ ☆☆☆☆☆

【西京極の読後感想】
タイトルの「跫」は「あしおと」と読む。霊媒師の比嘉姉妹の関係するエピソードをまとめた短編集。どの短編も秀逸で中々に怖い。どのエピソードも根っこには男女の愛憎がある。そこに物の怪やら怪異が忍び込むという展開。読み易いのでオススメ…と言いたいところだが、まずは『ぼぎわんが来る』と『ずうのめ人形』を先に読んだ方が本作を楽しめると思います。では各エピソード毎の一言レビューです。

鏡:『ぼぎわんが来る』の主要登場人物の一人・田原秀樹が主人公。会社の同僚の結婚式で秀樹は陽気でブサイクな新婦を他の出席者と一緒になって嗤っていたが、隣席の男と会話する内に予期せぬ事態に陥っていく。内面の醜さが不幸を招くという寓話。
わたしの町のレイコさん:どこの町にもある「口裂け女」的な都市伝説。だが「わたし」の町の伝説には過去の忌まわしい事件が基になっていたと判明する。この短編集の中で唯一比嘉姉妹と無関係なエピソード。伝説の基となる事件そのものが怖い。
鬼のうみたりければ:真琴の夫で心霊ルポライターの野崎の友人女性が語る奇怪な体験談。女性の夫には幼少期に行方不明になった双子の兄がいた。その兄が三十年ぶりに現れるが、それは事件の始まりだった。ラストは予想出来るが、出来ても怖い。
赤い学生服の女子:交通事故に遭遇し大怪我をした男・古市は、入院先の病院で奇妙な体験をする。同室の患者が次々と変死を遂げていくのだ。その順番はやがて自分に回ってきて…。『ずうのめ人形』に関連するノスタルジックなエピソード。でもオチはやっぱりホラー。
ぜんしゅの跫:表題作なのにコレが良くも悪くも一番フツー。“ぜんしゅ”のナゾ解きは面白いけど、話の展開はありきたりでやや著者らしくない。それでも琴子と真琴の姉妹が共闘するシーンはファンなら嬉しいはずです。

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