条例によらず要綱で設置した市民懇話会が違法であるという住民監査請求が、反対運動の一環として全国的に行われ、その結果、違法であるという監査結果が出され、そのうちいくつかは裁判にかかって、これも違法であるという判決が出されている(ただし、大半は、違法ではあるが、損害がない、あるいは過失がないというのが結論である)
神奈川県下の自治体でも、この監査請求等の洗礼に見舞われており、平塚市や逗子市では裁判にもなっている。要綱設置の市民懇話会を一律に違法とするのは、あまりに政策現場の実態と乖離しているが、どこの監査請求でも、きれいに横にそろって、一律に違法とされている。
この問題で重要なのは、最終的には、損害がないなどの理由で監査請求自体が却下されて「よかった」ではなく、その前提である、要綱設置の市民懇話会が違法であると認定されることである。違法とされると、次回以降は、違法を承知で市民懇話会を設置することはできなくなるから、実務に与える委縮効果はとても大きく、それがひいては、せっかく積み上げてきた自治を潰すことになってしまう。一連の監査結果や判決例を見ての感想であるが、申し訳ないが、「地方自治が分かっていない」というものである。
そんなことで、自治体は、違法であるが裁判に勝った、「やれやれ」と思っているのではないか、そんな安易な決着をしてもらっては困ると思って、最近、判決が出たばかりの逗子市を訪ねて、そのあたりの事情を聴くことになった。
逗子は、私の地元からずっと近い。京浜急行も金沢八景から逗子線に入ると空気が変わる。とりわけ池子の山を越えるあたりは、森が濃く、自然の宝庫である。どこでもそうであるが、米軍に接収されていたことが、無秩序な開発から免れることになったという皮肉である。湘南鷹取に住んでいた時は、池子の裏山は、子どもたちとの散歩コースだった。
逗子市の法制担当は、弁護士さんである。弁護士さんは、一般的には任期制の採用であるが、逗子では、議会から否決されて、一般職として採用されているとのことで、法律と行政知識が合わされば、心強いことであろう。
裁判の顛末やその後の動きについては、丁寧に、説明をいただいた。担当者の人たちも、政策現場と法律との乖離を強く感じている様子だった。
監査結果や判決の論理は、法134条の4③の附属機関を実質的に考えるものである。したがって、調査・提言を行う組織を、法律に書いていない「懇談会」と称し、そこから「報告」をうけることとしても、実質的に附属機関ならば、形式だけ変えてもダメというものである。ここまではまっとうな意見である。
ただ、それ以降、監査委員や裁判官は、硬直してしまい、「審査、諮問又は調査」をする組織であれば、即、附属機関ということになってしまう。本来は、ここでも実質的に考えて、形式的には「審査、諮問又は調査のための機関」であるが、実質的には、「審査、諮問又は調査のための機関」に当たらないものもあり、そうした機関は附属機関にあたらず、なにも条例で設置する必要はないという道筋があるからである。それが実質判断説の帰結だと思う。
ここで監査委員や裁判官が思考停止してしまうのは、附属機関を条例設置とした趣旨は何か、条例設置すべき附属機関とは何かを考えていないからである。自治とは何か、持続可能なまちを創っていくための自治経営とは何かを自信をもっていえないことが、本来、自治を推進する機関であるはずである監査委員が、霞が関法務に逃げ込む一因なのだと思う。
神奈川県下の自治体でも、この監査請求等の洗礼に見舞われており、平塚市や逗子市では裁判にもなっている。要綱設置の市民懇話会を一律に違法とするのは、あまりに政策現場の実態と乖離しているが、どこの監査請求でも、きれいに横にそろって、一律に違法とされている。
この問題で重要なのは、最終的には、損害がないなどの理由で監査請求自体が却下されて「よかった」ではなく、その前提である、要綱設置の市民懇話会が違法であると認定されることである。違法とされると、次回以降は、違法を承知で市民懇話会を設置することはできなくなるから、実務に与える委縮効果はとても大きく、それがひいては、せっかく積み上げてきた自治を潰すことになってしまう。一連の監査結果や判決例を見ての感想であるが、申し訳ないが、「地方自治が分かっていない」というものである。
そんなことで、自治体は、違法であるが裁判に勝った、「やれやれ」と思っているのではないか、そんな安易な決着をしてもらっては困ると思って、最近、判決が出たばかりの逗子市を訪ねて、そのあたりの事情を聴くことになった。
逗子は、私の地元からずっと近い。京浜急行も金沢八景から逗子線に入ると空気が変わる。とりわけ池子の山を越えるあたりは、森が濃く、自然の宝庫である。どこでもそうであるが、米軍に接収されていたことが、無秩序な開発から免れることになったという皮肉である。湘南鷹取に住んでいた時は、池子の裏山は、子どもたちとの散歩コースだった。
逗子市の法制担当は、弁護士さんである。弁護士さんは、一般的には任期制の採用であるが、逗子では、議会から否決されて、一般職として採用されているとのことで、法律と行政知識が合わされば、心強いことであろう。
裁判の顛末やその後の動きについては、丁寧に、説明をいただいた。担当者の人たちも、政策現場と法律との乖離を強く感じている様子だった。
監査結果や判決の論理は、法134条の4③の附属機関を実質的に考えるものである。したがって、調査・提言を行う組織を、法律に書いていない「懇談会」と称し、そこから「報告」をうけることとしても、実質的に附属機関ならば、形式だけ変えてもダメというものである。ここまではまっとうな意見である。
ただ、それ以降、監査委員や裁判官は、硬直してしまい、「審査、諮問又は調査」をする組織であれば、即、附属機関ということになってしまう。本来は、ここでも実質的に考えて、形式的には「審査、諮問又は調査のための機関」であるが、実質的には、「審査、諮問又は調査のための機関」に当たらないものもあり、そうした機関は附属機関にあたらず、なにも条例で設置する必要はないという道筋があるからである。それが実質判断説の帰結だと思う。
ここで監査委員や裁判官が思考停止してしまうのは、附属機関を条例設置とした趣旨は何か、条例設置すべき附属機関とは何かを考えていないからである。自治とは何か、持続可能なまちを創っていくための自治経営とは何かを自信をもっていえないことが、本来、自治を推進する機関であるはずである監査委員が、霞が関法務に逃げ込む一因なのだと思う。