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メンタルヘルスと経済学 №229

2014-10-22 11:43:57 | 日記
 こころと経済学という日経新聞(10月22日付朝刊)のコラム欄に興味深い記事がありました。経済学は人々の心理や行動原理を描写する学問として発展してきました。しかし、心を扱う学問と考えられながらも、メンタルヘルスに関する経済学的な研究はあまり行われてきませんでした。うつ病など気分障害と分類された場合、医学領域としてすみ分けられてきたのが理由の一つといわれているようです。
 厚生労働省の患者調査によると2011年時点の精神疾患の患者は約266万人で、ガン患者の153万人を上回ります。なかでも、うつ病など気分障害の患者は96万人を占め、15年前の2.2倍に相当します。また、年間約3万人の自死(自殺)の9割がうつ病などの精神疾患にかかっていたともいわれています。
 メンタルヘルスによる不調で休職したりする労働者が増加傾向にあることも指摘されています。病気の原因はストレス耐性や性格など個々人の要因が関係しているとはいえ、臨床・精神医学の分野では過重労働や成果主義が密接に関係しているといわれてきました。 
新聞によると早稲田大学の黒田祥子教授と慶応大学の山本勲教授が労働経済学の立場からメンタルヘルスと企業関係をひもといていくというので、期待したいと思います。

前向きな性格と後ろ向きの性格 №228

2014-10-07 16:09:23 | 日記
 なぜ、前向きな性格と後ろ向きの性格があるのでしょうか。遺伝的な気質によるものなのでしょうか。それとも成育環境によるものなのでしょうか。「脳科学は人格を変えられるか」(文藝春秋社刊)の作者エレーヌ・フォックスは、前向きに考えられる人の脳をお天気脳、サニーブレイン(楽天的な脳)とよび、後ろ向きの考えに陥りやすい人を、雨天脳、レイニーブレイン(悲観的な)とよび、次のように説明しています。
 一時的な状態ではなく、「楽観的な気質」の人は総じて陽気で明るく、まわりの人々をも明るく楽しくしてくれます。ですが、そういう人たちは、ただ単に陽気でハッピーな人間なわけでありません。「楽観的な気質」とは、未来に真の希望を抱くことです。それは、「ものごとは必ず打開できる」という信念であり、「どんなことがあっても必ず対処できる」とい揺るがぬ思いなのです。単なる脳天気とはまるで違います。楽天的な人は、自分の身に悪いことが怒らないと思っているのではありません。悪いことは起きるかもしれないが、起きても必ず対処できると信じているのです。
 一方、「悲観的な気質」の人も、いつもは悲しみや不安にさいなまれているわけではありません。そういう人たちは、未来に不安や懸念を抱きがちで、どこかに危険はないかと絶えず気を配っているのです。そして、うまく行きそうなことよりも、うまくいかなそうなことに、つい多くの注意を向けてしまうのです。言ってみれば、慎重の度合いがすぎる人なのです。むろんこうした傾向が非常に強い人でも、時には大きな喜びや幸福を感じ、未来に希望も抱きます。それでも、リスクを冒すよりは安全な道を選ぶのが悲観的な人たちの特徴です。
 私たちの行動原理を単純化して考えると、食欲や性欲のように快楽をもたらすもの(報酬)には引き寄せられ、自分の生存の安全を脅かす危険なもの(脅威)から離れようとします。この報酬と脅威のどちらにより強く反応するかかが人生観をきめるだと、作者のエレーヌ・フォックスはいます。
 ある出来事に対して快楽の引力に強く反応する人もいれば、危険が醸す不安に人一倍反応し、危険からできるだけ遠ざかろうとする人もいます。ごくわずかな相違でも、生きるうちに何百回、何千回と繰り返されることで、個々の人生観に深く影響してくる可能性があります。サニーブレイン(楽天脳)とレイニーブレイン(悲観脳)の反応のせめぎあいが、物事の認識にバイアスをもたらし、その結果として、前向きな性格と後ろ向きの性格が形成されてくるというのが結論のようです。