
『励ます地方自治』(萌書房)が刊行された。
終わりにには、次のように書いた。
「励ます地方自治に対して、やはり自治体政府は権力主体であり、市民の権利が侵害される懸念を第一義に考えるべきだという批判があるだろう。
しかし、自治の政策現場で近年、特に目につくのは、誤ったコンプライアンスに縛られ、あるいは過剰ともいえる市民からのクレームをおそれるあまり、新たな自治の課題に挑戦しない自治体政府(職員)の姿である。ここでは、「自治体政府のやりすぎ」によって市民の権利が侵害されるリスクよりも、自治体政府が、市民からのクレームや訴訟をおそれて臆病になり、「自治体政府のやらなさすぎ」によって、市民の権利を守ることができないリスクのほうが大きいというのが私の率直な印象である。
かような現状を前にして、その打開の道を自治体職員による個人の努力や奮闘に委ねるのはあまりに酷である。これを制度や仕組みとして整備して、自治体政府(職員)が前に出る条件をつくるのが、励ます地方自治である。主権論がつきまとう国とは違って、市民相互の助け合いが基本である地方自治では、国とは違う試みが十分可能だからである。
励ます地方自治への転換には、多少の勇気と具体的な行動が必要になるが、今、その一歩を踏み出す時が来ているように思う。」
今までの協働論の集大成というか、新たしい地方自治論の出発点というか、ともかく引き続いて頑張ろう。