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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
平成はじめのころです。
* 知多半島で龍が天に昇った (007)
その日は、25号・東名阪・23号・247号のコースで、
知多半島を一周するつもりで家を出た。
夏の盛りであった。
23号はトラックが多かった。
白い上着がドス黒く染まっていた。
排気ガスのせいだろう。
海岸はどこも海水浴の客であふれていた。
半島を時計回りに走る予定だった。
一周ゆっくり走って2時間ぐらいだろうか?
私は海沿いに走るのが好きだ。
その為、247号の途中から155、366号を通って
半田市に抜けた。
金でも余れば別荘を建てたいような所が、
あちらこちらに点在している。
開発もあまり進んでいない。
フェリーが、のんびりと進んでいる。
V!
一人で悦にいっていた。
時おり波飛沫が腕にかかって気持がいい。
2時すぎに半田市に入ったので、ゆっくりと回れる。
ギラつく太陽に、いっぱい詰めてあった子供用のドナルドダックの
水筒も空に近くなっている。
腕は波飛沫を浴びた塩分の残りと体内から出た
塩で白くなっている。
擦ると黒白くてザラザラしている。
排気ガスと塩分の固まりなのだろう。
走っていると、そのうちに面白い光景に出会った。
防波堤を一筋に上がってゆく波を発見したのだ。
咽喉も乾いていたので、その少し手前で、サヤカから降りて
防波堤に登った。
車の通りは少ない。
多くの者はあちこちの浜辺で海水浴の最中なのだろう。
私は、麦茶を飲みながら、その波の様子を見ていた。
伊勢湾といっても、結構波は高い。
恐らく太平洋の土用波が、鳥羽と伊良湖の間を抜けて、
まともにぶつかってきているのだろう。
3~4mもある防波堤にシュルシュルと大蛇のような波が
上がってくるのである。
強い蛇と弱い蛇とが不規則に現われてくる。
その時だった。
強い大きい波が来たかと思うと、蛇の形から龍の姿に変わって、
防波堤を滑走路にして、バババーンと天に昇ったのだ。
壮観!!
龍は勢いをつけたまま、ズズーンと上へ上へと上がってゆく。
私は見惚れていた。
波飛沫の白いアワのような固まりで出来た龍は、キラキラと
陽の光に光って何とも言えず綺麗だった。
天へ天へと、だんだんとスピードを上げて消えていった。
後には、波飛沫が相も変わらず、大蛇・小蛇となって
上がり続けていた。
夏の天 食い切るごとく 白龍が
怒涛昇りの 知多半島
ち ふ
この項おわり