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スクールカーストとゆとり教育 №180

2013-03-30 12:32:18 | インポート
  「スクール(教室内)カースト」(光文社新書 鈴木翔著)を読みました。いま学校で、生徒の間に自然発生する人気の度合いを表す序列があり、それをインドのカースト制度になぞらえて、「スクールカースト」というのだそうです。
 クラス内にいくつかの友達同士のグループが形成され、各グループには序列化(上下関係)があり、上位層・中位層・下位層をそれぞれ「一軍・二軍・三軍」「A・B・C」などと表現するのだということです。
 スクールカースト上での位置決定に影響する最大の特性はコミュニケーション能力ということです。スクールカーストで問われるコミュニケーション能力とは、具体的には「自己主張が強い(リーダーシップがある)」、「共感力(人望がある)」そして「同調力(空気を読む能力)」ということのようです。
 学力や運動能力は誰が見てもその結果は、はっきりとわかり、序列化されても納得せざるを得ない面もありますが、コミュニケーション能力という得体のしれない能力は、わかりにくいだけに、スクールカーストという序列は息苦しいものと思われます。
 スクールカーストは「ゆとり教育」が生み出したものではないかと思っています。学習指導要領が改定され、いわゆる「ゆとり教育」が実施されたのは、小学校・中学校が、2002年4月(平成14年)、高校が2003年4月です。この学習指導要領改定の基本方針は、
(1)「ゆとり教育」 (2)教科内容の一律3割削減(3)週休2日制の完全実施による授業時間数の減少(4)「生きる力」をコンセプトにした総合的な学習の時間の導入 (5)観点別3段階評価と絶対評価5段階評定「新学力観」の導入です。
 特に、観点別評価と絶対評価の導入が教室内の空気を変えていったものと思います。観点別評価というのは、「意欲、関心、態度」を評価するものです。試験の点数が悪くても、「意欲、関心、態度」が高ければ評価が上がるわけです。
 絶対評価の導入というは、「ナンバーワン教育(相対評価)」から「オンリーワン教育(絶対評価)」への転換です。勉強ができなくても、運動が苦手でも「そのままのあなたでいいのよ」というメッセージが与えられたわけです。
 少々意地悪な言い方をすれば、コツコツと努力をしなくても、世渡り上手な人、教師の前でうまく立ち回れる生徒が評価されるようになったともいえるかもしれません。かつては「巧言令色すくなし仁」といわれましたが、いま、学校では真逆のことが起こっているのでしょうか。

ストレスと腰痛 №179

2013-03-26 14:42:18 | インポート

  ストレスは万病の元ともいわれますが、腰痛もストレスに強い関係があるようです。厚生労働省研究班の調査によると、腰痛の人は全国に推定で2800万人いるという新聞記事がありました。特に、40~60代の約4割が腰痛に悩んでいるとのことです。
 腰痛は発熱や胸部痛といった危険信号の有無などで(1)がんや外傷、感染などの重い脊椎疾患が疑われるもの(2)まひやしびれ、筋力の低下など神経症状を伴うもの(3)原因が特定できない非特異的腰痛などに分類することが重要だとあります。
 このうち、原因が特定できない、いわゆる非特異的腰痛といわれるものが(ぎっくり腰やストレスが原因となっているものを含み)全体の85%を占めるとの研究があるというですから驚きです。
 日本整形外科学会と日本腰痛学会では、腰痛の発症や慢性化には心理的なストレスが関与しており、画像検査などでも原因が特定できない腰痛が大半を占めるとの診療ガイドラインを出しています。
 この原因不明の腰痛は、職場での人間関係や仕事量の多さ、仕事上の不満、うつ状態など心理社会的要因が関与している強い証拠があると指摘されています。ストレスにより自律神経がの乱れると、筋肉が緊張したり、血流が悪くなったりして、腰痛が引き起こされるということのようです。このため、ストレスを軽減するためにの認知行動療法などの精神医学療法も有効だとされています。
 ガイドラインの策定委員会のメンバーであるの矢吹省司教授(整形外科)のいる福島県立医科大学附属病院などでは、整形外科と心身医療科が連携し、体と心の両面から腰痛を治す治療法である「リエゾン治療」に取り組んでいるということです。整形外科で痛みを和らげる治療やリハビリ療法で筋力の回復を図っていく一方、心身医療科で腰痛の原因であるストレスを軽減するための心理療法が行います。
 これといった原因のない腰痛については、自律神経のバランスを整え、ストレスをコントロールすることで防ぐことが可能ということですから、生活のリズムを整え、適度な運動を心がけ、ストレスをためないようにしたいものです。

グリーフ(悲しみの)ケアとしての送り人 №178

2013-03-21 17:27:29 | インポート
 義祖母の葬儀に納棺師を依頼しました。その納棺師は映画「送り人」のモデルとなった方のお弟子さんの一人だということでした。彼は、持参した二枚の薄衣を天井から垂らし、仏壇をしつらえ仏具を並べると、遺族の見守る中で、ぬるま湯で暖めたタオルで丁寧に遺体を拭き清めはじめました。
 「送り人」に促され、遺族が全員でが少しずつ遺体を拭き清めていくと血行が戻ったかのように手足が柔らかくなってきました。「送り人」は、遺族とともに組んでいた指をほどき、腕を広げさせると、シーツで遺体を隠しながら、遺体を遺族の目にもさらすことなく、丁寧にしかも手早く死装束に着替えさせました。そこには、たとえ遺族に対してでも遺体を晒さないという、死者に対するリスべクトがうかがえました。
 次に、遺族に手伝わせながら、「送り人」は義祖母の爪にマニキュアをし、髪の毛をシャンプーし、薄化粧を施し口紅をひいていきます。それらの作業一つ一つが義祖母の「死」を遺族が受け入れることにつながることになります。105歳の長寿だった義祖母だが、生前マニキュアをしていたの見たことはないので、初めてだったのではないかと思いますが、それはそれで、遺族の心をなごませました。遺族は、死者が生前の面影を取り戻し、まるで眠っているような穏やかな表情で旅立っていくことに、何より温かい気持ちになります。
 白い死装束を左前に合わせ、上帯を締め、手甲、脚絆を着け、足袋を履かせます。六文銭を入れた頭陀袋を首に掛けると納棺準備が終わり、全員で納棺します。時間にして40分位でしたが、「死」と十分に向き合い、とても貴重な時間を過ごすことができました。
 「送り人」の仕事は、ただ無造作に棺に納めればいいというわけではありません。手際よく作業を進め、遺族が死と向き合う大切な一時でもあるので、可能な限り遺族に参加を促し、十分な別れができるように努めるのも「送り人」の役目です。厳粛でありながら、おだやかな雰囲気を作り出すことができるかが、「送り人」の力量といわれますが、まさにそのような方でした。有り難うございました。

「ゆとり世代」から「さとり世代」へ  №177

2013-03-19 12:07:26 | インポート
 朝日新聞(3月18日付け朝刊)の記事に「さとり世代」が紹介されていました。「さとり世代」というのは、「ゆとり世代」の次の世代のことで、物心付いた頃から不景気で、浪費を悪と考え、実にまったりとした、穏やかな暮らしを望む草食系世代ということのようです。
 元日経新聞の山岡拓氏著の書籍「欲しがらない若者たち」をベースに書かれた記事についての2ちゃんねるのスレッドが由来とあります。「ゆとり世代」はだめな若者の代名詞のように遣われることが多いのですが、「さとり世代」は、ゆとり教育を受けつつも、さらに勉強をし、現実的な将来を見通す賢い集団でもある。だからこそ悟らざるを得なかった。自分を一歩ひいて見ざるを得なかった世代と説明されています。
 「さとり世代」の特徴として、①車やブランド品に興味がない。②必要以上に稼ぐ意欲はない。③パチンコなど賭け事をしない。④海外旅行への興味が薄い。⑤地元志向が強い。⑥恋愛に淡泊。⑦過程より結果を重視。⑧主な情報源はインターネット。⑨読書も好きで物知り等があげられています。
 当然のことながら、こうした若者は消費意欲が低いため、旅行会社や自動車会社などの企業には危機感があるようです。トヨタ自動車のテレビCMで、妻夫木聡扮するのび太君に、ジャン・レノ扮するドラえもんが免許を取ろうと呼びかけているのもこうした危機感の表れではないでしょうか。
 記事は、「さとったから買わない」のではなく、使うお金がないだけではとややアイロニーを込めて締めくくっていますが、有り余る欲望を抑えて「悟り」の道を開いたのではなく、「欲望」を持つことを禁じざるを得なかったということの方が正しい気がします。
 ちなみに、団塊世代がよく知られているように、生まれ育った時代背景や生活環境によって世代は次のように分けられるようです。
①焼け跡世代(1935年生~1946年生)戦前から戦後すぐの世代で焼け跡闇市派等とも呼ばれる。
②団塊世代 (1947年生~1949年生)第一次ベビーブームで生まれた世代。日本の躍進を支えた。
③しらけ世代(1950年生~1964年生)団塊世代とバブル世代に挟まれた世代でどこか冷めている。
④バブル世代(1965年生~1969年生)バブル景気の頃に就職した世代で、ブランド志向が強い。
⑤氷河期世代(1970年生~1986年生)バブル崩壊後の就職難の世代で失われた世代とも呼ばれる。
⑥ゆとり世代(1987年生~)    「ゆとり教育」を受けて育った世代。

愛が憎しみにかわるとき  №176

2013-03-16 00:06:27 | インポート
 本当に相手のことを愛していたら、たとえ自分を犠牲にしても相手の幸せを願うのが本来の在り方だといわれますが、愛情のもつれによる殺人事件や傷害事件が時折報道されるのをみると、なかなかそのような心境になれない人が多いのではないかと思います。
 今まで愛していた人の態度が急に変わったからと言ってなぜそこまで憎むことができるのでしょうか。恋愛というのは、義理でも人情でも理性で割り切れるものでもありませんから、愛がさめたり、他の人に気持ちが移ることは仕方のないことです。
 しかし、相手の気持ちが離れていったのを知ると、悲しみと同時に嫉妬心がわき、自尊心が傷つきます。傷ついた自尊心を修復するためには、もともと自分には向いていなかったのだと自分に言い聞かせて諦めるか、相手を憎むことによって自分を正当化していかなければなりません。
 愛が憎しみにかわるのは、相手が自分の思い通りにならなかったことによる恨みからではないでしょうか。自分がこれだけ相手のことを思っているのに、相手が自分の気持ちを無視するのは許せないと思うのです。ストーカー事件によく見られるように、相手が迷惑だと思っているのにもかかわらず一方的に好意を寄せてつきまとい、相手が自分の気持ちを無視しているのが許せないと傷つけたりします。そこには、相手に対する思いやりの気持ちはありません。自分の思い通りにいかないことに対する怒りがあるだけで、きわめて自己中心的なものです。
 マザー・テレサは「愛の反対は憎しみではなく無関心だ」といいました。とすれば、憎しみの中には、まだ、いくばくかの愛が残っていると考えてもよいのでしょうか?



笑いと健康の医学 №175

2013-03-07 15:49:01 | インポート
 日経新聞(3月3日付け)に笑いと健康の関係についての記事が掲載されていました。近年、医学や脳科学の観点から健康維持に役立つ理由を探る研究も活発になっていますが、その作用の仕組みはまだ明確には分からず、信頼性の高い調査も少ないのが事実のようです。
 記事では、笑いが医療に取り入れられた端緒は、米国の雑誌編集長だったノーマン・カズンズ氏が強直性脊椎炎という難病にかかり、笑いを取り入れた治療で完治した経験を著名な医学雑誌に報告した1976年のことだとあります。
 ユーモア小説を読んだり喜劇映画を見たりして大笑いすると痛みが和らいでぐっすり眠れるようになり、数カ月後には職場復帰できたことをきっかけに、カズンズ氏はその後、カリフォルニア大学医学部教授に転じ、笑いの治癒力を説くようになったそうです。
 これを機に笑いの効用を科学的に解き明かそうとする研究が始まり、日本でも1994年に初めて、笑いが免疫機能を高める可能性を示す実験が報告され研究が増えてきたということです。
 免疫機能の向上やストレスの軽減など短時間で一過性の効果は確かめられても、それが長期間の健康維持にどう役立っているのか、本当に元気で長生きにつながっているのかが調べられていない。効果をもたらす仕組みも不明なため、笑うと健康になるのか、健康だからよく笑うのか、因果関係をつかむ議論はいつも堂々巡りになっているようです。
 現時点で信頼できる笑いの医学的な効用について、福島県立医科大学の大平教授は「運動とストレスの解消」の2点を指摘しています。
 声を出して大笑いした後は腹筋が痛くなる。笑い方にもよりますが、笑いは運動と同様に筋肉を使いカロリーを消費することは確かなようです。
 ストレス解消という点では、笑いが脳内の血流を増やしたり自律神経を安定にしたりする作用は認められていますが、これは音楽鑑賞や旅行、趣味などに熱中した時などにも見られ、笑いに限った現象ではないようです。
 大平教授は「よく笑っている人は、人と話す機会が多い。社会とのつながりがあるかどうかも重要な指標」と解説しています。
 人は自分の間違いを笑うというのが、現在の学説のようです。自分の思いこみが外れたときに笑うということですが、そのためには、自分のことを客観視、相対化していないと笑えないわけですから、かなり高度な知性が必要となります。ということは、よく笑う人は頭がいいということになります。頭がよくないと自分のミステイクに気付かないからです。