松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆フォーラム「引きこもりを地域の力に」(相模大野)

2014-06-23 | 1.研究活動
 福祉の専門家でもない私が、なぜこのテーマでフォーラムを実施するのか。もう少し詳しく書いておこう。

 ①「引きこもり」は、困難を抱える特別な人の特別な問題ではないからである。引きこもりを社会からの疎外と考えると、誰にでも起こることである。

 引きこもりの原因は、思わぬところにある。
 たとえば、親が病気になって介護が必要になったとき、家族のだれが面倒を見なければならない。しかし、子どもたちはそれぞれ独立し家族があるので、ただ一人だけ、独身だし、勤めてわずかなの末っ子が、まだ若いのでやり直しがきくと思って、会社を辞めて介護をしはじめることになる。
 ところが、3年後、再度、仕事に就こうと思うと、思わぬ困難に直面することになる。会社は、履歴書に空白期間がある若者をそう簡単に雇ってはくれないからである。いくら履歴書を出しても不採用が続く。不本意な仕事に就かざるを得なくなる。
 そこから、引きこもりになっていく。こんなケースは、誰にだって起こるのである。

 いうまでもなく、親のためと考えた行動が評価されないどころか不利益になる社会は不健全である。自己の保身のために逃げ回る人が得をする社会は、人々の気持ちを殺伐とさせる。そんな社会は、脆い社会で、持続せずにいずれ自己崩壊を起こすだろう。

 引きこもり問題への取り組みは、社会のあるべき姿につながっている。それが松下ゼミで、取り組む理由のひとつである。

 ②ひさしぶりに職員マインドを見たからである。

 社協の人たちのメインターゲットは高齢者である。ところが、訪問介護で高齢者の自宅を訪ねると、そこでグチを聞かされることになる。息子が家に引きこもり仕事についていない。心配でしょうがない・・・。報告書の余白欄に、「また1時間、グチを聞かされた」と記入されることになる。

 これに気がついたのが、今回、講師をお願いした菊池さんたちである。たしかに親の立場に立ってみると、自分たちの体も心配であるが、もっと心配なのは、息子や孫たちのことである。自分が死んだあと、どうなってしまうのか。本当に、相談に乗ってもらいたいのは、息子や孫たちのことである。

 これをグチを切り捨ててしまっても、社協の仕事としては回っていく。自分たちの仕事のターゲットは介護が必要な高齢者だからである。見なかったことにすれば、それでも仕事は回っていくし、非難されることはない。

 そこを乗り越えたのが、藤里町の社協の人たちである。何のために、福祉の仕事をしているのか、その基本に遡って、自分たちでできることをやってみようと動き始めるのである。「なんでそんなことができたのか」という私の質問に対して、何でそんなことを聞くのかというそぶりで、そして考えた末の回答が、「そこに山があるからだ」的なものだった。

 最近では、自治体に勤める職員はみんな頭がよくなったうえ、コンプライアンスなどという知識を学ぶため、ずいぶんと賢くなった。そこで、やる前からあれこれ心配し、実際には法律に書いてある決まったことしかしなくなった。個人の問題というよりも、職場風土の問題かもしれないが、それが自治体職員の信頼を蝕んでいる。

 あらためて、自治体職員とは何か、何をすべきなのかを考える機会としたいと考えた。

 ③引きこもりも地域の資源という発想の素晴らしさである。

 ここは過疎の地域で、若者は東京に出ていってしまう。その中で、引きこもって地域のいる人は、東京に行かない地域の資源であるという発想である。

 憲法13条には、個人は尊重されると書いてある。誰でも価値があるということで、たしかにその通りであるが、あまりに抽象的にすぎる。ところが藤里町では、それを具体化・見える化した。引きこもりはお荷物でも邪魔者でもなく、地域の資源ですという発想は、新たな政策の源泉となる。

 地域の資源と位置付けると、その資源を大いに活かそうということになり、活用のためのプログラムが開発される。例えば働く場所の創出である。

 地域の資源だから、藤里の町の人たちも、その資源開発のためにひと肌脱ぐことになる。町の人たちが講師となって、仕事というものを紹介し始める。私が泊まったホテルの支配人は、6時間も講義時間をもらって、電話応対からナプキンのおり方まで、仕事のノウハウを教えるそうだ。

 これは地域の人たちが、自らの仕事の価値を再発見する機会である。講師になった町の人は異口同音に、自分たちの仕事は大したことはないという。しかし、素人から見れば、どれも、みんなすごいのである。洗濯屋さんのアイロンかけの技術、写真屋さんの人を笑顔にする技術、どの職業にもきらりと光る技術がある。町の人たちも、自らの価値を再発見する機会にもなる。

 フォーラムの概要
 1、テーマ・講師
   「ひきこもりを地域の力に」
   秋田県藤里町社会福祉協議会常務理事・菊池まゆみさん
 2.日時・場所
   平成26年7月20日(日)13時から15時
   相模女子大学7号館1階教室
 3.主催・運営
   相模女子大学社会マネジメント学科松下啓一ゼミ(3年生) 
 4.参加申し込み・問い合わせ
   無料
   matsuzemi7@yahoo.co.jp
までお願いします。

 ゼミ生たちの奮闘で、申込者が随分と増えた。ゼミ生が説明に伺った民生委員協議会からは、40名近くの人たちが、大挙して参加するという。今回は、7号館711教室が満杯、満員御礼になるかもしれない。
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