(冒頭の写真を含め、訴訟団の写真はすべて 原爆症認定訴訟 近畿弁護団通信 より)
「被告国・厚生労働省は放射線による被曝の影響を過小評価している」
国がまた被爆者に敗訴しました。
原爆症認定申請を却下したのは違法として、兵庫県や大阪府などに住む被爆者らが、国を相手に処分取り消しなどを求めた近畿原爆症集団認定訴訟の判決で、大阪地裁(山田明裁判長)は12月21日、未認定5人のうち4人を原爆症(放射線被曝による後障害)と認定しました。
敗訴した原告の方も良性腫瘍だから治療の必要性がないということで原爆症認定の請求が棄却されただけで(要医療性の要件)、原爆による放射線被曝との関係(起因性の要件)がないとされたわけではありません。
子どもの日 内部被曝の恐怖25 近畿原爆症集団認定訴訟 大阪高裁判決文よりICRP基準の問題点
(最前列で花束を持っておられるのが今回勝訴された原告の方々。二列目以降が最強弁護団・医師団・支援の会)
この判決は、2003年以降、全国17地裁で306人が提訴した原爆症集団認定訴訟で最後の一審判決でした。
原爆症認定訴訟は全国の地裁・高裁で原告被爆者側が国相手の行政訴訟19連勝するという空前の進行を経て、2009年8月に当時の麻生太郎首相が原告全員の一括救済に合意しています。
そのため、原告側は敗訴した男性(86)を含め控訴しない方針です。
この判決も、被爆者に対して国が認めようとしなかった入市と残留放射線による広範な被爆と内部被曝による人体影響について、
「誘導放射化物質及び放射線降下物を体内に取り込んだことによる内部被曝の可能性がないかどうかを十分に考慮する必要があるというべきであり、加えて、内部被曝による身体への影響には、 一時的な外部被曝とは異なる性質が有り得ることを念頭に置く必要があるというべきである」
としました。
(2006年5月13日 大阪地裁での第一次訴訟一審全面勝訴判決)
しかし、厚労省はこの訴訟で負け続けているのに原爆症認定基準をほとんど改めませんでした。
末尾の毎日新聞は
「原爆症認定申請の却下処分取り消しを求めた集団訴訟で、国が08年に始めた新認定基準の再審査で認められなかった原告135人のうち約7割の101人が勝訴していたことが分かった。認定要件を緩和した新基準でも司法判断と乖離(かいり)している実態が浮き彫りとなった。」
と報道しています。
もし厚労省の原爆症認定基準が妥当なら、認定申請を却下された原告被爆者は一人たりとも勝訴できないはずなのです。それなのに裁判は19連勝もして、新基準でも7割が勝訴しています。もはや、厚労省の放射線被曝に対する考え方が根本的に誤っているのは明らかです。
にもかかわらず、厚労省はその後も認定基準も変えず、認定業務は滞らせ、認定率を上げようとしていません。そのため、近畿原爆症訴訟団などはあらたに「原爆症認定促進 義務付け訴訟」を開始せざるを得なかったのです。
ですから、まず、厚生労働省は被爆者に対する認定行政を抜本的に改める必要があります。
それと同時に、厚労省だけでなく、文科省、経産省などあらゆる国の機関は、ABCC・放射線影響研究所からICRP(国際放射線防護委員会)・厚労省と引き継がれた被爆者の実態調査とそれに基づく被曝の安全基準が、放射線による被曝の影響を過小評価しており、広島・長崎の被爆者の実態に全くあわないことを認めなければなりません。
そして、そのような誤った基準を維持して、福島第1原発事故による被曝の影響をも矮小化することは絶対止めるべきです。
年間100ミリシーベルト以下の放射線の発がんリスクが高いことは原爆症認定訴訟の判決で決着がついている
(大阪高裁でも全面勝訴して確定)
私もかつてこの近畿訴訟弁護団で活動していました。
自分たちの基準を絶対視する国・厚労省は、法廷で、私たち弁護団の目の前で、原告の被爆者の方々に「あなたたちは被曝していないんです」と暴言を吐き、私は激怒して立ち上がって撤回を求め、異議を申し立てたことを今でもはっきり覚えています。
広島・長崎の高齢の被爆者の尊厳を踏みつけにする国が、被曝の影響を矮小化しつづけ、今度は福島と全国のヒバクシャ放置による被害をこれ以上拡大することは許すことが出来ません。
この判決の後、原告団らは下の声明を発表しました。
放射能被害の原点はもちろん広島・長崎の被爆者の方々の苦しみにあります。 脱原発を志向される皆様は、是非とも、原爆症訴訟へのご理解とご協力をお願い申し上げます。
フクシマだけでなく、ヒロシマ・ナガサキ・ビキニのヒバクシャを忘れないで
かつて私が一応の編集長として出版したかもがわ出版の「全員勝ったで!」
原爆症認定訴訟 近畿弁護団通信
(最近の訴訟の最終意見陳述も載っていますので是非ご覧ください)
2011年12月21日
原爆症認定集団訴訟(近畿3次)大阪地裁判決についての声明
原爆症認定集団訴訟近畿原告団
原爆症認定集団訴訟近畿弁護団
原爆症認定集団訴訟全国弁護団連絡会
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)
原爆症認定集団訴訟支援近畿ネットワーク
1 はじめに
本日、大阪地方裁判所第2民事部(山田明裁判長)は、原爆症認定集団訴訟近畿第3次訴訟に関し、未認定原告5名のうち4名の却下処分を取り消す勝訴判決を言い渡した。これにより、原告7名中6名までが認定された。1名については、残念ながら要医療性が認められなかった。
2 今回の判決は、厚労省が現在行っている原爆症認定行政が、なお著しく誤っていることを示した。国は繰り返し加えられている司法による批判に従い、被爆者に対する国の責任を即刻果たすべきである。
3 判決は、被爆者に対して国が認めようとしなかった入市と残留放射線による広範な被爆と内部被曝による人体影響について、「誘導放射化物質及び放射線降下物を体内に取り込んだことによる内部被曝の可能性がないかどうかを十分に考慮する必要があるというべきであり、加えて、内部被曝による身体への影響には、 一時的な外部被曝とは異なる性質が有り得ることを念頭に置く必要があるというべきである」と改めて確認した。このことは、福島第一原発災害による放射線被 曝に対してこれまでと異なる抜本的かつ今後長期間にわたる綿密な調査に基づく対策が必要となることを示している。
4 国は、2009年8 月6日の「原爆症集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認書」を締結したにも拘わらず、自ら定立した「新しい審査の方針」すら無視して原爆症認定行政を 著しく後退させ、被爆者をなお苦しめ続けている。不当に認定却下処分を受けた被爆者は、これを甘受することができず、大阪地裁での提訴をはじめとして、広 島、熊本、札幌、名古屋、岡山でもこれに続き、現在59名が集団訴訟後も新規に提訴して、再び裁判で解決をせざるをえないような状況が生じている。
5 国が、21万余の被爆者の命ある内に、原子爆弾による被害救済の責任を果たすことこそ、地上から核兵器をなくすという人類の取るべき道を進めることであり、同じ放射線被害を受けた原発被害者の救済につながるものである。以上
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原爆症集団訴訟 4人を認定…大阪地裁、国基準超える判断
関西在住の7人が原爆症認定申請を却下した国を相手取り、処分の取り消しなどを求めた訴訟の判決が21日、大阪地裁であった。うち2人は提訴後に原爆症と認められており、山田明裁判長は他の原告5人のうち4人について、被曝(ひばく)と現在の疾病に因果関係があるとして原爆症と認定、却下処分を取り消した。却下で精神的苦痛を受けたとする損害賠償請求は棄却した。
原告は慢性肝炎やがんなどを患う69~86歳の被爆者6人と、提訴後に死亡した被爆者の遺族1人。2008年4月に原爆症の認定条件が緩和される 前の「旧基準」で認定されず、06~09年に提訴した。うち6人は同月以前に提訴した原爆症認定集団訴訟の原告で、同訴訟の1審で最後の判決となった。
判決で山田裁判長は、国の認定基準とは別の判断をするとした上で、被爆者援護法で認定の条件とされる「被曝と病気との因果関係」を原告ごとに検 討。被爆の状況やその後の行動などを総合的に判断し、4人は原爆症だと結論付けた。うち1人は網膜動脈閉塞症で、同訴訟でこの疾病が原爆症認定されたのは 初めて。
一方、飲食などを通じ放射性物質が体内に取り込まれるとして福島第一原子力発電所の事故でも問題視されている「内部被曝」についても言及。この4人全員について「被爆後も現地にとどまり家族を捜すなどしていた」と内部被曝の可能性を指摘し、認定の材料とした。
判決後の記者会見では、長崎市で被爆し、3年前に67歳で死去した夫が原爆症だったと認められた原告の小林あや子さん(76)(京都府八幡市)が「主人も喜んでいるはずだ」と話した。同訴訟全国弁護団事務局長の宮原哲朗(てつろう)弁護士は「判決は国の認定に対する明確な批判だ」と語った。
厚生労働省の話「今後も被爆者援護行政の適切な実施に努めていく」
原爆症認定集団訴訟 2003年以降、全国17地裁で306人が提訴した。原告は〈1〉国の敗訴時は控訴せず 原爆症と認定〈2〉敗訴原告は政府が創設した基金で金銭補償――との内容で09年に国と被爆者団体が合意した救済策の対象になる。認定条件緩和後の提訴も 相次ぎ、現在、大阪、広島両地裁などで約60人が係争中。
原爆症認定申請の却下処分取り消しを求めた集団訴訟で、国が08年に始めた新認定基準の再審査で認められなかった原告135人のうち約7割の 101人が勝訴していたことが分かった。認定要件を緩和した新基準でも司法判断と乖離(かいり)している実態が浮き彫りとなった。集団訴訟以外でも計約 40人が各地で提訴するなど新基準の不当性を問う動きは全国に広がっており、有識者会議で制度の在り方を検討している厚生労働省も基準の見直しを迫られそ うだ。
毎日新聞のまとめでは、集団訴訟は03年に始まり、07年までに全国で306人が17地裁に提訴。06年5月の大阪地裁判決を皮切りに原告側勝訴 が相次ぎ、厚労省は08年4月から新基準での運用を始めた。この際、原告306人について新基準で再審査し、171人を原爆症と認定。同省が「認定に相当 しない」と判断した残り135人(係争中の5人含む)のうち101人が1、2審の判決で原爆症と認められた。
新基準では▽被爆地点が爆心地から約3.5キロ以内▽原爆投下から約100時間以内に爆心地から約2キロ以内に入る--などした者のうち、がんや 心筋梗塞(こうそく)など7疾病にかかり、現在も医療を必要とする場合に認定すると規定。一方、判決は「個々の疾患と放射線との関係の証明は不可能。被ば く状況や急性症状の有無、内部被ばくなどの可能性も考慮し、総合的な判断が必要」(08年5月、大阪高裁)などとし、被爆地点が爆心地から3.5キロを超 えたり、7疾病以外の疾病であったりしても認めている。
厚労省健康局総務課は「新基準は科学的知見に基づき可能な限り認定範囲を広げたが、更に見直して認定の考え方自体を改める可能性がある」としている。【牧野宏美】
【ことば】 原爆症認定制度
被爆者援護法では、病気が放射線に起因し、現在も医療を要する状態であることを要件に、厚生労働相が認定すると規定。認定者には月額約14万円の 医療特別手当が支給され、11年3月末現在の認定者は約7200人。新基準になった08年4月以降、申請者が急増したが約半数が却下されている。
◇視点 被爆者は高齢 制度見直しを
司法判断と矛盾している実態が判明した原爆症の新認定基準。専門家は「認定要件や運用が厳格すぎるため」と指摘している。
集団訴訟は病気などに苦しむ全国の被爆者が「狭き門」である認定基準の不当性を問うたものだ。原告側勝訴の判決が相次いで初めて、国は重い腰を上げて基準を緩和した。
しかし、新基準でも却下処分が続出。支援者からは「一部の疾病では厳しさは集団訴訟前と変わらない。全ての被爆者が放射線の影響下にあったとする制度に改めるべきだ」との声も出ている。
新たな訴訟提起は被爆者側の不満の表れと言えるが、高齢の未認定患者に残された時間は長くない。国は「裁判で負けたら動く」という姿勢を改め、認定制度を抜本的に見直すべきだ。【牧野宏美】
毎日新聞 2011年12月20日 15時00分
このような厚生労働省は、全くな情けない非人道的な、厚生行政だから、腹が立つ。
そして、原発事故の被曝問題でも、そのように非人道的な厚生行政の延長線上にあるのは、全くケシカラン!
非核法の制定を求める。