雨の恋人。

まるで霧のような雨の中にいると穏やかな気持ちになれる。
空に向かって開いた傘に美しい思い出を呼び起こす。

僕が開こうとした時に穏やかな笑みで大きな傘を黙って差してくれた。
濡れるからと寄せあいながらぎこちなく歩いた道。
君と歩くのが奇跡だと思った二十歳の僕。
好きな以上に僕の一歩先を穏やかに助けてくれていた。
どんなに心強く励まされたことか。心から存在を支えて求め合えた人。

僕はもう大丈夫。頑張ってみせるから。

なんで君がいつもいつも僕の一歩先を見ることができたのか分かったよ。
君が誰よりも僕を見ていて、分かろうとしてくれて、なにも決めつけずにそっと近くで耳を澄まして自分の言葉で伝えてくれようとしてくれたからだよ。
そういう優しい君が大好きだった。
自分をわかってほしいとか自分の問題を他人に転嫁したり、環境のせいにしたりしなかった。
潔くてまっすぐで優しい人。決して自惚れず前を向いて成長し続ける人。

もう会うこともない過去の人だけど、私の中で輝いて未来を導いてくれるから。

ありがとう。出会ってくれてありがとう。
未来に向かって。