最近、レスター・ヤングにハマっている。まぁ、今迄も何度となく聴いて来たわけだけど、クール・ジャズを徹底研究した後で聴くと全く違うものとして入って来る。
ここ最近買ったレコード達。
「Press & Teddy」を始め、ネットやレコード・レビューで名盤とされる50年代後半のアルバムから聴き始めた訳だけど、正直、ピッチは悪いし、同じフレーズや手癖のオンパレードで全く良いとは思わなかったし、「この人の何処にそんな影響力が有ったのだろう?」と思った程だ。ま、レコード・レビューなんてのはレコード会社の思惑で成り立ってる様なもんだから、そんなのを信用した僕が馬鹿だったってわけだ。
彼に興味を持って調べて行くと、絶頂期は軍隊に取られる前の'44年まで。軍で人種差別や暴行を受け、精神的苦痛からドラッグと酒に溺れ始め、1年経っての除隊後のそれ以降はまともに演奏出来ない事が多くなったとか。とても気の毒な人生である。
そんな訳で、彼のアルバムを買っては失敗を繰り返してたわけだが、今はYouTubeという優れ物が有るので、それを聴いて「良い」と判断したものだけ買えばいい。
ここ最近買ったレコード達。
除隊後と言っても50年ジャストの頃は良い演奏も有る。今、更に他のアルバムも予約済みで届くのが楽しみ。絶頂期はアイディアも豊富だし、勿論、ピッチも正確。しかし、この人はどの時期でもタイムは素晴らしい。
こういう本家本元を聴いてると、それ以降の彼に影響を受けた、パーカーやゲッツやペッパーなどのクール系の人達の演奏がニセモノにさえ聴こえて来るからアブナイ(笑)いやいや、レスターをリスペクトしながらも、自分のアイデンティティを作り上げた立派なクリエイター達なんだから。
僕は、何だかんだで間接的にレスターの影響を強く受けてたんだなぁ…と今更ながら思う。レスターはたまにホンクする事は有ってもグロールするまでは行かない。柔らかい音質でスムーズに歌い上げる。僕が好きな演奏も大体そんな感じだ。音楽に無駄な盛り上げも不必要…とさえ思っている。そう、元々Coolな音楽が好きなのだ。
それは、パーカーやスティットを始め、僕がトランスクライブして来た様々なアーティストに共通している事だと思う。ただ、僕はそういうバッパー達の影響を受け過ぎて、クロマティック・アプローチやオルタード・スケール等、複雑な音遣いを多く用い過ぎていると最近感じ始めている。特にレスターを聴くと、バップの原型とも思えるフレーズが出て来ても、「そこでアプローチ・ノートに行かないのか!」って思う事が多い。半音階の使い方も、所謂「挟み込み」の様な形ではなく、スケール的なシンプルな処理が多い。
とは言え、コレを聴いたからと言ってバップを否定する訳ではないし、その他に影響を受けたコルトレーン、またはブレッカー等のコンテンポラリー・サックス奏者達も無かった事にする訳ではない。大切な自分の中のエッセンスであり続けるのは確か。ただ、やはり狭い範疇での影響しか感じられない若い人の演奏を聴くと浅さを感じるので、色んな時代の色んな音楽を沢山聴くべきだ…という事は伝えたいと思う。
グルーヴに関しては、レスターやパーカーの時代にはスゥイングとほんの少しラテンが有った程度。その後、ボサ・ノバ、ロックやファンク、変拍子に至るまで様々なものが台頭する。当時は新しいグルーヴを開発する…という楽しみも有ったと思う。しかし、現代の我々には様々なグルーヴやジャンルが目の前に沢山有って、既に飽和状態で、それをチョイスするという形だ。僕の若い頃はファンクにはファンクのフレージングが有ったし、「吹き分ける」なんて事が当たり前だったけど、今はミクスチャーが当たり前の時代。僕は先日手に入れたトナリンと言う古いマウスピースの渋い音でどれだけ色んなジャンルに対応出来るか挑戦してみたい。マウスピース一つでフレージングも変わって来る。ファンク・ビートの上でレスター的なアイディアも今後出て来るかも知れないと考えると何だか楽しそうだ。
自分のルーツを辿る旅を長い時間掛けてやって来たんだなと思う。その一つの終着駅がレスターだった。ラテンやブラジリアンやロックにもそう言うルーツを辿る旅というものが有るのだろう。もう、色んなジャンルに手を出して、そのルーツを辿る時間なんて残されていない。人生の残りの時間は、更にディープなジャズ(基本的には自分の楽器であるサックスを中心)の深掘りに没頭したいと思う。
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