聞きなれない名前だと思う人が多いでしょうが、作者の鴨長明の名は知っているでしょう。高校時代に
古典の教科書に載っていた、あの有名な「方丈記」の作者です。方丈記は世間の出来事や人生について
書いた随筆ですが、無名抄は和歌に関するエピソードを集めたものです。長明がなぜそんな書物を書い
たかというと、彼が当時一流の歌人だったからです。高校では神職の道が断たれ、失望して隠棲し方丈
記を書いたという程度しか習いません。
萌え出づる春になりにけるかも
長明が生きた時代は西行や藤原定家に代表される新古今集が成立する鎌倉期でした。武士が台頭し、
世は戦乱の時代へと移っていきます。長明は後鳥羽院に愛され、和歌所(勅撰集の編集などを本務と
する)の寄人にもなりますが、結局辞退して隠遁してしまいます。後鳥羽院も承久の変で隠岐に流さ
れ、定家らによって新古今集は編まれますが、これを絶頂期として和歌は停滞します。私がこの本
を読もうと思ったのは、日本独特の美観である幽玄やあはれ・さびを知りたかったためですが、当時
の歌人の逸話も多く載っていて気楽に読める本にもなっています。
「無名抄」 現代語訳付き 久保田淳訳注 角川ソフィア文庫
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