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9月に入って、94歳の祖母が危篤状態になった。
そしてシルバーウィークを前に亡くなった。
そういうことがあったので連休は何も予定を入れていなかったのだが、
それにしても秋晴れがあまりにも続くので1泊でキャンプ道具を積んで東北へ向かった。
蔵王が今は活動が弱まっているようだから行ってみようか、ということになった。
あまり激しい行程や明るいコースをこなす気分ではなかったし、ちょうどいいと思った。
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刈田岳レストハウス前の駐車場からはちょうど朝の雲海と紅葉の山肌が見えてすっきりとする。
さて大勢の観光客の横で一応登山靴の紐をちゃんと締めてお釜から熊野岳へと向かったのだが、
馬の背は万が一の噴火に備え通行止めであった。
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そうかぁ…。ネットで調べた時はそういうアナウンスには気がつかなかった。
さて。
刈田嶺神社にて、しばし考える。
反対側のスキー場のロープウェイ側からのアクセスはできるようだ。
ともかく行ってみようということでまた車に乗る。
ロープウェイ乗り場で聞いてみると、山頂駅を経由して熊野岳の往復は可能という事だった。
「紅葉が見ごろですよ」
その言葉に背中を押され、いそいそともう一度靴ひもを締める。
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スキー場のロープウェイを山頂駅まで乗り継ぐと標高は1660m。
熊野岳1840mまでわずか200mほどのアップだ。
始め地蔵山1736mまで緩く登るが、基本的には開放的な登山道が続く。
緩いアップダウンはお散歩のような気分だ。
木道も整備され歩きやすい。
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最後、「近道」と書かれたガレた岩のコースを登りつめると
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熊野岳 1840m、山頂である。
立派な熊野神社がある。
例えば硫黄臭のような、活火山特有の感じはしなかった。
吹く風は東北の秋の風で冷たかったが、穏やかな明るい山頂であった。
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広い頂上部をお釜の方へ向かうとびっくりした事に、馬の背を通ってたくさんの人々がこちらへ向かってきていた。
通行止めのロープをくぐってきたのだろうか。
いざ噴火活動がおこったら走って逃げ切れるような距離じゃないけどな。
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ロープウェイ山頂駅までの帰路は地蔵山山頂を巻く更に緩やかな天上ルート。
息子と、天国へ続きそうな道だ、と話しながら歩いた。
息子はよっぽど気持ちが良かったのか、
はしゃいだ様子で一番に走って下りて行った。
最近の山の中では珍しい事だった。
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下山後、明日の予定の月山のふもとまで移動する。
月山志津野営場。
車の乗り入れは出来ない。
美しい沼のむこうに月山が見える。
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気持ちの良い草地のサイトは、
隣り合うサイトと寂しくなるほど離れている。
広大な敷地に全18サイトのみ。テント一張り1000円。
トイレと炊事棟は清潔で、他は何もない。
いくつか家族キャンパーもいたようだが、声が聞こえないほど遠い。
静かすぎて、熊が近くにいてもおかしくないと本気で思った。
熊じゃなくてもいろんなのがいるだろうし、
夜は何も外に出さないように気を付けた。
夜はぐんぐん冷えてきて、沢の音がずーっとしていた。
朝方になって外を見ると星が素晴らしい。子どもたちを起こして星を見せてからまた寝た。
今日登る月山はもうすぐそこに見えているから。
少しくらい寝坊しても大丈夫。
結局、熊も狸も狐も出なかったが、
すごいのがいた。
息子の手のひらサイズのカタツムリ!
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さすが月山の懐。幽玄の森…。