Stan Getz "Four" Solo transcription
スタン・ゲッツのアルバム「West Coast Jazz」から“Four"のソロのコピー(taranscription)です。
実は、これ、レッスンで生徒さんに出した宿題で、その生徒さんが毎回少しづつ血の滲む思いでコピーして来たものを、僕がレッスン中に修正して数か月かけて完成したものです。その生徒さんはゲッツが大好きで、だからこそ完成出来たものだと思います。好きこそものの上手なれ…と僕は思います。
いわゆるコピー譜は色んな形で手に入れる事が出来ます。僕も若い頃は買い漁っていました。でも、そうやって手に入れたものって結局身に付かないんです。
全ての楽器で共通して、「コピーが良い」というのは皆さんご存じの筈。しかし、大切な情報は「楽譜」には殆ど有りません。確かに、理論的にこの音はテンションだの、アプローチノートだの、なんとかスケールだの…と理解する事は必要かもしれません。しかも、「自分はそれほど耳が良くないんで…」と言って、生徒さんが耳コピの作業を怠るケースは多い。でも、それは案外ラッキーな事かも知れませんよ。
僕の生徒には絶対音感の持ち主が何故か多くて、僕より遥かに耳が良い方もいらっしゃいます(苦笑)。そういう人って、風邪引いて寝込んでても、布団に入りながらでも耳コピ出来て採譜しちゃうんです。羨ましいったらありゃしない(笑)。でも、いざサックスで譜面通り吹き始めたらニュアンスが全く無い。その点、耳がそこまで良くなければ、何度も聞き返す必要が有り、気が付いたらニュアンスも何となく耳について離れなくなってる。教える側になると、前者の様に楽に耳コピ出来て、さぁその後ニュアンス…ってのは、教えるのがとてつもなく難しいのです。結局は耳が良くても悪くても、何百回と繰り返し聴く必要が出てきます。結局、必要な努力は同じです。
僕は生徒さんには「何でも良いし、好きなアーティストで良いから、コピーしなさい。最悪、テーマだけでも良いから。」とレクチャーしています。何故なら、簡単なソロでも、嫌いなミュージシャンだと決して入って来ないからです。
僕は、高校時代にサックスを手にし、最初にデスモンドの「Take Five」のテーマをコピーしたのから始まり、フュージョン・ブームに乗って、渡辺貞夫さんや、スクエアーの伊東たけしさんのソロをコピーしたりしてました。「こんなバンドがやりたい!」っていう熱い思いだけでした。大学時代はマイケル・ブレッカーの高速ソロを兎に角、根性のみで採譜してました。それも同じモチベーション、「こんなバンドがやりたい!」のみでした。ロック・ギターリストが「ハイウエイ・スター」のソロを必死で練習するのとなんら変わりはありません。
その後、バークリー音大時代は、コルトレーンにどっぷりハマり、色んなソロを採譜しました。アルバム1枚丸まるコピーして、毎日レコード流しながら一通り吹いたりもしてましたね。それが日課でした。そのうち、どっちがコルトレーンで、どっちが自分か分からないくらいニュアンスを近づける事が出来ました。それこそ、楽器の微妙な違いや骨格や声帯の違いが最後の壁になるくらい。で、その後、漸く自分自身のサウンドを探す旅に出たのです。それが無いと、アメリカでは食っていけなかったので。でも、その前にジャズの伝統になっているニュアンスや歌い方を学ばなければスタートラインにも立てません。それは譜面上には決してなく、音源にしか有りません。
ニュアンスもそうですが、タイム感や、ピッチや、ビブラートの位置や速度など、全て答えは譜面ではなく音源の中に有ります。ジャズ・ミュージシャンはピッチが悪い…ってよく言われますが、だからって、チューニング・メーター見ながら練習したって救いにはなりません。本番でアドリブしてる時に見てる暇なんかないので。それだったら、好きなアーティストのピッチをフレーズごと覚えてしまう方が合理的且つ実践的です。タイムもしかり。
ソロのコピーは基本的に僕のレッスンではカリキュラムに入っていません。何故なら、「好きなら勝手にやるでしょ?」ってのが僕の常識として有るからです。それでお金を取る…ってのが、どうも僕には抵抗がある。ただ、どうしても音が取れない…っていう場合は、こうやってお手伝いする事は有ります。
うちの生徒さんは皆さん勉強熱心で、よく練習して来られます。ただ、やはりニュアンスが一寸おかしかったり、分かってない様な感じで演奏する生徒さんもいらっしゃいます。そういう方には、一旦、カリキュラムの進行を止めてコピーをして来て貰う事になります。つまり、ソロのコンセプトを学ぶだけでは不完全なのです。
恐らくコピーという努力を怠ってきたのでしょう、プロ・ミュージシャンの中でもニュアンスやタイムがちゃんと理解出来てないな…と感じる演奏をする人をたまに見かけます。なので、当然、アマチュアでは大多数になってしまいます。それでは、何のためにジャズをやってるのかよく分からなくなってしまいます。カッコいい!と思ったから、高価な楽器を購入してジャズを始めたんですよね?僕も同じなんです。それにはまず真似て、何がどうカッコ良いのか、その秘密を探る必要が有りますよね。音遣いだけじゃない筈です。
だから、大好きな人をコピーしなきゃダメなんです。生徒や最近の若い人と話してると、「結構、色んな人が好きです。う~ん、特に一番好きな人っていませんね。」って答える人が多いんだけど、僕にはちょっと信じられない。「コイツ以外はサックスじゃない!他は認めない!」(笑)…ってくらいじゃないと、自分の血となり肉となるのは難しいと思います。僕にとってはかつてのコルトレーン、そして今はゲッツやウォーン・マーシュなどのクール・ジャズ系のプレーヤー達。まぁ、この動画のゲッツのコピーのクオリティーはかつてのコルトレーンの物真似のクオリティーよりは遥かに低いですけどね。「自分」が出来上がっちゃってる分。でも、これでも、コルトレーン=ブレッカー路線でやって来た自分にとっては、今までのマナーと真逆の演奏方法で戸惑いながらも漸くここまで持って来たんです。何故この路線に変更したのかは過去ログと重複するので避けるとして、やはり「カッコいい!こういう風に吹けたらなぁ!」っていうのが大きなモチベーションとなっています。
やはり、何か自分に無いものを取り込むには、まず物真似から。そして、そればかり演奏し続け、大好きなアーティストの音源ばかりを聴きまくる。これしかないです!これは色んな先輩ミュージシャンに言われて来た事だし、マーク・ターナー氏にインタビューした時も仰ってた事なので、間違いない!
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