ミーターの大冒険 第九部 エピローグ 第３２話 確定・予定セット アルカディアの魂の復活

214第32話確定・予定セット　アルカディアの魂の復活

ミーターの大冒険　

第九部　

エピローグ

第３２話

確定・予定セット　アルカディアの魂の復活

おおまかな銀河史

本編を繙(ひもと)く前にこの物語に至る歴史の概要をお示しすることは読者には有益になるでしょう。

前史

地球暦12500年＝銀河暦元年

　トランター帝国、銀河帝国となる。

銀河暦５００年ごろ

　身代わりの天使出現。

銀河暦９００年ごろ

　最後の地球残留人(ニフ人)、地球を去ってアルファ星に移住。

銀河暦２０００年ごろ

　ダニール・オリヴォー、イオス星にロボット修理・製造工場を建設。

　偉大なるルエリス、穏和な統治システムを提唱。

銀河暦８７８９年

　惑星リゲインの「文芸復興」、８年で破綻。

銀河暦１１８６５年

　女性型ロボットドース・ヴェナビリ、イオスで製造。

銀河暦１１８６７年

　銀河系外の大マゼラン銀河の植民惑星が放棄される。

銀河暦１１９８８年

　ダニール・オリヴォー、デマーゼルと名乗って、銀河帝国の宰相となる。

　クレオン一世、ハリ・セルダンの誕生。

銀河暦１２０２８年

　ダニール・オリヴォー、首相を辞任。後継にハリ・セルダンを指名。

　ダニール・オリヴォー、地球探索とハリ・セルダンの後継者を探しに銀河の反対側に行く。

　ダニール・オリヴォー、ガイアを計画。

　銀河暦１２０３８年　

　ハリ・セルダン、宰相を辞任。

銀河暦１２０４０年　

　ウォンダ・セルダン生まれる。

銀河暦１２０４８年　

　ドース・ヴェナビリ、死去。ベリス・セルダン生まれる。

　ハリ・セルダンの盟友ユーゴ・アマリル没。

銀河暦１２０６７年＝ファウンデーション暦元年

　ガール・ドーニックら百科辞典財団、ターミナスへの計画決定。

　ハリ・セルダンに対する裁判の結果、公安委　　員会は百科辞典財団をターミナスに放逐。ガール・ドーニックファウンデーションの51番目の委員になり、第１ファウンデーション全般を仕切る。ボー・アルーリン、ガールを補佐し、第２ファウンデーションとの繋がりを助ける。

　ハリ・セルダンに対する裁判の結果、公安委員会は百科辞典財団をターミナスに放逐。ガール・ドーニックファウンデーションの５１番目の委員になり、第１ファウンデーション全般を仕切る。

　ボー・アルーリン、ガールを補佐し、第２ファウンデーションとの繋がりを助ける。

(ほぼデイヴィッド・ブリンの銀河史の概略に従っております。)

あらすじ

　ミーターたちはハニスとの再会を期待してイフニアに向かうべく、ファー・スター２世号のあるダリバウのイケアに戻った。

　その時、イルミナからハニスの拘束の事実を知らされる。

　あとから駆けつけて来たアンセルム・ロドリックとともにイフニアに行くこととなり、アンセルムから意外な展望を聞かされる。

　ダリバウからイフニアに行く途中、ファー・スター２世号の前に、１２０００年に一回というダリバウの太陽とダリバウの衛星ルエリスとの皆既日食が現れる。この現象は、ミーター一行に何の暗示になるだろうか？

　アンセルムは、アルカディア・ダレルの小説を読んでいるペイリー・リャンにペイリーの父ダニールの歴史を、厳かに、そして優しく語る。ルエリスの名前の由来を。

　漂泊のシンナックス人は今や地球から見た場合の星座レチクル座付近の奥の大マゼラン銀河にさらなる次のターゲットを決めて、このダリバウやイフニアから出て行ったことをペイリーとアンセルムは同時に了解した。

　ミーターたちは、ハニスが投獄されているはずだったイフニアについた。

　ハニスは無事だった。その時点までにアンセルムが、イフニア政府をコントロールして、政府トップと内務省にまで浸透工作に成功させていたからであった。

　

　ただターミナス政府は、その偽装イフニア政府の実態にはまだ気がついていなかった。

　ファウンデーション連合では、既にサイレント革命(ペイリー・リャンがヤマブキ色のハンカチをミーターに捧げたのをきっかけとして、『ヤマブキ革命』と言われる)が徐々に進んでいった。

　それでも一つの危機的状況は依然として残った。改造帝国辞典編纂図書館が破壊されるとイルミナの機能が停止してしまうのだ。

　それを阻止するには二重のパスワードによるアンロックをされてしまうまでに時間霊廟のコントローラーと改造帝国辞典編纂図書館のコントローラーを同時にファー・スター２世号のコンピューターに移行させなければならない。

　それにはある移行措置が必要だとアンセルムは言う。

　しかも、その移行措置に必要な操作はミーターと関係があると言うのだ。

　そしてペイリーの流した涙にも。

　アンセルムは、おもむろにウォンダの３つのシリンダー・ペンダントについて語り出す。

　そして、彼の半生を語りはじめた。

２１４

ペイリー　ロドリックさん、それで、ミーターさんの持っておられるシリンダー・ペンダントと私とに何か関係があるのですね？

アンセルム　そうなのです。ペイリーさんからそれについてお聞きくださったお蔭で、ご説明の手間が省けます。だいぶ脇道に反れましたからね。最も肝心なことに戻りましょう。

　ミーターさん所有の紫のペンダントを改造図書館のメインコントローラーと時間霊廟のコントローラーの接続リレイ中間部にあるリーダーに嵌め込むのです。

　ただし、この操作は、選ばれた特定の者だけに許されているみたいです。

ハニス　どういうことですか？

　私には、それが許されてない、といわれてるみたいですが！

アンセルム　察しがいいですね、ハニスさん。

　この操作によって従来のファー・スター２世号の中央コントローラーに異変が起きます。

ペイリー　それはどういった異変ですか？

アンセルム　大変言いづらいことですが、正直に言いましょう。

　いままでのイルミネーショナー機能が停止します。

ミーター　なんだって！イルミナが消える！

アンセルム　残念ですが、おっしゃる通りです。

　ですが、

　これも、あらかじめ嵌め込むまれた確定・予定セットです。

ミーター　確定・予定セット？

アンセルム　今さっき申し上げた通り、改造図書館のメインコントローラーと時間霊廟のコントローラーの接続リレイ中間部にあるリーダーにそのペンダントを嵌め込むことで、従来の図書館の役割は完了します。

ミーター　アンセルムさん、

　そっ、そういうことは、イルミナの役割も消える、ってことですか？

アンセルム　まあ、必要とあらば、ファー・スター２世号のメインコンピュータにイルミナさんを投射させることもできるとは思いますが、

今までの機能は基本的には必要なくなる。

ミーター　じゃあ、その連結操作は、しないままがいい。

アンセルム　まあ、お聞きください。ミーターさん、誰がその確定・予定を改造図書館に仕組んだとお思いですか？

ミーター　ああ、そういうことだったのか！

アンセルム　そうです、アルカディア様です。

　よく思い出して下さい。アルカディア様が息をお引き取りになられた際のあなた様との会話を。遺言を。

ミーター　ああ！！

ペイリー　ミーターさん、もう一回、ヤマブキ色のハンカチをお持ちしましょうか？

ミーター　そうだ、アルカディアは確かに言った。「もう一回会いましょうかねぇ」って。

ハニス　そういうことだったのですか。そのリーダーに挿入できる人は女性！男ではだめ。しかも、アルカディアの魂を受け継ぐ資格のある女性！

アンセルム　そのようです。すべてアルカディア様のお心です。亡くなる前に夢にドースさんが現れて、一旦決めておられた埋葬場所をイオス星に変えられましたね。

ハニス　そうだったんだ。その通りだ。

アンセルム　しかし人間には甦ることはできません。

　けど、ルエリス物語に出てくる甦りの天使のように、肉体は滅んでも、何度も何度も繰り返されて真実の魂は、別な肉体に宿って、甦ります。

　そうじゃ、ないんですか、ミーターさん、ペイリーさん！

ペイリー　ロドリックさん、私の肉体に宿るってことですか？

アンセルム　そのようです、ペイリーさん。

　ミーターさんのお持ちのアルカディア様の形見は、あなた様に譲られる。

　あなたのお父さのご遺志でもあられます。

ハニス　なんと言う神慮！

ミーター　驚きだあ！

　

　それでいいんだな、聞いてるかイルミナ？

イルミナ　ご異存全くありません。

　火星ではじめてペイリーさんをお見かけした時から存じあげておりました。私とアルカディア様は同体です。

　それによって、なおいっそうミーターさんと仲良くできますよ！

　ペイリーさんがどう思われるかによりますけどね。

ハニス　こんなことが、この宇宙であり得るんだ？私の想像の遥か外の世界だ！

アンセルム　皆さん、そうと分かれば、それぞれ分担して、与えられた任務を遂行するのみです。

ミーター　分担して、任務を遂行？

アンセルム　そうです。