QOOTESの脳ミソ

日記や旅の記録(現在進行中および過去の旅)がほとんどですが、たまに「腹黒日記風」になっているのでお気を付けください。

三浦綾子『泥流地帯』『続泥流地帯』

2024-06-14 19:42:10 | Books, Movies & Music
前回好きな作家を村上春樹と書いたが、正確には村上春樹さんと三浦綾子さんの二人だった。二人とも甲乙つけがたいくらい好きなのに一人だけを挙げたのがなんだか申し訳ないような気がするので、少し。

三浦綾子さんの小説は『氷点』が最も有名だが、僕は小学5年生の時に読んだ『泥流地帯』が最も好きで、二番目が樺太を舞台にした『天北原野』、三番目が『塩狩峠』で、その順番に読んだ記憶がある。

彼女の小説の特徴は背景にキリスト教徒の思いが垣間見えること(しかし、単にきれいごとばかりを描いているだけではないような気がする)と、主人公たちをこれでもかこれでもかというくらい苦難が襲うことだ。昼のメロドラマに通じるものもあるかもしれない(笑)。

彼女の本も最初は母に勧められて読んで見たら面白くて芋づる式にほかの作品も読みたくなった。『泥流地帯』は十勝岳の噴火に襲われた家族がその中でさらに運命に翻弄される物語、『天北原野』は樺太で終戦を迎えた人々がこれまた苦難を強いられる物語。沖縄地上戦の悲劇はよく語られるけれども、樺太から逃げる途中でソ連に船を沈没させられて死んだ人、樺太に取り残されて苦難の日々を送ったたちのことはそれほど語られないなぁとその本を読んだ後から思っている。

『塩狩峠』も実家の本棚にはあったが実際に手に取ったのは別のきっかけだった。中学3年の公立高校入学試験の1週間前おそらく受かると思い何もしていなかった僕に母が「どうせ受験勉強もせずに暇ならここ行って来たら?」と渡された、近所のキリスト教教会でアメリカ人宣教師が開いていた英会話の折込チラシ(うちはガッツリ仏教徒の家庭だが母はそういう面白そうなものが好きだった。)、それをきっかけに受験は置いといて教会で英語を教えてもらうようになったのだ。因みに教会はプレスビテリアン(日本語では「長老派」と言う)、末日聖徒いわゆるモルモン教ではない。別に宗教の是非をかたるつもりはないが、モルモン教のアメリカ人宣教師さんたちは日本語がやたらうまいので、英語を教えてくれると言ってもあまり英語の勉強にはならない(笑)。

テキストは聖書の物語を題材にしたもの。宣教師さんなのでときどき「神様は素晴らしいでしょう」というくだりが出てくるが(それはそれ、これはこれ)と思って純粋に楽しんでいた。

そこで勧められたのが『塩狩峠』だった。北海道の塩狩峠を走っていた汽車のブレーキが壊れて止まらなくなり、このままでは乗客全員が死んでしまうという事態に陥った時青年が身を挺してブレーキになりみんなが助かった、そして彼はキリスト教徒だったという小説だ。実話をもとにしていて、北海道には実際に塩狩峠という駅がある。事故が起こった塩狩峠は今の駅とは少し違う場所にあったようだ。

今の薄汚れた自分にはあまりに清らかすぎる話だが、当時の無垢な少年QOOTESの心には彼がキリスト教徒だったという点は気にならず純粋に響いた。

その頃の読書体験というのは生涯にわたって影響があるもので、大人になってからも三浦綾子さんの小説は愛読書となっている。

三浦綾子さんは長く病床にあって自分で書くことができなかったため、1999年に亡くなるまでは夫の三浦光世さんの口述筆記で執筆活動をしていた。何年か前に旭川の三浦綾子記念館を訪れた際にはなにか勉強会のようなものをされていて、そこにご主人の三浦光世さんがいらっしゃったのを見てなんだか嬉しかった。その後ほどなくして彼が亡くなったというニュースを見たので、ちょっと検索してみたら、僕が記念館を訪れたのは2014年のことだったようだ。

お二人とも好きな作家さんなのに、村上春樹さんだけに触れて三浦綾子さんに触れないのはなんだか後ろめたくて(笑)、ちょっと書いてみました。

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