事の発端は先月、遊びで雪洞作りをしたことだった。泊まってみれば?なんて冗談まじにり話し、それは無いなと思いつつここでならアリかもと頭を掠める。そういえば昔買ったシャベルの出番がない。マットも寝袋もしまったまま、良い機会かもしれない。
前回の雪洞が多少なりとも残っていると思い(こみ)準備開始。寒いのは嫌だからダウンパンツにウールのルームシューズも持っていこう。せっかくなので昼食くらいは雪洞内で食べたい。前日にはお気に入りのパン屋で無事バゲットをゲット。軽く浮かれて出掛けると見事に潰れていた。
事実を知るのが怖くて、前もって確認しなかった。まさか、ここまでとはね。芝見えてるし・・・
一瞬やる気が失せた。けど、けど、あれこれわざわざ持って来たからには使いたい。そもそも泊まる気で来てる。しかし一から始めるには時間が足りない。残っているY氏作に手を加えさせてもらう事にして、まずは滑りに出る。戻って潰れた雪洞を眺めながらの昼食。なんだか切ないなあと思いながらも、お腹が空いていたのであっという間に食べ終わる。さて、掘りますか。
曇り空。グレーな背景が切なさに拍車をかける。と思いきや掘っている間にどんどん青空が広がってきて、潜ってる場合では無くなった。寝床は完成していないが滑らねば。滑って疲れてまた掘る。持参のツェルトでは入口が広いのでブロックで塞ぐ。上手いこと四角く切り出せると楽しさ倍増。延々やっていられるやつ。それよりも、床の傾斜と天井高を確保しなくては。寝転んだ時に圧迫感があるのは怖いので、固い天井を少しずつ削り、どうにかギリギリ自分サイズ(身長161cm)に仕上げる。欲を言えばもう少し高さが欲しいが、そろそろ冷えたビールを飲みたいし、お風呂で疲れもとりたいなってことでタイムアップ。
ツェルトの固定はほぼIさん任せだったけど、全体的に良い仕上がりではないでしょーか。
楽しい宴の後、ほろ酔い気分で一人外に出る。こうやって写真で見ると異様ですが、本人至って真剣。
ロウソクの明るさに感動しつつ、写真を撮っていたら眠くなった。真っ暗な中、寝袋に包まると空気の冷たさが際立ち、眠かったはずがなかなか寝付けない。寝袋を被ると息苦しい。顔を出せば鼻が冷たくて眠れない。寝袋とカバーで顔周りに空間を作り、やっと落ち着く。何度も時計を見ては、背中の痛さで右へ左へイモムシ状態。そうこうしているうちに0時を回った。その後は覚えていない。3時に目が覚め部屋に入ろうか一瞬考えたが、トイレに行きたい訳でもないし、驚くほど寒くもない。なんだか寝袋から出るのが面倒になった。良い感じに収まっているこの状態を逃すのが惜しい。さらに、ここまできたら朝まで居なくてはという、妙な義務感も生まれる。浅い眠りの中、圧雪車の音が遠くに聞こえ、あぁ想像していたより煩くないんだなと安心し、何時だろう、そろそろ起きようか、まだ早いのかな。あれこれ考え寝袋から頭を出した時には、明るい光がツェルト越しに注いでいた。さらに外に出ると10cmほど積もった雪で、白い世界が戻っていた。
良い体験だったな。
2025.3.15-16