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ゲッツ・サウンド

2018年12月18日 12時54分00秒 | jazz
最近、ゲッツ、ゲッツ言うとりますが、私はそれ程ダンディではありません。



スタン・ゲッツを始めクールジャズを研究してて、良かったなぁと思える事が先日の銀座バーブラでのライブで有りました。満席の客席に向かって1曲目のインストを演奏した時に、水を打ったような静けさで聴いて頂けた事です。音楽好きが集まるお店ではありますが、お客様の殆どは女性ボーカルを目当てで来られてるので、インストの時は気にならない程度の小声で話されてるお客様は多いです。でも、息の音さえ聞こえない程の静けさで迎えられたのは初めての経験でした。

いや、自分の音っていいだろ〜!って自慢したいんじゃなくて(笑)、所謂ゲッツ・サウンドってとてつもない破壊力が有るんじゃないかと思ったのです。

90年代NY時代に、ライブ活動を始めて分かった事が、大人しくジャズ(クラシック以外)を聴く習慣が有るのは日本人だけだ…という事。常に客席からは話し声が聞こえて来ます。つまり、彼らにとっては生のBGMなんですな、我々ジャズミュージシャンは。だから、クラブ側も気を遣って日本人観光客をなるべくステージ側に集め、喋りたそうなカップルは最後列の席に持って行きます。

で、喋ってる客に対抗してデカイ音で吹き始めると、あっちも負けじとデカイ声で喋り始める…のイタチごっこを暫く繰り返してました。そこで漸く見つけ出したのが「小さい音で吹く」というもの。でも、当時はバラードでしかこの作戦は取ってませんでした。

僕がアイドルとしていたコルトレーンは、バラードでは切なく小さめの音で吹きますが他ではそんな事はありません。やはり、最近ゲッツを中心に聴き始めてから、こうなって来たんだと思います。

厳密に言うと、決して小さい音ではありません。音の成分に息の音でコーティングされている部分が多く、ハスキーなだけです。それにはやはりハードなセッティングと独特のアンブッシュアが必須です。ビブラートもしっかり効かせないといけないので、息の量たるや相当で、慣れるまで苦労しました。

まぁ、そこまでやっても、自分でも、また、聴いて頂いたお客さんにも完全にゲッツっぽいとは感じられてないので、まだまだかな…って部分と、自分らしくいるにはこれくらいで良いのかな?って気持ちと半々です。

しかし、この「破壊力」の発見は僕にとってかなり大きなものです。恐らく、サックスという楽器を知ってれば知ってるほど意表を突かれた様に感じるのではないでしょうか。それ程サックスという楽器が有名で、同時にどういう音が出るのかっていう先入観も生み、またゲッツ・サウンドというものが現在では相当レアになっているのではないでしょうか。だから、ポカンとしてしまった…みたいな。(笑)

僕の知ってる限りでは、ハリー・アレンがボサを演ってるのはゲッツそっくりだけど、本来の彼はそんな演奏ではないので、ちょっとアザトサを感じてしまう。似てると言えば、アルトではポール・デスモンドがいるけど、その影響を受けてる人は、僕とデビューが同じの菅野浩君くらいしか知らない。

兎にも角にも、同じ楽器でもキャラクターが色々あるのがジャズって音楽の面白いところ。最近の若手はサウンドが皆似通ってるので、あまり個性を感じないのだか、少し前に共演したRafael Statinなんかはコルトレーンをお馬鹿にした様なアグレッシブさでとても面白かったなぁ。色んなサウンドの人達が同じステージに立つ事が一番ジャズ・ファンにとって良い事なんじゃないかと思います。

引き続き、自分の音探しの旅を続けます。
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