NHKテレビで、ALPS処理水海洋放出について短い番組を放送していました。友人にALPSって、何なのでしょう、と聞かれて即座に答えることができず、検索して、更に高校生の時の化学の授業を思い出して、理解するのにかなりの時間を要しました。そして、ALPS処理水という言葉を使う東京電力と経済産業省に一種作為的なものを感じました。
①経済産業省のサイトでは「『ALPS』とはAdvanced Liquid Processing System の略で、様々な放射性物質を取り除いて浄化する「多核種除去設備」のことです」とあります。Advanced Liquid Processing Systemを逐語訳すると、「高度な液体処理システム」ということで、多核種という英語は一切含まれていません多核種の英語はmulti-nuclidです。
②「多核種」とは「放射性元素」とほぼ同じ意味で、「放射性元素」の方が一般に馴染みがあります。なぜ、「放射性元素」という言葉を使わなかったか。それは馴染みのない専門用語を出して、人々の思考回路を停止させようという心理作戦ではないでしょうか。「放射性元素」は、陽子の他に中性子もっていて、中性子を放射能として放出しています。つまり「多核種」とは放射性元素の構造に着目した呼称です。
言葉遊びはこの辺で、やめて、ALPS処理水とは何か考えてみましょう。経済産業省のサイトでは「トリチウムや炭素14を除く62種類の放射性物質を国の排出基準以下まで浄化処理した水のこと」とあります。
市民のためのがん治療の会のウェブサイトに北海道がんセンター名誉院長西尾正道先生が「雑感2ー汚染処理水の海洋放出は殺人行為!」という記事を書いていらっしゃいます。トリチウム致死量は1mgで、カナダでは軽水炉周辺にトリチウムによる小児白血病、ダウン症児の増加の原因になっていると言われています。
2002年、ノベール物理学賞を受賞した小柴昌俊氏はトリチウムの危険性を警告しています。
また、トリチウムは分離できないように東電は言っていますが、実際はロシア、米国でで分離技術が開発されています。
テレビの、ALPS処理水の海洋放出の安全性を理解できない人が問題だと言わんばかりの番組構成は甚だ遺憾であると言わざるを得ません。