協働が、市民の力を引き出すことであると考えると、これまでの仕事のやり方や対応を変えることが協働事業ということになる。総務課だって協働があることは前著『協働が変える役所の仕事』(萌書房))に詳しく書いた。公民館の飲食禁止も同じである。
地域活動の拠点施設である公民館等は、飲食禁止あるいは原則飲食禁止とされているところが多い。これは社会教育施設なので好ましくないといった漠然とした理由のほか、食べこぼしなど汚れる等、管理的な理由からである。
しかし、しゃっちょこばっての会議ではなく、お茶やお菓子を食べながらの会議のほうが、お互いの気持ちをリラックスさせ、それによって議論も活発化し、住民間の連携、協力を高めることもできる。市民活動を活発化させたいと考えているのに、なぜ、飲食禁止になるのか。
公民館の利用制限に関しては、地方自治法244条条第2項、公の施設の規定が該当する。その第2項では、「正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない」と定められている。正当かどうかは、よって立つところによって違ってくる。
たしかに飲食に関連して、危険を伴う行為(火災の発生等)、他の利用者に迷惑をかける行為(音、におい、大声等により他の利用者に著しい支障をきたす恐れがあるとき)、公民館の設備を汚すような行為が考えられる。管理的立場に立てば、その「おそれ」に重点を置いて考えることになり、飲食は原則禁止ということになる。
他方、市民の力を引き出すために、公民館があると考えれば、その効用がある飲食は、原則許容して、迷惑等を及ぼす具体的ケースのみ事前に禁止し、あとは事後的な措置で対応すればよいということになる。どちらの立場に立つかによって、中心軸がずれてくる。
これまで当たり前のことと考えられていたことを「市民が存分に力を発揮するには」という観点から見直すのが、協働政策である。公民館の管理も、協働の観点から考えると、ずいぶんと違ったものになる。
ただ、こうした協働からの取り組みを公民館職員だけの責任に行わせるのは、酷である。職員だけに責任を負わせるような対応ならば、職員は安全サイドに立って、保険をかけて、結局、飲食禁止に動くからである。
そうならないようにするのが、「政策」である。市役所全体の方針を明示して、公定し、それを規則等の規範に定めることで、安心して行動できるようにするのが、協働政策である。