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12日目/パリ2日目・美術館&ライブハウス巡り②ロンバール通りでライブハウスのはしご

2008年06月05日 15時00分33秒 | モロッコ~フランス旅行2008
今日のもう一つのメイン・イベント、ライブハウス巡りの時間まであと僅か。美術館巡りも最後の方は時間との戦いで、棒の様になった足を引きずり、喉の渇きに耐え、それはまさにルーブルの後半で現れたフランス大作の山々が戦争を題材にしていたのにぴったりフィットして苦闘そのものであった。(笑) まぁ、たった1日でパリの全てを堪能するってのにも無理が有ったのだが旅程の都合上仕方が無い。意地でもパリのジャズにはプロ・ミュージシャンとしても触れておきたい。

今日は丁度、ロンバール通りに3軒有るジャズ・クラブでチェット・ベイカーをトリビュートしたイベントが有るという。20ERO(約3200円・ドリンク別)で3軒はしご出来るというからかなりお得である。

小さな通りに本当に3軒の店が連なっており(Sunsideという店は地下にSunsetという別のライブハウスも経営している)、どの店に入るか悩む。出演アーティストは僕の勉強不足で誰一人知っている名は無い。勘に頼って、まずは・・

Le Baiser Saleに入る。店内は日本のライブハウスと変わらない広さで、小さな丸テーブルが並んでいる。後の席にはFM放送の中継スタッフが陣取り、今日が特別イベントだと言う事を物語っている。客席はどんどん客で埋まっていき、普段、少ない観客の前で演奏している僕には羨ましい光景(笑)に。60人ほど集まった所でライブが始まる。


Medelic Collignon(flh&vo)4<Frank Woeste(Fender Rhodes), Frederic Chiffoleau(b), Philippe Gleizes(ds)>

若手のバンドだ。リーダーのCollignonはMCで明るくジョークを飛ばし(勿論、フランス語なので僕には分からない)、歌はチェットよろしく甘い感じ。だが、スキャットやフリューゲルではハイテクを披露し観客を魅了する。特にスキャットでは濁り気味のウラ声で凄まじく速いパッセージを歌う。バックのメンバーはフレンチ・ジャズの特色か、只ひたすら淡々と演奏する。何だかそれが美術館巡りの疲れを呼び起こし、睡魔が次々と襲ってくる。スタンダードとオリジナルを織り交ぜたラインナップだった。

次に隣の店Sunsideに入る。

この辺りでは一番の老舗という。入り口のバーカウンターを抜けると、横長のステージが見えてくる。先程の店から流れてきた客も多い。僕は真ん中真ん前の席を陣取る。暫らくするとこの会場も客席は埋まり、演奏者達が姿を見せる。


Rene Urtreger(p)-Jean-Louis Chautemps(ts)4<Eric Dervieu(ds), Yves Torchinsky(b)>
おっと、ベテラン勢だ。音もまさに50年代~60年代のモダンジャズの香り。曲はスタンダードのみで、それこそ「アローン・トゥギャザー」「ダーン・ダット・ドリーム」「ノー・グレーター・ラヴ」「ジャスト・フレンズ」などの超スタンダードのオンパレード。ベテランならではの「味」で勝負と言う感じだ。


バンマス・Rene Urtreger(p)。ハニカミ屋の様でたまにしか喋らない。天野丘によるとチェット・ベイカーのバンドで長年演奏していたららしい。落ち着いたバッピシュなラインは聞いていて心地良い。まぁ、フレンチ・ジャズと言うよりは完全にNYジャズだ。このバンドが一番聞いていて楽しかったかな。

最後に入ったのがここ、Duc des Lombards

冒頭の写真がその入り口で、3店舗の中で最もスタイリッシュだ。既に少し遅れて始まったセカンドセットの中盤で、観客で溢れかえり立ち見で見るしかない。奥のステージからハードバップな感じのトランペットの音が聞こえてくる。


Stephane Belmondo(tp)3<Riccard Del Fra(b), Alain Jean-Marie(p)>
このグループも非常に聴きやすかった。ゲストでヴォーカルのオネェちゃんが入ってたけど、それがあんまし上手くなかった。それにフランス人独特の英語のイントネーション・・まぁ、日本人も結局は同じなんだけどね・・がどうもね。トランペットもピアノも凄くハイセンスで良かった。

ただ、3バンドを見て感じた事は、僕が既に聞き飽きるほど聞いてきたNYジャズに他ならないものを、ここパリで聴かされたという事である。僕はやはりフランス独特のジャズが聴きたかったんだと思う。リシャール・ガリアーノとミッシェル・ポルタルを初めて聞いた時の衝撃をこの街で味わいたかった。ガリアーノやポルタルはジャズという範疇で縛る事は出来ないけれど、果たして僕がジャズという言葉に縛られた音楽を聴きたいかというとそうでは無い。ここパリで僕が日本でやるべき事が少し見えた気がする。NYで聴けるモノを日本でやっても仕方が無い。日本に海外からやって来てわざわざ我々の音楽を聴きに来る人が居る・・そういう魅力的なものを提供しなくてはならないんじゃないかな。

メトロの駅構内であちこちで聴けると言われてたストリート・ミュージシャンにも一人しか出会えず(しかもアメリカのフォークソングを歌っていてガッカリした。)、レストランやカフェでは音楽は一切流れず、生活と音楽が日本以上に分離されているこの街に、僕は少し前まで幻想を抱いていた。UKなどと同じくクラブ・ジャズを中心に最先端の音楽で溢れていて、観客もきっと文化水準が高く、僕の音楽だって受け入れてくれる土壌が有るに違いない・・と。しかし、その幻想はこの日、完全に消え失せた。僕は世界の何処かに逃げ場所を求めていたに過ぎない。芸術家は常に自分を認めてくれるユートピアを求めて彷徨うけど、そんなものはこの地上には存在しない。貧困に喘ごうが、自分の居場所でただひたすら自己表現をするしかないのだ。どうやら僕が行こうと思っていたジャズクラブも何軒かクローズしている様だし、この街の現実を垣間見る事になった。

この日は疲労と共に何だか少しブルーになってバイタリティーも全く無くなってしまった。近くのピザ屋でピザを食べ、タクシーを拾ってホテルに戻る。ベッドに倒れこんだ後は体中が痺れ記憶が無い。明日は朝早くリヨン駅からTGVでアビニョンに向う。

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2 コメント

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ライブハウス (びりーふ)
2008-06-06 09:30:30
おとくなイベントの日だったんですね。
デュック・デ・ロンバールの店は
「人気のライブハウス」
って私の持っているガイドブックに書いてありました。
上品な雰囲気がある店内の様子ですね。

私が行った店はサンジェルマン・デ・プレ側の方で
(名前は忘れましたが)穴蔵みたいな空間はちょっと
下町のお好み焼き屋さん風な雰囲気でした。
夜遅くになって気がつくと満席で熱気ムンムン・・

日曜日の公園に行った時は道ばたで
演奏している人達がいましたよ。
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もっと長くいないとね・・ (SGURU)
2008-06-06 23:45:14
まぁ、たかが1日や2日で何が分かるネン!って話ですけど、やはりNYと比べちゃうからなぁ。(苦笑)

TVで見るとあちこちからバンドネオンやシャンソンが聞こえてくるって感じだったので期待しすぎたかも。

その穴蔵みたいな店って確か凄い有名なんですよ。行ってみたかったなぁ。

実は、僕の行った地区より、山側に行った方が色んな音楽を楽しめたとか。パリでは山側の方が下町だそうで。
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