『ああ、もしも選択の度に未来が、運命が分離していくとなると、一体いくつの平衡世界ができる? 一人一人の選択で、一つ一つ分離していくと、それは一体どれだけの世界になる? 考えてみてくれ』
「そ、それは……きっととてつもない……ですよね?」
ミレナパウスさんの慄く言葉に彼は頷いて返した。ミレナパウスさんも想像したのだろう。もしも……もしも可能性分離で世界や未来が無数に分かれてるとしたら……その無数の未来はまさに無数といっていい程の数になるだろう。数えるなんて不可能。それだけどんどんと分離していくことになる。
一人でも未来は分離し続けるのに、それが沢山の生命体に当てはまるとなれば……
『ああ、可能性分離では未来はずっと生まれ続ける。そこに際限はない。そうだろう? 選択の度に未来は分離し続けるのだから。だが、その再現なく生まれる可能性の逆の世界……それはどこにある? あり続けることができるんだ?』
平衡世界が選択の度に生まれる……としよう。可能性分離があるのなら、そうなるからね。でも……それで生まれる世界はまさに無限だ。彼が言うようにちょっとしたことで選択の世界が分離していくのなら、その世界はどこにある? というのもわかる。
空間とか次元とか……違えば……とか思うけど、そういう事じゃないの? でも次元ってのも実は私はよくわかってないからね。誰もの選択で分離していくなら、本当に無数。
『既に次元の限界、空間の密度の限界。平衡世界の定理……それらは俺がいた時にある程度解明できてた。それが示すのは平衡世界はあり得るが、限界値も見えてた。その数は十億と1056世界だ。それ以上の世界が生まれることはない』
どうやら彼の世界……G-01を作った世界の人々は平衡世界の限界値までも既に出してたようだ。それが十億と1056という数。十億とか聞くとかなり多い思うかもしれない。
実際ミレナパウスさんは「十億?」と小首をかしげてる。それに対してとりあえず勇者か「とりあえずとてつもない数だよ」といってる。それなら十分では? とミレナパウスさんはおもってるだろう。
確かに十億となるとアホみたいな数字だ。実際ミレナパウスさんの故郷だけでその数を消費できるのなら、足りそうな気はする。だってあの世界かなり限界世界だったからね。人だって少なかった。
でもきっと彼の言葉を考えるにその数は全ての可能性分離として枝分かれした世界で生まれ出来る世界の総数……ということだろう。そうなると……どれだけ世界があるかなんて分かんないが、きっと足りないよね。
そもそもが発展してる世界なら人口だけで億とか超えるだろうし……私が覚えてる世界だって人口は70億とかいってたし……となると十億とか全く足りないとわかる。なるほど可能性分離は破綻してる。
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