今の時代は、地消地産競争である。ただ地消地産もいいがケンタッキーフライドチキンも食べたいという思いもあるだろう。
・漏れバケツ理論
「地域というバケツにできるだけたくさん水を注ぎ込もうと(つまり、地域にお金を引っぱってこようと)、政府からの補助金獲得や企業誘致などを行っても、せっかく地域に注ぎ込まれたお金の多くは、すぐに地域外に漏れ出てしまう」という考え方である。たしかに、高度経済成長の時代ならば、漏れ出すよりも多くの水を注ぎこめたが、今では、もうそんなことはできなくなった。
・東京の資本を持ってくると
東京のお店をまちに持ってこようという取り組みは、先進的に見えるが、率直に言って前時代の発想である。つまり、ここでまちの人が買い物をすれば、その富は、東京に持って行かれる。製品も、その多くは、市外、海外で生産されたものである。地域に還元されるのは、従業員の給料、わずかな税金などほんのわずかである。
・地域の経済循環
これに対して、地消地産では、まちの人たちが買う商品が、地元の原料を使って地元で生産された場合、消費者が払ったお金が生産者に行き、その生産者は、その得た金を地域で消費し、また原料生産者に代金を払う。その金をもらった原料生産者も地域で消費するといったように、まちの人が買った商品代金が、地域で何度も使われていくという考え方である。
・同じお金が何度も回る
「仮に、収入の7割を町内で使えば。誰かに200,0000円の収入があったとする、この200,0000円のうち7割の140,000円は町内の飲食店で使う。飲食店はこのうち7割の98,000円を町内の八百屋で仕入れに使う。八百屋はこのうち7割の68,600円を町内の農家に支払う。農家はこのうち7割の48,020円を町内の商店での買い物に使う。ここまで5人の手を渡る間に、200,000円のお金が合計354,620円の売り上げを生み出す。
反対に、最初の人が全てを町外で使ってしまったら、飲食店、八百屋、農家、商店、誰の売り上げも生まなかったことになる」(美郷町HP)。
・地場の産業をつぶさない。発展の芽を伸ばしていく
だから、地場の産業をつぶすような東京資本の導入は、愚の骨頂である。導入するなら、地場産業を伸ばす具体的な計画とのセットである(そのために具体的な資金投入、具体的なプロジェクトがあること。地域産業を振興しますというリップサービスでは論外である。地場産業がつぶされるだけで終わる)。
・でも、ケンタッキー・フライド・チキンも食べたいし、レッドロブスターも食べたい
これも当然である。この理論は、こうした人の好みを「だめ」というのではなくて、1%でも町内消費比率を上げ、そこに新たな産業の芽を見つけていこうという考え方である。
・これを町をあげてやったのが宮崎県美郷町である
宮崎県の人口4400人の町である。その目的は、「このバケツから流出しているお金を可視化することで、地域内に足りない資源や、産業を見つける」ことにある。
・ホームページでは、特に食費にスポットを当てて紹介している
美郷町全体の年間食費消費額 約14億円で、美郷町内購入は約4億円(29.7%)、町外購入は約10億円(70.3%)である。食費だけも10億円が町外へ流失している。もし、その1%でも町で循環したら。1%は1,000万円にもなる。だから、ケンタッキー・フライド・チキンはダメとは言っていない。
・さらに、品目別の町内購入率も調べる
町内購入率が低いのが、お菓子(32.4%)、生鮮肉・凍肉(22.4%)、外食(4.0%)となっている。これがターゲットである。
・ここから、起業の一例として、惣菜おかず屋さんを例示している。
惣菜・おかずは、1世帯平均、町外での購入額が年額39,176円で、町全体では年間9,108万円の惣菜・おかず代が町外に流出している。これは、町内にこれだけの未開拓の惣菜・おかず市場があるとも言える。
・まちおこしの理論
今はやりのエビデンスによる政策立案である。ターゲットが分かったので、施策は、ここに注力することになる。その後、「飲食店の開業や事業承継が4件も続いており町民も喜んでいます」とのことである。
・仕事はこんなふうに行う
この仕事ぶりは、特別のことでではなく、仕事のイロハともいえる。人口4400人の町だって、こんな知恵比べをやっている。この知恵比べのなかから、役所も町民も鍛えられ、地方自治の新たな可能性が開けてくる。がんばろう。