松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆動く条例づくりのポイント・人の引き継ぎができるか

2021-06-20 | はじめての条例づくり
 いくつか条例づくりをやってきて、失敗したケースもある。

 条例づくりで一番大事なのは、評価の高い、立派な条例をつくることではない。むろん、立派なことにこしたことはないが、それが、狙い通りに動いて、初めて条例をつくったことになる。研究者や進んだ市民は、立派な条例をつくって満足するが、それが動かなかったら、社会にとっては、意味が乏しい。

 ある町で、立派な条例をつくったことがある。プロセスも内容も、これまでの知見・体験を踏まえて、いい条例をつくったと思った。ところが、その後、その通りに動かないのである。

 動かない主な理由は、担当者の異動と関わった市民の不参加・不継続である。

 まず、担当者の異動であるが、条例づくりは、時間がかかるので、条例制定と運営とで、担当する人が変わる場合も多い。しかも、その町ではさらに悪いことに、所管が変わってしまった。条例は企画部で作って、運営の時に、実施担当部に移管されたのである。

 私も役所にたので、よく分かるのは、他の人がやった仕事に対しては、通り一遍の対応になってしまう。前の担当者と同じ熱意や熱量を引き継ぐのは困難である。特には、人の仕事だから(自分なら、こうやったと思うから)、面白くないと思うことすらある。1年くらいは、そのまま担当するのが好ましいが、人事異動の原則から、異動は避けられないとすると、それを補う仕組みが重要である。

 それは、この条例づくりを行った市民の力を活用することである。市民協働型の条例づくりでは、制定過程から、市民と一緒につくる。そして制定後、この条例を動かすために、推進委員会をつくるが、ここに、その市民の人たちに入ってもらい、人事異動によって失われがちな熱意と熱量を補ってもらうやり方である。困ったときに「実は、こんな議論があって、こうなったのですよ」的な発言で補充し、条例に基づく事業実施を、これまでの乗りかかった船の延長で、推進してもらうのである。当事者性があるから、熱意のこもった事業展開になる。

 ところが、このまちでは、この推進委員会の人選を役所の一般的なやり方でやってしまったのである。町内会代表、NPO代表など組織区分、男女比など、たしかに役所の一般的な基準には合致しているが、それまで、一生懸命やってきた人が、結果として、のぞかれてしまった(それだけでなく、はしごを外された感で、反発すら感じたのかもしれない)。

 結局、それまでの知見や思いは、推進委員会には伝わらず、それゆえ、担当課の職員には熱伝導せず、結局、ゼロからのスタートになってしまった。私も、油断してしまい、気が付いたときはとき遅くになってしまった。もったいない話である。

 要するに、市民協働型の条例では、制定過程で、一生懸命やった人をどれだけその後の運営の仕組みに取り込めるかが、ポイントになる。推進委員会に当て込むのが一番いいが、枠が限られているので、全員が入れない場合がある。その時は、附属機関の推進委員会とは別に協力組織をつくるのも一方法である。ともかく人財で、思いと経験を積んだ人を温存し、引き続きがんばってもらう。それが、条例づくりの一コマでもある。

 うまくいった例が、焼津市の自治基本条例で、当初から、一生懸命やった人たちが、そのまま残り、まちづくり市民集会などを盛り上げてきた。結局、市長さんまで、その気にさせたのだと思う。そのうち、その人たちが、引退し始めるので、うまくバトンタッチをするにはどうしたらよいかが、今の悩みであるが、これはある種、ぜいたくな悩みといえるだろう。

 私が関わっている多摩市も新城市も、早晩、条例ができる。注視すべきは、その後、この人の引継ぎがうまくできるのかである。これがきちんとできて、初めて条例をつくったといえるのだろう。私も、油断せず、がんばろう。
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