セリカ魂

「初代セリカに乗りたい!」
ゆっくり旧車ライフの備忘録

朱黒の仁(参)完/槇えびし

2016年01月09日 12時09分00秒 | つぶやき

漫画版「天地明察」繋がりで読み始めた「朱黒の仁」が完結。
両作品は講談社と朝日新聞出版からそれぞれ出ている。
違う出版社なのに互いの帯に相手の広告って特別?
真田幸村(敢えて「信繁」ではない)の死生観を描き切った。
そして、槇さんなりの解釈で描かれた各武将が素敵だった。
後藤又兵衛・毛利勝永・長宗我部盛親・本多正純・藤堂高虎・
伊達政宗&片倉小十郎の主従コンビなど魅力的に輝いていた!
絵的にも「乾いた線」が描ける作家さんで好みのタイプ。

無理に引き延ばすことなく全3巻にまとめた点も好感が持てる。
《壱》犬伏の別れ(OP)九度山から大坂冬の陣・真田丸まで
《弐》冬の陣終了から誉田の戦い・又兵衛孤立まで
《参》誉田の戦い・幸村到着から大坂城落城&エピローグ​

参巻の発売に際して槇さん自らツイッターで呟いた。
 見かけたらゲットしてしまった方がいいかもしれない
 くらいの部数
実際、不思議な程に既刊を店頭で見掛けません。
本屋でバイトの娘曰く「ネムキは売れても入って来ない」
新聞社としては大手でも漫画は弱小の朝日新聞出版だから?
講談社から出てる「天地明察」はどこの本屋にも置いている。
内容の充実度に対して知名度が低いのが残念でなりません。
今年は真田丸イヤーだというのに、ちぇっ​・・

「朱黒」に先駆けて昨年末「天地明察(九)完」が発売された。
こちらは少し前にやらかした(!)冲方さん作品の漫画版です。
「天地」の見せ場は終盤に春海が幾つも策を講じて想いを成す所。
主人公が真っ直ぐ「正攻法」なのが定石。
ところが「天地」は数々の挫折を経て老練な策士へと変貌。
碁打ちの役職と相まって春海が次々と妙手を打つ様が爽快。
策士と化した後も素直な心根を持ち続けるキャラも魅力。
「目標達成の為には回り道も厭わない」
それは「朱黒」の伊達にも通じるなぁと感じた。
ストーリーが深堀りされていて原作にも負けていなかった。

20160109.JPG

 

BLも描くだけに「美しさ」には格別のこだわりがあるみたい。
それが「月代にしない」という形に顕れてるのかな。
(時代考証よりも見た目優先?それ全然OK)
さて「朱黒」の参巻、どのキャラも立っています!

濃霧で又兵衛を孤立させた事を悔いて散ろうとする幸村。
それまでヤサ男だった幸村が野太い鬼神と化した。
秀頼の名を出して思い直させたのが毛利勝永。
陣を立て直し、改めて対峙する伊達と幸村。
史実と虚実を織り交ぜて激しい戦が描かれます。
とにかく大助が格好いい!
小十郎との一騎打ちの中で幸村の意図を理解していると証明。
「死」は終わりでは無い事
 死して尚 脅威となる事
 それが真田の死だ
合理的な「伊達理論」に真田が「武士の理想論」をぶつける。
正論過ぎて呆気に取られた小十郎がまた渋い!
参巻では政宗&小十郎の主従コンビが凄く格好良かった。
大助の話から伊達を「射抜いた」幸村は阿梅と大八を託す。
このエピソードはしびれます!
関ケ原後に島津が敢えて井伊を頼った史実を連想。
でもそれを上回る?根津甚八が無茶苦茶格好いい!
意表を突いたその最期に圧倒されましたよ・・
読み返すと弐巻でも、幸村の考えを大助に教えてたりします。
 生者が恥じて尚 語らねばならない程の死に様を
 生きて語る事が出来ぬなら
 生きた者に語らせる様な死に様を
 仕掛けるしかないだろう?
「死」に対しても真田の策略があると即座に理解する大助。
頼もしさを感じた。

作品全体を通じ、多くが大助目線で描かれている。
それが幸村のミステリアスさを増していた様に思う。
そのせいで最後まで幸村に感情移入することは無かった。
「周りの者に幸村の考えを語らせる」
それこそが作者の意図した描き方なのでしょうね。

・最後の最期まで輝いていた甚八
・幸村の倅として立派に逝った大助
結果的に、主役である幸村よりも彼らに感情移入していた。
それ以外にも脇であるべき敵味方の武将が輝く。
(中でも藤堂高虎が渋くて良い!)

読み終わって「ラストは大助の最期で良かったのでは?」
そう感じていた。
エピローグ的な後日談はむしろ白けさせるとすら思った。
でもすぐに思い直した。
真田は死して「名」を遺しただけではない。
生きて「家」も遺したのだ。
真田家の一員として皆が役割を全うした事が凄かった。



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