203第21話ルエリス
ミーターの大冒険
第九部
エピローグ
第21話
ルエリス
あらすじ
ミーターたちはハニスとの再会を期待してイフニアに向かうべく、ファー・スター2世号のあるダリバウのイケアに戻った。
その時、イルミナからハニスの拘束の事実を知らされる。
あとから駆けつけて来たアンセルム・ロドリックとともにイフニアに行くこととなり、アンセルムから意外な展望を聞かされる。
ダリバウからイフニアに行く途中、ファー・スター2世号の前に、12000年に一回というダリバウの太陽とダリバウの衛星ルエリスとの皆既日食が現れる。この現象は、ミーター一行に何の暗示になるだろうか?
アンセルムは、アルカディア・ダレルの小説を読んでいるペイリー・リャンにペイリーの父ダニールの歴史を、厳かに、そして優しく語る。ルエリスの名前の由来を。
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アンセルム とおっしゃいますと、お父様のガイア、スペーシアとハリの心理歴史学とはもともと相容れない事柄ではないとおっしゃりたいのですね。ガイアの志しはそのままファウンデーションの未来をそのまま保証し、ファウンデーションの展開はそのままダニールのガイア、スペーシアをさらに輝かせる、と。
ペイリー おそらく、今この光景と同じ、この皆既日食を500年前に、地球でガールとウォンダ・セルダンは二人でご覧になられたように思うのです。
ガールの微細心理歴史学と父のガイア思考の互いの本質はほぼ同一だったのではないでしょうか?これはあくまでもわたしの勝手な想像にしかすぎませんけど。
この光景に直面しておりますと、どうしても、心理歴史学とスペーシアとが相対するものであったとはちっとも思えないのです。...
「融合、歓喜、充満、その後の再生」と言われておる通りに。
アンセルム ペイリーさん、心から同意いたして、宇宙の大霊に合掌いたします。
もしや、お父上はあなたをここまでこられるように仕組まれたのは、この真実をあなたを通して体現されようとされておられるからでありましょう。
あなた様はガイアのお生まれです。そして今第1ファウンデーションの若き貴公子ミーターさんのもとにおられます。
そして、実はもうすぐあなたの従姉妹様が第2ファウンデーションをうまく誘導されるはずです。
そして、そしてあなたの妹様は、この銀河を離れて、ガイアの念願の、遥か外域にギャラクシアを延長されるでしょう。それがスペーシア!
もしや、今我らが直面している最大の問題、「ファウンデーション」の存在意義、イルミナさん、いや、「銀河帝国辞書編纂図書館」の存亡は、あなた様ペイリーさんにかかっておられるのでは?
ペイリー アンセルムさん、あなたはなぜそんな先まで見通せるのでしょうか?貴方は預言者なのですか?予知能力の持ち主なのですか?
わたしはただ、心から父を尊敬し、ミーターさんを支えるように言われてここまで来ただけです。
どうぞ、あなた様のお力で、ミーターさんをお助け下さい。そしてターミナスの命運を明るい方に導いて下さい。
イルミナさんをお救いください。
アンセルム ペイリーさん、わたしのできますことは何でもいたします。残念ながら今は、イルミナさんをお救いする妙案は浮かびませんが、何かの手立てはきっとあると思います。いいえ、その答えは、あなた様が握っておられるようにしか、わたしには思えてならないのです。
ペイリーさん、この月の名前がルエリスだと言うことが、わたしには重要な事柄のように思うのです。
実に、あなたの父上は、かつて銀河文明の曙の時、偉人ルエリスを生み出されました。その時、誰もが人類に輝かしい未来が来ることを信じていました。
しかし、それは結局悲惨な結末となってしまいました。それは一抹の淡いシャボン玉のように突如として終わりを告げました。
それ以来、お父上は、人類の運命の背後に虚無の「混沌」が息づいていることを知り、飽くなきそれとの格闘を続けて来られたのです。
そして今、お父上は、ご自身の寿命が尽きるのを感じられ、あなた様とミーターさんを後継者に選ばれたのです。
しかし、この光景(皆既日食)は、宇宙の大霊が我らにもう一度新たなルエリスを見せようとされておられるように、わたしには察せられますが!
あなた様のお力とミーターさんの知力がうまく溶け合って、今後、この「混沌」とうまく付き合って行く光明を開いてくださる、とわたしは信じております。
ペイリー なんとまあ!「混沌」とは克服するものではないと?
アンセルム ええ、うまく付き合って行く、ということでしょうか!
僭越ですが。
ペイリー お仰せ、心して承りました。心から、あなた様に感謝いたします。
ところで、このダリバウの衛星に「ルエリス」という名前を最初につけたのは誰でしょう?
アンセルム さあ、わたしにはちょっとわかりかねますが。ただ、推測するだけはできます。
ペイリー それについては、わたしも推測はできますよ。
「漂泊のシンナックス」であったという。
アンセルム わたしもそう想像しております。
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