「近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会」(滋賀県と沿線10市町、近江鉄道などで構成)は9月15日、沿線企業との意見交換会を初めて東近江市内で開催し、企業と行政関係者35人が参加した。

↑写真:滋賀報知新聞より
近江鉄道の利用者は、通勤定期と通学定期がそれぞれ3割を占め、大きな収入の柱となっており、運営の向上に不可欠だ。そこで意見交換では、残すのが目的でなくいかに使ってもらえる鉄道にするか、意見交換した。
話題提供では、
▽フジテック(彦根市)は大阪府茨木市から現在の事業所に移転した際、通勤の利便性を図るため、近江鉄道に請願して2006年に新駅「フジテック前駅」を開業。当初は長距離通勤で400人の利用があったが、近隣在住者が増えるのに伴い200人に減少。「今後どう(利用者数を)維持するかが課題」とした。
▽スクリーン(彦根市)も生産拠点の集約化に伴い従業員が増加。このため、請願駅「スクリーン駅」を2008年に設置した。当初の利用150人から、事業所拡張にしたがって現在は800人が利用する。「駐車場を拡大せずに済み、周辺渋滞も避けられる」とメリットを挙げた。
▽村田製作所八日市事業所(東近江市)では近江鉄道利用者は50人にとどまる。「八日市駅から事業所までのバスの便数が少なく利用は難しい」と述べた。一方の野洲事業所はJR駅からのバス便が10分おきで、2000人が利用しているとした。
▽三菱ロジスネクスト(近江八幡市)は180人が利用。利用を促すため、鉄道ダイヤに始業時間を合わせたり、最寄りの武佐駅からの通勤路を整備した。
このあとのワークショップでは、5つのグループに分かれて今後の公共交通の利用の可能性について自由に意見を述べ合い、「出張の際は近江鉄道を利用する」「最寄り駅があることを求人でアピールする」「2次交通のバスの充実により、送迎バスのコスト削減」「公共交通利用の日の設定」などの意見が出ていた。
この一方で、公共交通の利用が進まない背景には、自宅から最寄り駅まで遠く、鉄道の通勤時間がマイカー通勤と比べて2―3倍に増えたり、マイカーの方が通勤のついでに家族の送迎や買い物で利便性があるとし、「行動を変えるのは難しい」という声もあった。
再生協議会事務局は「企業から貴重な意見を聞くことができ、今後の利用促進の材料として検討したい」と話していた。
<滋賀報知新聞より>