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認知症になりやすい性格はあるのか? №274

2019-11-11 16:51:07 | 心理
 認知症になりやすい性格というのがあるのでしょうか。東北大学、辻一郎教授の「病気になりやすい『性格』」(朝日新聞出版)の一節に、スウェーデンのある研究機関の調査報告が紹介されていました。これは、アイゼンクの4つの性格類型(外向性、内向性、神経症・非協調性・社会的望ましさ)に基づいた性格調査票によるものだそうです。
 それによると、認知症になりやすいのは、神経症傾向が強く、社会的ネットワークや余暇活動が少ない人たちで、そうでない人たちにくらべて、認知症の発生率が2倍だったということです。
 逆に、認知症になりにくい人たちというのは、神経症傾向が低く、外向性が高い人だということです。ただし、神経症傾向が強い人でも、家族や友人との交流が多い、社会的ネットワークが豊富な人や余暇活動が活発な高齢者は認知症の発生率が低いということす。
 なぜ、「神経症傾向の強い人性格の人が認知症になりやすいか」ということについて、辻教授は次のように説明しています。ストレスの影響は記憶や学習の中枢である「海馬」が最もダメージを受けやすい。その結果、海馬が萎縮して記憶や学習能力が低下してしまうことにより、認知症が起こりやすくなる。
 もちろん、同じ経験をしても、それがストレスとなるかどうかは人によって大きく異なります。アメリカの心理学者ホルムズとレイは、人生におけるライフイベントをストレス強度として、例えば、配偶者との死別100、結婚50、離婚73、退職45などと数値化していますが、そのライフイベントをどう受け止めるかは、人により個人差があります。その個人差が性格といわれるもので、神経症傾向の強い人は、様々なイベントを悲観的に考える傾向が強く、悲観的に考えることが多く、また、それを引きずりやすいといえます。ストレスや苦痛を感じ続けることで、海馬が損傷を受けて認知症が起こりやすくなるということです。
 老人の精神医学が専門の柄澤昭秀博士らの研究によると、「認知症の高齢者は、中年期に無口で頑固、非社交的な人が多かった。」、そして「健常老人は、中年期から明るく開放的で積極的な人が多かった」ということです。
 認知症の発症を防ぐには、知的活動を怠らず、運動で身体を動かし、何かしら社会的ネットワークを保つことのようです。これらの活動が脳を刺激するのです。

虐待する親の心の病  №273

2019-11-06 15:15:50 | 公認心理師
 報道番組で虐待のニュースや記事を見聞すると、いたいけな乳幼児に対して、どうしてあんなに残酷なことができるのかと疑問を抱く人が多いかと思います。
 暴力や差別、怒りやストレスの発散は、より強い者から弱者に向かって行われるのが常です。会社で上司に𠮟責された人、顧客や得意先からクレームを受けた人が家に帰ると、パートナーの些細な言動にストレスや怒りを発散してしまいます。家事や子育てでストレスを抱えている弱者は、パートナーから受けた怒りの矛先に反論することができずに、つい、泣き騒ぐことで欲求を押しつけてくる乳幼児に転嫁してしまうことになりがちです。このようにして、身近な大人を頼るしか生存の道がない乳幼児が、被害を受けるはめになるのではないでしょうか。もちろん、我が子の愛くるしい笑顔に癒やされる人の方が多いかとしは思いますが・・・。
 先日(2019.11.4)の日経新聞に、虐待に潜む親の「心の病」という記事がありました。記事によると、子育てに追われ、抑うつ傾向が強いと答えた人の脳をfMRI画像で診断すると、相手の気持ちを読み取る能力等の低下が見られたということです。こうした能力の低下が起きると、家族や地域の人達に子育ての相談をしたり、互いに協力あったりしづらくなる恐れがあり、結果的に自分を追い込み、虐待につながることがあると指摘しています。
記事では、保護者の精神疾患も乳幼児虐待の重要なリスク因子であるとしています。自閉症スペクトラム症の親の場合はネグレクトに、ADHDの親の場合は身体的虐待との間に統計的に有意な関連が見られたとあります。もちろん、精神疾患が虐待に結びつくという事例はあくまでごく一部で、むしろ孤立して精神的に追い詰められるなど、様々な要因が絡むことは言うまでもありません。虐待は、保護者のSOSでもあると考え、精神疾患が潜んでいないか、追い詰められていないか、周囲の人達が気付いてやることも大切なことです。
 「虐待の世代間連鎖」ということも、よく語られます。海外の調査では虐待を受けたことのある人の3分の1は、自分の子どもを虐待するという報告がありますが、一方で3~4%でに過ぎないという報告もあります。しかし、幼い頃に実際に虐待を受けた18歳~25歳の男女の脳を調べた結果、脳の一部(感情や思考を制御する前頭前野)が萎縮していたり、共感や意思決定、集中力に関係する部分の容積が減っていたということが明らかになっています。虐待が心に深刻な傷跡を残すことは確かなことです。ただ、医師やカウンセラーによる心理療法により治療は可能であり、世代関連差のリスクを減少させることはできるのです。