松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆一年の初めに(三浦半島)

2016-01-01 | 地方自治法と地方自治のはざまで

 昨年から今年にかけて、ときの言葉は「ポピュリズム」だと思う。

 近ごろは、ザ・ポピュリズムという政策が目立つ。消費税の軽減税率は、その典型で、食料品のような日常用品の税率を低くするのは、一見すると弱者のために見える。実際、軽減税率は、多くの国民に受け入れられているようだ(批判的な論調は専門家だけである)。しかし、ちょっと見では、低所得者に優しい政策のように見えるが、よく考えると、高所得者も食料品を買い、実際には、低所得者よりも、多くの金額を使う。その分が軽減されるが、それは結局、低所得者に優しい政策にはなっていない。

 つまり、本来、低所得者を守る政策をとろうとすれば、軽減税率にせずに一律に税額をかけ、その税の一部を低所得者に回せば、簡単だし、低所得者を直接、支援ができる。ところが、軽減税率のやり方だと、高所得者の減税の補てんに、結局、本来ならば低所得者に回すべき部分を吸い上げて、高所得者に回していることになってしまうからである。一見すると、弱い者の味方のようなふりをして、実際は逆のことになっている。

 もちろん、この政策を実施している人たちは、こんな問題は百も承知である。知っているが、国民は、そこまでは考えないだろう、一見すると、低所得者に優しい政策をやれば、国民は、拍手喝さいをするだろうと踏んでいるのである。要するに、国民はその程度と見切って、政策を打っている点が、悔しく思うところである。

 安保法制でも同じことが起こった。一方では、平和法案と言い、一方では戦争法案といった。本来考えるべきは、厳しい国際情勢のなか、どうすれば平和を実現できるかを考えるのであるが、それをやらずに表面的なキャッチフレーズに始終している。両陣営とも、どうせ国民は、そんな面倒なことを考えずに、安易なキャッチフレーズになびくと考えているから、平和法案、戦争法案になるのである。

 安保のような複雑な事態を、国民が冷静に判断し、国民間で議論し、自分たちで考え、よりましな政策を採用するという態度を示したら、これは他国にとって、強い抑止力になる。キャッチフレーズで動く国民は、ちょっとしたことがあれば、大きくぶれるので御しやすいが、他方、こうした国民は、ある種の凄みがあって、うかつには手を出せないと思うからである。

 とかく感情で動きがちな国民の抑えとなるのが、地方自治の役割である。自分たちの周りに起こった課題に対して、住民が冷静に判断し、住民間で議論し、熟考の結果、意志を決定することを学び、実践するのが地方自治の役割である。地方自治が民主主義の学校と言われるゆえんである。

 ところが、最近では、その地方自治で、逆のことが起こっているというのが、私の危機意識である。住民投票が民主主義の発露のように言われ、住民投票が多用されるようになった。複雑な問題をイエス、ノーで決める安易さは、驚くばかりである。手間がかかるかもしれないが、一つひとつきちんと勉強して、より適切な答えを出すという努力ができなくなった。

 現政権が、消費税などのポピュリズムに走るのは、憲法改正をもくろんでいて、衆参両院で3分の2を取るためだと言われている。憲法は不変のものでなく、時代に合わせて変えるべきものであるが、それも冷静な判断があってのことである。

 こういう時代だからこそ、多少面倒であるが、地方において、イエス、ノーではなく、小さいけれども地道な判断を積み上げていく、そういった地方自治の原点を忘れてはならないし、それに取り組むのが、地方自治を担うリーダーたちの役割である。無論、私も、そのために、精一杯頑張ろうと思う。

 柄にもなく、やや力が入ったが、そんな1年にしたいと思う。

 

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