松下啓一 自治・政策・まちづくり

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幸福度ランキングを読む②

2021-01-16 | 1.研究活動
 普通、人々に「幸せかどうか」を聞く主観的指標を採用するが、日本総研の幸福度ランキングでは、幸福に関係しそうな指標を集めて合成 するという客観的指標を採用している。

 主観的指標法は、アンケートを作れば、あとは調査の対象をうまく拾えばいいが、客観的指標法のほうは、既存の指標を集めて合成するという作業が必要で、日本総研のようなたくさんのデータを収集でき、それを処理する能力のあるところしかできないので、これが強みである。

 問題は、指標の選択で、この幸福度ランキングでは、地域の社会的状況や構造を示す5つの基本指標と、人々の幸福感を具体的に評価する尺度として「健康」「文化」「仕事」「生活」「教育」の5分野・50指標を設定し、2020年度版では、それに追加指標を加えた計75指標を総合して、都道府県別の「幸福度ランキング」を算出している。

 生活の部分を見ると、個人(家族)と地域に分かれていて、地域は、 汚水処理人口普及率. 道路整備率. 一般廃棄物. リサイクル率. エネルギー消費率. 地縁団体数の5つの指標が基本評価である。

 幸福を「その社会に暮らす個人がそれぞれの私生活主義的な豊かさによる幸福を超えて、利他や地域との一体感を共有でき、その中で自己の存在意義を認めていける」と考えると、地域の評価が、この5つなのは、正直、物足りない。

 ただし、2016年度版は自主防災組織活動カバー率、2018年度版では勤労者ボランティア活動者比率、2020年版では、地域子育て支援拠点箇所数、総合型地域スポーツクラブ育成率、一人あたりごみ排出量を追加指標に加えているが、これらによって、地域の評価にもやや厚みが出たようだ。

 主観的指標を採用した場合は
①まち・地域に対する肯定的な認識・評価(安全・安心、美しさ・豊かさ、快適さ・利便性)
②まち・地域の人々に対する肯定的な認識・評価(自立的・自律的ふるまい、他者への配慮、思いやり、公共的な活動、連携・協力)
③まち・地域文化に対する肯定的な認識・評価(お祭り・イベント、伝統・文化、生涯学習・文化活動)
等を聞くことになるので、次の版では、これらを体現する客観指標をさらに検討していったらよいであろう。
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