12月8日(水)
あいちトリエンナーレ2019で圧倒されたホー・ツーニェンさんの映像インスタレーション「旅館アポリア」が公開中。新作「百鬼夜行」に合わせた再展示で、どちらも来年1月23日までの公開です。
「とよたまちなか芸術祭」の特別展示というスタイルらしい。
明治後期から続いた料理旅館・喜楽亭。戦前は養蚕業、戦時中は軍、戦後はトヨタで賑わったそうです。
作品中で語られる神風特別攻撃隊・草薙隊の訓練飛行場が現在では浄水駅近くの直線道路。隊員たちの中には出征前の思い出に喜楽亭に泊まった者も居た。地元の文化財と作品をリンクさせた構成で、この地で開催する意義を持たせています。
受付を済ませ、配置図を貰いました。1Fと2Fのレイアウトが前回と逆になっていた。経路の矢印も無くなっています。
一ノ間「波」を観たら、音声は同じだけれど映像にカラーのアニメーションが加えられていた。新作「百鬼夜行」と同じスタッフによるものであろうそれが、白黒の実写映像と入れ替わりながら描かれていた。
オリジナルを知っているから?切り換えがウザいし、この作品にカラーはないだろうと違和感ばかり湧いていた。
ニノ間「風」で観た2本も同様に、かなりの部分がアニメに置き換えられていた。さすがに飯沼正明さんは実際のお写真でした。
二階に上がって三ノ間「虚無」
廊下の座布団に座って観るけれど、手前に先客が居ると奥に行きたくても行けません。常に奥へ奥へとズって行ってくれないと、混雑していたらワヤですね。
ここのナレーションは何度聴いても難解で理解出来ないや(;'∀')
四ノ間「子どもたち」
どの部屋も座布団に座って観るけれど、足が痛くて私には厳しい。他にお客さん一人しか居なかったので座布団2枚使ったら楽になりました。他に誰も居なかったら横になって観ていたかも。
2本目の映像が最後でラストの空母が沈没するシーンで「家鳴り」が発生します。同時に他の部屋でも「家鳴り」して終わる演出なので、全ての映像が同じ12分に合わせられている。
戦時中にプロパガンダに協力した小津安二郎さんと横山隆一さん。その事実を作品として残さず、静かに歴史から消去した。
そのまま残せばいいのになぜ?ツーニェンさんには不思議な行為に映ったのかも。
日本人が太平洋戦争と向き合えていないのは、戦後すぐに発布された「プレスコード」が原因だと思います。GHQは安全に占領する為に報道機関に言論統制を行い、これにより他国の批判などが一切禁止され「日本だけが悪い」という報道しか出来なかった。
アメリカが世界恐慌を引き起こし、欧米列強は世界中に植民地を広げてブロック経済で凌ごうとした。各国が自ブロックの防衛と他ブロックへの進出を強行した結果が第二次大戦なのに。
正しく戦争の総括を出来ずに日本は、ひたすら自分たちだけが悪いのだと報道し、教育し、信じ込んでしまった。自国の悪い所だけでなく、他国の悪い所も同じテーブルに並べて総括しなければ、本当の反省なんて出来やしないのに。
プレスコードは1952年にサンフランシスコ講和条約で主権を回復するまで続いた。以後は自由に何でも言えたのに、6年間も唱えて来た姿勢を変えられない報道機関と刷り込まれた国民。
自虐史観に縛られ、自国の近代史なのに殆ど知らない日本人。日本に占領されたシンガポールに出自を持つツーニェンさんにはどう映っているのだろう?
観終える頃にはフルカラーのアニメにも慣れていた。アニメを加えたのは「旅館アポリア」「ヴォイス・オブ・ヴォイド」「百鬼夜行」の三部作に統一感を持たせる狙い?そう考えれば納得。
「次の部屋への移動時間を考慮していない」「三ノ間が混雑する」など、以前感じた不満な所はそのままだった。もしかして不完全な部分を敢えて不完全のままにしている?それら戸惑う体験すらも作品の一部だったりして。そう考えるのもアリだな~。
奇しくも今日は真珠湾攻撃の日でした。