東近江市商工会女性部は、行商で全国を飛び回った近江商人の活躍を陰で支えた妻など女性に焦点を当てた「近江商人図鑑 女性の目から見た近江商人」を発刊し、図鑑の内容をなぞったモニターツアーをこのほど開いた。
ツアーには女性部の交流と研修を兼ねて三重県いなべ市商工会女性部の会員らが参加し、近江商人屋敷などが並ぶ東近江市五個荘金堂地区を訪問。「三方よし」の近江商人の精神を学び、この地域の特徴でもあった当時の女性活躍に触れた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/55/a81e432abb72dcebe00b11c61c667b58.jpg)
この「近江商人図鑑」(B5判カラー全15ページ)は、SDGs(持続可能な開発目標)の理念として再び見直されている「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」など近江商人の学びとその歴史を広く知ってもらおうと、東近江市商工会女性部が今年2月に発刊したもの。
近江商人の精神を分かりやすくひも解くとともに、単身赴任で商売に励む主人に代わって本宅を任されていた「妻」の役割の数々が図録とともに紹介されている。
近江商人図鑑(冊子のPDF)
「始末してきばる」体感型のツアーを開催
この日のツアーでは、近江商人の暮らしが知れる屋敷を見学した後、宿泊ホテルに改装された外村宇兵衛邸で研修を開いた。
この日のツアーでは、近江商人の暮らしが知れる屋敷を見学した後、宿泊ホテルに改装された外村宇兵衛邸で研修を開いた。
研修では、農作業や家事、子育てのほかにも、丁稚(でっち)の採用試験や行儀作法といった質の高い教育を妻が担っていたこと、また、商家の妻になるための教育「汐踏(しおふ)み」や、「始末してきばる」をモットーにした質素倹約の生活などが伝えられ、部員らの関心を集めていた。
昼食には、近江商人の商家に生まれ育ち、後に私財を投じて女学校を創立した塚本さと(1843~1928)が、息子の妻のために書き残した家政書「姑の餞別(せんべつ)」に記されている料理レシピを再現した「さと御膳」が振る舞われた。
「さと御膳」は、25年ほど前に、近江商人博物館がある施設内で喫茶を運営していた料理研究家の上和世さんが、五個荘の観光の目玉になればと、家政書に記された141種あるお惣菜レシピの中から選りすぐり、始末と贅を尽くした商家の暮らしを伝える御膳にと仕立てたもの。この日も滋賀県の郷土料理でもある「ぜいたく煮」や、すりごまやナスが入った味噌汁「どろ亀汁」などが提供された。
いなべ市商工会女性部の水貝千寿子部長は「料理にも『始末してきばる』の心が工夫されていたことに驚いた。支えや工夫があっての近江商人の活躍だったことに気づかされた」と商家の食文化が詰まった料理に舌鼓を打った。
午後はSDGs体験として、地場産業である麻織物の残布を使ったリース作りを体験するなど、端材に新たな価値生み出すアップサイクルの取り組みにも親しんだ。
東近江市商工会女性部の北川陽子部長は「いまで言うSDGsは昔から当たり前のようにこの地域の暮らしに根付いていた。本やツアーを通して地域の歴史文化に興味を持ってもらえれば」と話す。
なお、「近江商人図鑑」は近江商人博物館(東近江市五個荘竜田町583 )などで配布されている。
問い合わせ:
東近江市商工会女性部(TEL 0749―45―5077)
東近江市商工会館(TEL 0748―48―7101)
<滋賀報知新聞より>
<滋賀報知新聞より>