漫画版「天地明察」繋がりで読み始めた「朱黒の仁」が完結。
両作品は講談社と朝日新聞出版からそれぞれ出ている。
違う出版社なのに互いの帯に相手の広告って特別?
真田幸村(敢えて「信繁」ではない)の死生観を描き切った。
そして、槇さんなりの解釈で描かれた各武将が素敵だった。
後藤又兵衛・毛利勝永・長宗我部盛親・本多正純・藤堂高虎・
伊達政宗&片倉小十郎の主従コンビなど魅力的に輝いていた!
絵的にも「乾いた線」が描ける作家さんで好みのタイプ。
無理に引き延ばすことなく全3巻にまとめた点も好感が持てる。
《壱》犬伏の別れ(OP)九度山から大坂冬の陣・真田丸まで
《弐》冬の陣終了から誉田の戦い・又兵衛孤立まで
《参》誉田の戦い・幸村到着から大坂城落城&エピローグ
参巻の発売に際して槇さん自らツイッターで呟いた。
見かけたらゲットしてしまった方がいいかもしれない
くらいの部数
実際、不思議な程に既刊を店頭で見掛けません。
本屋でバイトの娘曰く「ネムキは売れても入って来ない」
新聞社としては大手でも漫画は弱小の朝日新聞出版だから?
講談社から出てる「天地明察」はどこの本屋にも置いている。
内容の充実度に対して知名度が低いのが残念でなりません。
今年は真田丸イヤーだというのに、ちぇっ・・
「朱黒」に先駆けて昨年末「天地明察(九)完」が発売された。
こちらは少し前にやらかした(!)冲方さん作品の漫画版です。
「天地」の見せ場は終盤に春海が幾つも策を講じて想いを成す所。
主人公が真っ直ぐ「正攻法」なのが定石。
ところが「天地」は数々の挫折を経て老練な策士へと変貌。
碁打ちの役職と相まって春海が次々と妙手を打つ様が爽快。
策士と化した後も素直な心根を持ち続けるキャラも魅力。
「目標達成の為には回り道も厭わない」
それは「朱黒」の伊達にも通じるなぁと感じた。
ストーリーが深堀りされていて原作にも負けていなかった。
BLも描くだけに「美しさ」には格別のこだわりがあるみたい。
それが「月代にしない」という形に顕れてるのかな。
(時代考証よりも見た目優先?それ全然OK)
さて「朱黒」の参巻、どのキャラも立っています!
濃霧で又兵衛を孤立させた事を悔いて散ろうとする幸村。
それまでヤサ男だった幸村が野太い鬼神と化した。
秀頼の名を出して思い直させたのが毛利勝永。
陣を立て直し、改めて対峙する伊達と幸村。
史実と虚実を織り交ぜて激しい戦が描かれます。
とにかく大助が格好いい!
小十郎との一騎打ちの中で幸村の意図を理解していると証明。
「死」は終わりでは無い事
死して尚 脅威となる事
それが真田の死だ
合理的な「伊達理論」に真田が「武士の理想論」をぶつける。
正論過ぎて呆気に取られた小十郎がまた渋い!
参巻では政宗&小十郎の主従コンビが凄く格好良かった。
大助の話から伊達を「射抜いた」幸村は阿梅と大八を託す。
このエピソードはしびれます!
関ケ原後に島津が敢えて井伊を頼った史実を連想。
でもそれを上回る?根津甚八が無茶苦茶格好いい!
意表を突いたその最期に圧倒されましたよ・・
読み返すと弐巻でも、幸村の考えを大助に教えてたりします。
生者が恥じて尚 語らねばならない程の死に様を
生きて語る事が出来ぬなら
生きた者に語らせる様な死に様を
仕掛けるしかないだろう?
「死」に対しても真田の策略があると即座に理解する大助。
頼もしさを感じた。
作品全体を通じ、多くが大助目線で描かれている。
それが幸村のミステリアスさを増していた様に思う。
そのせいで最後まで幸村に感情移入することは無かった。
「周りの者に幸村の考えを語らせる」
それこそが作者の意図した描き方なのでしょうね。
・最後の最期まで輝いていた甚八
・幸村の倅として立派に逝った大助
結果的に、主役である幸村よりも彼らに感情移入していた。
それ以外にも脇であるべき敵味方の武将が輝く。
(中でも藤堂高虎が渋くて良い!)
読み終わって「ラストは大助の最期で良かったのでは?」
そう感じていた。
エピローグ的な後日談はむしろ白けさせるとすら思った。
でもすぐに思い直した。
真田は死して「名」を遺しただけではない。
生きて「家」も遺したのだ。
真田家の一員として皆が役割を全うした事が凄かった。