212第30話アンセルム・ロドリックの半生
ミーターの大冒険
第九部
エピローグ
第30話
アンセルム・ロドリックの半生
おおまかな銀河史
本編を繙(ひもと)く前にこの物語に至る歴史の概要をお示しすることは読者には有益になるでしょう。
前史
地球暦12500年=銀河暦元年
トランター帝国、銀河帝国となる。
銀河暦500年ごろ
身代わりの天使出現。
銀河暦900年ごろ
最後の地球残留人(ニフ人)、地球を去ってアルファ星に移住。
銀河暦2000年ごろ
ダニール・オリヴォー、イオス星にロボット修理・製造工場を建設。
偉大なるルエリス、穏和な統治システムを提唱。
銀河暦8789年
惑星リゲインの「文芸復興」、8年で破綻。
銀河暦11865年
女性型ロボットドース・ヴェナビリ、イオスで製造。
銀河暦11867年
銀河系外の大マゼラン銀河の植民惑星が放棄される。
銀河暦11988年
ダニール・オリヴォー、デマーゼルと名乗って、銀河帝国の宰相となる。
クレオン一世、ハリ・セルダンの誕生。
銀河暦12028年
ダニール・オリヴォー、首相を辞任。後継にハリ・セルダンを指名。
銀河暦12067年=ファウンデーション暦元年
ガール・ドーニックら百科辞典財団、ターミナスへの計画決定。
ハリ・セルダンに対する裁判の結果、公安委 員会は百科辞典財団をターミナスに放逐。ガール・ドーニックファウンデーションの51番目の委員になり、第1ファウンデーション全般を仕切る。ボー・アルーリン、ガールを補佐し、第2ファウンデーションとの繋がりを助ける。
ダニール・オリヴォー、ガイアを計画。
銀河暦12038年
ハリ・セルダン、宰相を辞任。
銀河暦12040年
ウォンダ・セルダン生まれる。
銀河暦12048年
ドース・ヴェナビリ、死去。ベリス・セルダン生まれる。
ハリ・セルダンの盟友ユーゴ・アマリル没。
銀河暦12067年
ハリ・セルダンに対する裁判の結果、公安委員会は百科辞典財団をターミナスに放逐。ガール・ドーニックファウンデーションの51番目の委員になり、第1ファウンデーション全般を仕切る。
ボー・アルーリン、ガールを補佐し、第2ファウンデーションとの繋がりを助ける。
(ほぼデイヴィッド・ブリンの銀河史の概略に従っております。)
あらすじ
ミーターたちはハニスとの再会を期待してイフニアに向かうべく、ファー・スター2世号のあるダリバウのイケアに戻った。
その時、イルミナからハニスの拘束の事実を知らされる。
あとから駆けつけて来たアンセルム・ロドリックとともにイフニアに行くこととなり、アンセルムから意外な展望を聞かされる。
ダリバウからイフニアに行く途中、ファー・スター2世号の前に、12000年に一回というダリバウの太陽とダリバウの衛星ルエリスとの皆既日食が現れる。この現象は、ミーター一行に何の暗示になるだろうか?
アンセルムは、アルカディア・ダレルの小説を読んでいるペイリー・リャンにペイリーの父ダニールの歴史を、厳かに、そして優しく語る。ルエリスの名前の由来を。
漂泊のシンナックス人は今や地球から見た場合の星座レチクル座付近の奥の大マゼラン銀河にさらなる次のターゲットを決めて、このダリバウやイフニアから出て行ったことをペイリーとアンセルムは同時に了解した。
ミーターたちは、ハニスが投獄されているはずだったイフニアについた。
ハニスは無事だった。その時点までにアンセルムが、イフニア政府をコントロールして、政府トップと内務省にまで浸透工作に成功させていたからであった。
ただターミナス政府は、その偽装イフニア政府の実態にはまだ気がついていなかった。
ファウンデーション連合では、既にサイレント革命(ペイリー・リャンがヤマブキ色のハンカチをミーターに捧げたのをきっかけとして、『ヤマブキ革命』と言われる)が徐々に進んでいった。
それでも一つの危機的状況は依然として残った。改造帝国辞典編纂図書館が破壊されるとイルミナの機能が停止してしまうのだ。
それを阻止するには二重のパスワードによるアンロックをされてしまうまでに時間霊廟のコントローラーと改造帝国辞典編纂図書館のコントローラーを同時にファー・スター2世号のコンピューターに移行させなければならない。
それにはある移行措置が必要だとアンセルムは言う。
しかも、その移行措置に必要な操作はミーターと関係があると言うのだ。
そしてペイリーの流した涙にも。
アンセルムは、おもむろにウォンダの3つのシリンダー・ペンダントについて語り出す。
そしてアンセルム・ロドリックは自身の半生と「エディット」手法について開示する。
212
ペイリー そうでしょうけど、ルエリスについては、いかがですか?
アンセルム これについてザット、私の半生についてお話しした方がよろしいかと、
若い頃、ある友人を訪ねて、スミルノにまいりました。
そこのアルシオスという村を訪れた時のことです。
その村のほぼ中央に年代物の館があり、住んでる人がいなかったので、勝手に興味本位で中を探索しました。誰にも許可を得ないで。
その一室に、書きなぐりの日記がありました。その日記の見返しにはバイロン・ファレルと書いてありました。
読んでいくにつれて、その日記に釘付けになってしまいました。
それをその場所から持って行ってしまうことには罪悪を感じたものですので、何日もかかってその日記をコピーしたばかりでなく、その書斎にある本全部をコピーしてしまいました。
それからスミルノ政府に多額の寄付金を捧げて、その館の管理をしてもらうことにしました。
それからというもの、故郷のプルーマ星に戻って、そのバイロン・ファレル所有の彼の日記も含めて、多量の文献を整理しはじめました。
そして、そのバイロン・ファレルという人物は、あのハリ・セルダンの孫娘のベリス・セルダンの子孫の女子と結婚していて、その子孫があのカルガン戦争で有名なアルカディア・ダレルであったことがわかりました。
それから、バイロン・ファレルがどういうふうに考え、この銀河についてどういうふうに捉えていて、どうしていきたいのかを理解できていったのです。
彼もまた真理の追求者であって、義理のお母さんのアルカディア(アルカディア・ダレルとは別人)と彼が師と仰ぐ貿易商人リマー・ポニェッツから多大な影響を受け、のち彼自身もジョン・ナックの『歴史思想書』なるものを発見してルエリス思想に傾倒していったということがわかったのです。
それで、わたくしは、直接シンナックスに翔びました。そしてあのルエリス思想のもとがジョン・ナックの『歴史思想書』だという確信を得たのです。
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