カンカン――
そんな音が頭に響いてきた。まるで裁判所で聞くような、あの木のハンマーみたいなのを専用の台に叩きつけるような……そんな音。まるで電波が悪い時の映像みたいにとぎれとぎれていく映像が暗転して、それして聞こえてたきたのがこれだ。
いったいなに? と思ってたら、次第にガヤガヤとした声も聞こえてくる。
『返して! 返してよ!!』
『あんたのせいで! あんたのせいっ……で!!』
『ママ―! ママ―!!』
『あんたのこと、絶対に一生……いや何度生まれ直しても殺してやる!!』
とてもだけど誰に言ってるの? と思う様な言葉の数々。何が起きてるのか……次第に視界が戻ってくる。
(なにここ?)
理解できなかった。どこなんだろうか、眼下には沢山の人々が見える。皆が私を見上げてる。少なくとも狭い室内じゃない。そして怒ってるのかわかる。かなり豆粒に見えるのに、それがわかるのは、彼らの怒りが見えるからだ。赤い怒気というか、邪気というのか……それが見えた。
『はははははははははははは、はははははははははははははははははははははははははははははは!!』
聞こえてくるそんな声。けど不思議と口から発してる……という感じじゃない。私の周囲全部で聞こえてる。そう思ってると、彼……がみえた。これまでそんなことはなかった。
だって……だ。だって私は『彼』の記憶をみてるのだ。追体験してるといっていい。なのに……それなのに当人が目の前にいる? おかしい。だって彼の視線からみた人生を体験してたはずだ。
それにさっきまで知的美人さんの息子と研究の事で話してたじゃん。それなのに、次の瞬間にはこれ? 飛ばしすぎでしょ。
『何もわからない者ども……何も理解できない頭しかないのか? 犠牲じゃない。永遠……いや複数、違うな重複するけど重ならない世界の運命。それを束ねた死数へと示した道。
そこへと巻き込まれた命は、永遠に死に、そして生き返る。そこには無限のエネルギーが生み出され続ける。エントロピーが生成される。世界で一番効率がいいエネルギーが何かわかるか? それは命だ』
まるで悪役の様な事を彼はいってる。でもそれを眼下の人たちが聞いてる感じはない。なぜなら、何やら巨大な腕が見えて、それが眼下に攻撃を仕掛けてるからだ。機械的な、硬質な腕。それに対応するように、向こうも鎧の騎士たちが出てくる。
いや、本当に何が……そう思ってると、彼が振り返ってくる。そして、私たちは相対した。
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