「何をいってるんですか? その頭もついにボケ始めましたか? あの時
あんなに緊張してたじゃないですか?」
「いやいや、お前の方こそボケには早いだろ。あの時、大人気な儂に嫉妬したお前が、皆の前で儂のボタンを奪い取ったんだろう?」
ふむ……この話……
「おじいちゃん、嘘はダメだよ」
ぷく―と頬を膨らませた小頭は簡単におじいちゃんの方が嘘をついてると判断した。勿論それに根拠がないわけがない。
「小頭ちゃん!?」
「だって、おじいちゃんさっきの話じゃ女子に嫌われてたんでしょ? それなのに大人気って……それは無理だよ。つまりは嘘をついてるのはおじいちゃんだよ!」
ビシッと根拠を突き付ける小頭。その言葉におじいちゃは「うう」っとうろたえた。小頭の推理は完璧だったのかもしれない。つまりはおじいちゃんはこれ以上孫に格好悪い事実をバラされたくなくて、自分が「モテた」という事にしたかったんだろう。
確かに子供にとっては自分の親や祖父とかが陰キャだった……とかよりは昔は格好良くて、モテモテだった……という方が印象的にはいいだろう。でもそれだけだ。それにおじいちゃんは勘違いしてる。
「別にねおじいちゃん。私はおばあちゃんの話を聞いても素敵だなって思うだけで、おじいちゃんが格好悪いなんて思わないよ?」
そこがおじいちゃんの間違ってる部分である。昔ながらの男であるおじいちゃんは多分『男とは――』という形があるんだろう。それに多分おばあちゃんへの告白はおじいちゃんの男の告白を満たしてなかったんだろう。
だからあれはおじいちゃんの中では認めることが出来なくて格好悪い事……なのだ。けどそれが間違いだ。小頭は普通にそんなロマンティックなシチュエーションを選んだことに高評価だったのだ。
だからむしろ、それが恥ずかしい事……みたいに言ってるおじいちゃんに落胆である。
「そ、そうか? じいじは素敵か?」
「あの告白を否定するおじいちゃんは素敵じゃない」
「小頭ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
おじいちゃんは断末魔の叫びをあげた。どうやら今の言葉おじいちゃんにクリティカルヒットをしたようだ。せっかくおじいちゃんへの好感度が上がってたのに、おじいちゃんは完全に墓穴を掘った形である。
「うっう……小頭……違うんじゃ。それは儂が悪かった。でも、間違っておる! 儂は中学ではモテモテじゃったのだ! それにこいつが嫉妬してたのは事実じゃ!」
なんかまだ言い訳がましいことを言ってる……と小頭は思った。往生際が悪いな――って印象が更に追加されてる。
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