213第31話大鴉
ミーターの大冒険
第九部
エピローグ
第31話
大鴉
おおまかな銀河史
本編を繙(ひもと)く前にこの物語に至る歴史の概要をお示しすることは読者には有益になるでしょう。
前史
地球暦12500年=銀河暦元年
トランター帝国、銀河帝国となる。
銀河暦500年ごろ
身代わりの天使出現。
銀河暦900年ごろ
最後の地球残留人(ニフ人)、地球を去ってアルファ星に移住。
銀河暦2000年ごろ
ダニール・オリヴォー、イオス星にロボット修理・製造工場を建設。
偉大なるルエリス、穏和な統治システムを提唱。
銀河暦8789年
惑星リゲインの「文芸復興」、8年で破綻。
銀河暦11865年
女性型ロボットドース・ヴェナビリ、イオスで製造。
銀河暦11988年
ダニール・オリヴォー、デマーゼルと名乗って、銀河帝国の宰相となる。
クレオン一世、ハリ・セルダンの誕生。
銀河暦12028年
ダニール・オリヴォー、首相を辞任。後継にハリ・セルダンを指名。
銀河暦12067年=ファウンデーション暦元年
ガール・ドーニックら百科辞典財団、ターミナスへの計画決定。
ハリ・セルダンに対する裁判の結果、公安委 員会は百科辞典財団をターミナスに放逐。ガール・ドーニックファウンデーションの51番目の委員になり、第1ファウンデーション全般を仕切る。ボー・アルーリン、ガールを補佐し、第2ファウンデーションとの繋がりを助ける。
ダニール・オリヴォー、ガイアを計画。
銀河暦12038年
ハリ・セルダン、宰相を辞任。
銀河暦12040年
ウォンダ・セルダン生まれる。
銀河暦12048年
ドース・ヴェナビリ、死去。ベリス・セルダン生まれる。
ハリ・セルダンの盟友ユーゴ・アマリル没。
銀河暦12067年
ハリ・セルダンに対する裁判の結果、公安委員会は百科辞典財団をターミナスに放逐。ガール・ドーニックファウンデーションの51番目の委員になり、第1ファウンデーション全般を仕切る。
ボー・アルーリン、ガールを補佐し、第2ファウンデーションとの繋がりを助ける。
(ほぼデイヴィッド・ブリンの銀河史の概略に従っております。)
あらすじ
ミーターたちはハニスとの再会を期待してイフニアに向かうべく、ファー・スター2世号のあるダリバウのイケアに戻った。
その時、イルミナからハニスの拘束の事実を知らされる。
あとから駆けつけて来たアンセルム・ロドリックとともにイフニアに行くこととなり、アンセルムから意外な展望を聞かされる。
ダリバウからイフニアに行く途中、ファー・スター2世号の前に、12000年に一回というダリバウの太陽とダリバウの衛星ルエリスとの皆既日食が現れる。この現象は、ミーター一行に何の暗示になるだろうか?
アンセルムは、アルカディア・ダレルの小説を読んでいるペイリー・リャンにペイリーの父ダニールの歴史を、厳かに、そして優しく語る。ルエリスの名前の由来を。
漂泊のシンナックス人は今や地球から見た場合の星座レチクル座付近の奥の大マゼラン銀河にさらなる次のターゲットを決めて、このダリバウやイフニアから出て行ったことをペイリーとアンセルムは同時に了解した。
ミーターたちは、ハニスが投獄されているはずだったイフニアについた。
ハニスは無事だった。その時点までにアンセルムが、イフニア政府をコントロールして、政府トップと内務省にまで浸透工作に成功させていたからであった。
ただターミナス政府は、その偽装イフニア政府の実態にはまだ気がついていなかった。
ファウンデーション連合では、既にサイレント革命(ペイリー・リャンがヤマブキ色のハンカチをミーターに捧げたのをきっかけとして、『ヤマブキ革命』と言われる)が徐々に進んでいった。
それでも一つの危機的状況は依然として残った。改造帝国辞典編纂図書館が破壊されるとイルミナの機能が停止してしまうのだ。
それを阻止するには二重のパスワードによるアンロックをされてしまうまでに時間霊廟のコントローラーと改造帝国辞典編纂図書館のコントローラーを同時にファー・スター2世号のコンピューターに移行させなければならない。
それにはある移行措置が必要だとアンセルムは言う。
しかも、その移行措置に必要な操作はミーターと関係があると言うのだ。
そしてペイリーの流した涙にも。
アンセルムは、おもむろにウォンダの3つのシリンダー・ペンダントについて語り出す。
そして、彼の半生をも。
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アンセルム ところで、ハニスさん、話は少し飛びますが、あの当時公安委員長であったリンジ・チェンがハリの一群をターミナスに放逐した経緯(いきさつ)ついてはご存じでしょうか?
ハニス かつて大鴉と呼ばれていた心理歴史学の大成者ハリ・セルダンとなんらかの取り引きをしたのでしょうか?
アンセルム そうも言えますが、なんと、チェンはルエリス主義者だったのですよ。彼は心理歴史学を理解していたわけではなかったものの、ハリ・セルダンの方向性に幾分の寛容さを表しました。まさにおかしなことです。当のハリがもう少しルリエスを知ってさえいたら、歴史はだいぶ違ったことになっていたでしょう。今のところターミナスは存在しなかったとか、ねぇ!
本質的には心理歴史学とルリエス思想は食い違ったものではなかった、のですからねぇ!
ハニス そうなんですか?皮肉なことです。
アンセルム 皮肉と言えば、それからターミナスに戻ったわたくしが直面したのがハニスさん、あなたの「首都移転策」による政治活動ですよ。
あなたがあのアルカディア家と関係がおありだとわかってから、陰であなたを応援しようと決心しました。
それで、コンパー君とも知り合いになって、アルカディア農園が政府によって破棄される危機にあることを知って、アルカディア農園を買い取ることになりました。
そこでわたくしの知人で信頼のおけるジム・ヘンダーを農場の管理人にいたしました。
ハニス 今でも忘れません。何度目かの蜂起が失敗した時、ひもじいわたしを拾ってくださいました。
そのときはさすがに絶望のドン底だった。
そして遥か銀河の反対側にいるミーター君を思って、もう一度頑張ってみようと思うようになりました。
ミーター そうだったんですね!
それでロドリックさん、もしかしてあなたのその博識というか、聡明というか、わたしのことをよくご存じというのは、ここから遥か遠くの銀河の反対側、シンナックス、コンポレロンとの交流もあると思いましたが。
アンセルム そうです。お話しましたように、シンナックス訪問以来、シンナックス星らからの情報は絶やさないようにしてまいりました。
ついこないだのミーターさんによるシンナックス訪問時の際の「歴史復活」宣言などの情報も存じておりますよ。
ミーターさんは、心の中では、わたしのこと、「地獄耳」とか言いたいようにお見受けいたしますが。
ミーター エッ!そこまで!まさに...!
ペイリー ロドリックさん、あなたは、読心術も心得ていらっしゃるのですか?
アンセルム いいえ、読心術というようなものでは決してありません。一般的な情報収集の類いですよ。
読心術というなら、あのコンパーにはかないませんよ。
もしや、ペイリーさんは、そういう能力をお持ちになられておられますか、お父上のように?
ペイリー いいえ、わたしは父には遥かに及びません。いつも父との会話で、いつもどぎまぎさせられてまいりました。
特殊能力を持ってる親や家族のいる人間は、だいぶ窮屈なものなのです。月でよく、一般的家庭との違いを、家僕の女性型Rのオーロラ・ルナセントに教えてもらいましたので。
アンセルム そうでしたか。ご同情いたします。
ペイリー いいえ、いいえ。その反面、おそらく一般的家庭では経験出ないくらいのいいことも沢山ありましたから。
ハニス そ、そうでしたか!
ペイリーさんとお話するときは、注意しないとなあ!
ペイリー いいえ、いいえ。わたしのことを一種の化け物のように言わないでください。
普通は、そういった超感覚は使っていません。普段は、通常モードにしておりますのでね、ハニスさん。
ハニス ああ、よかった。
それじゃ、わたしに対しては、いつでも通常モードでお願いしますよ。(笑い)
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