7月2日、81歳で亡くなった、俳優で演出家の浜畑賢吉さん。この3月まで20年にわたって大阪芸大舞台芸術学科で教鞭をとった浜畑・前学科長を笑顔で送ろうと、お別れの会でもなく偲ぶ会でもない、「カーテンコール!浜畑賢吉学科長」が7月25日、大阪・天王寺のホテルで開催され、200人近くの教職員や卒業生が参加しました。<取材班>
【動画ニュース】笑顔と感謝で送る 「カーテンコール!浜畑賢吉学科長」(2024年7月25日撮影) https://www.youtube.com/watch?v=LgA59mOj0_0&t=147s
浜畑さんは9年前に前立腺がんを発症し、2年前に再発。闘病しながらも、そんな様子を一切みせることなく、最後まで俳優を、そして舞台芸術学科の教授・学科長を全うした浜畑さん。そんな浜畑さんに感謝し、笑顔で送り出そうと、舞台芸術学科が企画しました。
(写真:会場中央には愛犬と写る浜畑さんの遺影とともに愛した日本酒も 2024年7月25日19時30分 大阪・阿倍野区の「都シティ大阪天王寺」吉野の間で)
会場となった大阪・阿倍野区の「都シティ大阪天王寺」には、教職員や副手をはじめ、浜畑さんから学んだ卒業生ら200人近くが平服で駆けつけました。
(写真:司会進行を務めた現学科長の山本健翔さん)
●懐かしい写真で俳優・演劇人生を振り返る
宴会場の正面には、白や薄紫の花で飾られたディスプレイが設けられ、愛犬とともに微笑む浜畑さんの写真が据えられました。
浜畑さんは1942年生まれで東京都出身。劇団俳優座の養成所を経て、1966年に劇団四季に入団。ドラマにも多数出演し、NHK大河ドラマでも活躍。1994年の四季退団後は、ミュージカルやオペラの演出も手掛けました。大阪芸大の舞台芸術学科では2004年から教壇に立ち、今年3月まで学科長を務めました。
(写真:浜畑さんの舞台人、演劇人としての活動の軌跡を伝えるボードに貼られたスチール写真。)
1968年放送の浜畑さん主演の『進め!青春』(東宝制作、日本テレビ系放送)のテーマ曲とともに、会場のスクリーンには映像が流れ始めました。時代劇から現代劇、ミュージカルまで、浜畑さんのスチール写真構成を来場者は懐かしそうに見入っていました。
また、浜畑さんの俳優人生、演劇人として日本の演劇界に与えた影響から、20年間務めた大学での様子までが、現学科長の山本健翔さんのナレーションで紹介されました。
●7月2日午後4時半、夫人に見守られながら
浜畑さんとは50年来の親交があり、舞台芸術学科、放送学科で教鞭をとっていた俳優の穣晴彦さんが、浜畑さんの妻で女優の上村香子さんからの手紙を代読。「7月2日午後4時半。痛みも苦しみもなく、目の前で安らかに眠るように息を引き取りました」と読み上げられると、来場者は静かに聞き入っていました。
(写真:浜畑さんの妻で女優の上村香子さんからの手紙を代読する穣晴彦さん 2024年7月25日19時46分)
浜畑さんは、今年3月8日に兵庫県立芸術文化センター大ホールで上演されたオペラ『氷山ルリの大航海』(原作:高円宮妃久子殿下)を演出。手がけた最後の舞台になりました。激しい痛みに襲われながらも、それを気取られることなくやりとげたことが、山本健翔・現学科長から報告されました。
「7月2日、世界という舞台から退場されました。その引き際は見事なもので、明るく飄々とこの数年をかけて綺麗に仕舞っていかれました」と語りかけ、「お別れの会でも偲ぶ会でもなく、もう一度浜畑先生を呼び出して、にぎやかに送ろうと思います」と笑顔であいさつしました。
(写真:今年3月8日に上演されたオペラ『氷山ルリの大航海』の映像。カーテンコールで「ありがとうございました」と客席にお礼を述べる浜畑さん。これが舞台での最後の姿となった)
●日本酒で「乾杯」 最後の舞台『氷山ルリの大航海』の映像も
会場が明転し、祭壇に浜畑さんが好きだった日本酒が供えられ、献杯ではなく乾杯の音頭で開宴。
スクリーンには、オペラ 『氷山ルリの大航海』のステージのオープニングとフィナーレの映像が映し出されました。張りのある声のナレーション。カーテンコールでは、浜畑さんが両手を口に当てて「ありがとうございました」と客席にお礼を述べるシーンも。歩くのもままならない時期だったということは、全く感じさせない姿が映像に残されていました。
(写真:乾杯の音頭をとる塚本学院理事の工藤皇さん)
●スクリーンの映像に感謝の「ブラボー!」
会場では「思い出酒場」と題して、ゆかりのあった大学関係者らが次々に登場し、浜畑さんの思い出を語り合いました。
(写真:「思い出酒場」のコーナーには、浜畑さんのパネルをはさんで、ゆかりの人々が登壇)
2023年の学外公演『朝が来るまで「夏の夜の夢」』の映像では、スーツの背中に白い羽根をつけた浜畑さんの「妖精」の姿が。舞台の上から「若者に才能のない人なんていません。彼らは私の宝物です」と語りかける姿が大写しに。カーテンコールの映像に合わせて、会場からも手拍子が起こりました。
浜畑さんお気に入りの五本締めのあと、会場からは「浜畑学科長、ありがとうございました!」「ブラーボー!」と、感謝の掛け声とあたたかい拍手がおくられ、笑顔に包まれた「カーテンコール!浜畑賢吉学科長」は幕を下ろしました。
(写真:浜畑さんお気に入りの「五本締め」。音頭をとる舞台芸術学科教授の内藤裕敬さん。 2024年7月25日21時10分)
●来場者のコメント
「いつも我々のコースの公演に駆けつけてくださって、学生に声をかけてくださいました。先生に感謝の気持ちを込めて、これからも踊りを続けていきたいと思います」(舞踊コース教員)
「心はどこにあるの?内臓にあるよね。という先生の言葉を、いまでも心に留めています」(卒業生)
「学生にとにかく寄り添ってくれる先生だった。学内公演で学科長と夫婦役を務めたことが印象に残っている」「卒業式の際、『次は“仕事場“で会えることを楽しみにしているよ』という言葉を忘れません」(2017年卒業生)
「副手時代に『お忙しいですね、お疲れではないですか』と声をかけると、『僕は忙しいという言葉は使わないんだ。だって“心”が “亡くなる”と書くでしょ』と先生はおっしゃった。コトバは大事だと知りました」(元副手)
「浜畑さんはおおらかで寛容で、太陽のような方だった。さすがに“あっち”へ行ってしまうとへこむけど、ありがたい存在だった。ゆっくりお休みください」(教員)
「少年の心を持ちながら、舞台、あらゆる生き物、何よりお酒を愛したその人生を全うし、最後まで現役で生き抜いた浜畑賢吉という人と一緒にいられた。浜畑先生が作ったこの舞台芸術学科をさらに発展させていければと思っています。ほんとうにありがとうございます」(山本健翔・現学科長)
(写真下:愛犬とともに。浜畑賢吉・前学科長)
了
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